— 30秒でわかる結論 —
Q. 就労継続支援のA型とB型、どちらで開業すべきですか?
決定的な違いは雇用契約を結ぶかどうかです。A型は利用者と雇用契約を結び最低賃金以上を支払う——その賃金は生産活動の収益から賄うのが原則のため、安定した仕事の受注と収益力が必須条件になります。B型は雇用契約によらず、生産活動の収益から工賃を支払う形で、体調や事情に合わせた通所ができるぶん、幅広い方を受け入れられます。判断の軸はシンプルで、「毎月の賃金総額を賄える仕事の当てが具体的にあるか」——あるならA型、育てながら進めたいならB型が現実的です。なお2025年10月から、B型の新規利用は原則として就労選択支援を経ることとされています(一定の例外あり)。
就労支援の開業相談は、放課後等デイサービスやグループホームと並んで多いテーマです。ただ、就労系はサービスの種類が多く、収支の構造も独特。この記事に関連記事を束ね、10の論点で全体像を整理しました。
論点①:就労系サービスは4つある
まず全体像から。障害者総合支援法にもとづく就労系のサービスは、現在4つです。
就労移行支援は、一般企業への就職を目指す方に訓練と就職活動、定着支援を提供するサービス(標準利用期間は原則2年)。就労継続支援A型は、雇用契約を結んで働く場を提供するサービス。就労継続支援B型は、雇用契約によらず、自分のペースで生産活動に参加し工賃を得る場。そして就労選択支援——2025年10月に創設された新しいサービスで、本人の希望や能力を短期間のアセスメントで整理し、どの働き方・どのサービスが合うかの選択を支援します。2025年10月以降、新たにB型を利用する方は原則としてこの就労選択支援を経ることとされ、A型や就労移行支援については2027年4月からの適用とされています(一定の例外があります。2026年7月時点の整理であり、詳細は最新の実施要領・指定権者の案内でご確認ください)。
論点②:A型とB型を分ける「雇用契約」
就労継続支援の中で、A型とB型を分ける決定的な違いが雇用契約の有無です。A型は雇用契約を結ぶため労働法規が適用され、最低賃金以上を支払います。B型は雇用契約によらず工賃を支払う形。この違いは、経営の難度と受け入れられる方の幅の両方に効きます(A型・B型の違い)。
論点③:申請窓口は「県か、3市か」
千葉県内では、指定申請の窓口は原則として千葉県。千葉市・船橋市・柏市に事業所を置く場合のみ各市です。松戸・流山・市川・我孫子・野田などは県への申請になります(我孫子市はグループホーム等の一部サービスのみ市が窓口です)(窓口ガイド)。
論点④:人員と設備——サビ管が中核
人員の中核はサービス管理責任者(サビ管)で、実務経験+段階制の研修が要件です。加えて職業指導員と生活支援員を配置します。確保の実務はサビ管の要件と確保(グループホーム向けの記事ですが、サビ管の要件は共通です)と人員基準と人材確保へ。設備面は、作業室・相談室・洗面所等に加え、生産活動の内容に応じた設備が必要になります(物件と設備基準)。
論点⑤:お金の構造——報酬と生産活動の「二階建て」
就労支援の収支は、他のサービスと違って二階建てです。一階が訓練等給付費(報酬)で、職員の給与や家賃といった事業所の運営費を支えます。二階が生産活動収入で、ここからA型は賃金、B型は工賃を支払う。職員の人件費と利用者の賃金・工賃は財布が違う——この理解が出発点です(就労支援の収支構造)。
論点⑥:A型の経営——「雇用主になる」ということ
A型を選ぶなら、覚悟しておきたい構造があります。雇用契約×最低賃金×生産活動収益という三重構造で、賃金は生産活動の収益から賄うのが制度の原則。生産活動収支が赤字続きなら、経営改善計画の枠組みで改善を求められます(A型の経営)。受注の当てがない段階でのA型参入は、賃金支払いに追われて支援も経営も苦しくなる——正直に申し上げて、これが最も多い失敗パターンです。
論点⑦:B型の工賃——報酬にも効く
B型では平均工賃月額が基本報酬の評価に関わる仕組みがあり、工賃向上の取り組みは支援の質であると同時に経営そのものです。工賃をどう育てるかはB型の平均工賃へ。
論点⑧:生産活動をどうつくるか
就労支援の開業相談は、途中から必ず「どんな仕事を取ってくるか」の話になります。下請の軽作業だけでは工賃も賃金も伸びにくく、自社商品・サービスの開発や、施設外就労、地域企業との取引開拓が課題になります。福祉の専門性とは別に、営業と事業設計の力が問われる——ここが就労支援の特殊性です。なお生産活動の内容によっては、食品なら保健所の営業許可(飲食店開業ガイド)など、別の許認可が必要になります。
論点⑨:開業後——変更届・更新・運営指導
指定後も、体制が変われば変更届、6年ごとの更新、そして運営指導があります。加算は毎月満たし続けるもので、生産活動の会計を分けて管理することも求められます。
論点⑩:スケジュールと進め方
準備開始から開業まで、おおむね6か月〜1年。サービスの選択 → サビ管の確保 → 物件 → 生産活動の当てづくり → 資金計画 → 事前協議 → 指定申請、という順です(開業ロードマップ・業態の選び方)。当事務所は指定申請の代行に加え、財務コンサルタントとして二階建ての収支計画と融資を、国家資格キャリアコンサルタントとして職員の採用・定着を一体で支援しています(お金と人の総合支援・就労支援の開業サポート)。
📍 千葉県ローカルメモ|生産活動しだいで追加の許認可も
千葉県内では、千葉市・船橋市・柏市に事業所を置く場合のみ各市、松戸・流山・市川などは県が窓口です。また生産活動で食品を扱う場合は保健所(市によって市保健所か県の健康福祉センターか分かれます)、運搬を伴う場合は別の許認可が関わることがあります。生産活動の構想段階からご相談ください。
※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。
指定権者別・窓口と受付時期の実際(2026年8月29日に各公式ページで確認)
制度の骨格は全国共通ですが、「いつまでに・どこへ・どの順番で」は指定権者ごとに違います。千葉県と、県内で指定権限を持つ千葉市・船橋市・柏市の公表情報を、2026年8月29日時点で確認して整理しました。逆算すると、開業希望月の3か月前には物件の目処と定款の目的規定が固まっている必要があります。
| 指定権者 | 窓口・受付時期・運用の実際 |
|---|---|
| 千葉県 松戸・流山・市川・我孫子・野田・鎌ヶ谷ほか | 健康福祉部障害福祉事業課(県庁本庁舎12階)障害者福祉サービス事業指定班(043-223-2308)。市町村への事前説明が開設予定月の4〜5か月前、県への事業相談シートの提出(ちば電子申請サービス)が4か月前の月末、その補正が3か月前の25日、指定(更新)申請書類の提出が2か月前の月末、指定日は毎月1日(2026年9月10日確認)。申請書類は提出時に対面で確認するため、来庁の予約が必要です。定款の目的に「児童福祉法に基づく障害児通所支援事業」「障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス事業」等の法的根拠を明記し、定款変更を終えてから申請(未了は不受理)。初めて指定を受ける事業者は業務管理体制の届出も同時に |
| 千葉市(政令市) | 障害福祉サービス課(市役所高層棟9階・043-245-5227)。障害児通所は「事前相談=指定の2か月半前まで/指定申請=前々月末まで」と公表されており、障害福祉サービス(生活介護・就労・GH等)も同課が窓口。日中系・居住系の締切と事前相談の運用は同課の「日中系・居住系」ページで要確認 |
| 船橋市(中核市) | 福祉サービス部指導監査課 指導監査第一係 障害福祉担当(市役所別館2階・047-436-2425)。通所系・入所系は消防法令適合状況確認申請を前々月15日までに提出→書類提出の最終締切は前月15日(閉庁日なら直前の開庁日)→サビ管・児発管との面談→審査→前月末頃に現地確認→指定通知。要予約、初回受付は1〜1.5時間、書類の修正のやり取りは平均2〜3回。申請時は法人担当者・行政書士のほか管理者・責任者の同席を求められます。開設前の近隣・自治会への挨拶も要請 |
| 柏市(中核市) | 福祉部指導監査課 障害事業者担当(本庁舎別館4階)。事前相談が必須(電話予約)、申請書類は窓口持参のみ・郵送不可(更新は郵送可)。事前相談から指定までおおむね2〜3か月。就労継続支援は生産活動内容の精査のため、さらに長くかかることがあります。令和8年7月以降の指定に係る事前相談は、法人代表者・役員または事業所の管理者・管理責任者からのみ受け付け(行政書士だけでの事前相談は不可。同席・書類作成は可) |
この4つに東京都を加えて比較し、共通する「開業3か月前ルール」を導いた記事はこちら。
この表の出典(一次資料)
- 千葉県「指定申請(障害福祉サービス事業者等)」
- 千葉市「障害児通所・入所」(指定申請のスケジュール)
- 船橋市「障害福祉サービス事業者等の指定申請について」(PDF)
- 柏市「障害福祉サービス事業者等の指定・更新申請」
💬 目加多のひとこと
就労支援の開業相談では、制度の話と同じくらい「どんな仕事をつくるか」を話します。福祉の事業所でありながら、営業と商品開発の話をする。前職で法人営業をしていた経験が、ここでいちばん役に立っていると感じます。

執筆・監修
目加多 龍めかた りょう
行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)
障害福祉・障害児支援の指定申請を専門とする行政書士。放課後等デイサービス・児童発達支援・グループホーム(共同生活援助)・就労継続支援A型/B型・就労移行支援・生活介護・居宅介護・重度訪問介護など障害福祉・障害児の全類型に対応し、千葉県指定と千葉市/船橋市/柏市の市指定どちらの窓口も日常的に扱っています(オンラインで全国対応)。開業後の変更届・体制届・処遇改善加算の届出、運営指導への備えまで伴走します。
前職では従業員約800名規模の3社合併にともなう人事制度統合を主導し、正社員・パート等あわせて約800名の給与計算と社会保険実務を運用。処遇改善加算のキャリアパス要件は、突き詰めれば賃金表と等級制度の設計そのもの——加算の届出だけでなく、その先の賃金設計まで踏み込めることが強みです。国家資格キャリアコンサルタントとして、サビ管・児発管など資格者の採用と定着も支援しています。
保有資格:行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/財務コンサルタント(ASJ)/2級FP技能士(AFP)/人事総務検定2級ほか計11種。制度改正のたびに一次資料を確認しながら、note・LinkedIn・Instagram・Threadsで介護・障害福祉の実務情報をほぼ毎日発信しています。