— 30秒でわかる結論 —

Q. 福祉用具のレンタル事業を始めたいです。何が必要ですか?

介護保険の福祉用具貸与の指定を受ける必要があります(法人格が前提)。人員の柱は福祉用具専門相談員・常勤換算2名以上。設備は事務スペースに加えて用具の保管設備と消毒・補修の体制が必要ですが、保管・消毒は専門業者への委託が認められているため、自社倉庫なしで始める設計も可能です。販売(特定福祉用具販売)は貸与とは別の指定なので、両方やるなら両方の指定を。申請先は他の介護サービスと同じく県または市です。

訪問介護や通所介護に比べると目立ちませんが、在宅介護を支えるインフラとして着実な需要があるのが福祉用具の貸与・販売です。ベッド、車いす、手すり、歩行器——「モノ」を扱うサービスならではの要件と経営設計を、開業の視点から整理します。

貸与と販売は「別の指定」——まず制度の地図から

介護保険の福祉用具には2つの入口があります。福祉用具貸与(車いす・特殊寝台・歩行器などのレンタル)と、特定福祉用具販売(腰掛便座・入浴補助用具など、貸与になじまない用具の販売)。それぞれ別々の指定で、両方手がけるなら両方の指定申請が必要です。実務上は貸与と販売をセットで指定を受ける事業者がほとんどで、ケアマネジャーからの相談にワンストップで応えられる体制が標準形といえます。指定の前提として法人格が必要な点は、他の介護サービスと同じです。

人員要件——福祉用具専門相談員2名以上

人員の柱は福祉用具専門相談員を常勤換算で2名以上配置すること。専門相談員は指定講習の修了者のほか、福祉用具に関する知識を有する国家資格者(保健師・看護師・理学療法士・作業療法士・社会福祉士・介護福祉士・義肢装具士)が該当します。管理者は専門相談員との兼務が可能な設計にできるため、夫婦や2名の共同創業で立ち上げる最小構成も現実的です。加えて2024年度以降、貸与の提案にあたって複数商品の提示や上限価格の説明など、専門相談員の説明責任は年々厚くなっています。「運べる人」ではなく「選定を提案できる専門職」を核に据える——ここがこの事業の本質ではないでしょうか。

設備要件——保管と消毒、ただし「委託」という道

モノを扱う事業ならではの要件が、回収した用具の保管設備と、消毒・補修の体制です。清潔な用具とそうでない用具を区分して保管できること、適切な消毒方法を確保していること——ここで「大きな倉庫と消毒設備への投資が必要なのか」と身構える方が多いのですが、保管・消毒は他の事業者への委託が認められています。実際、卸大手のレンタル卸を活用し、在庫・物流・消毒を委託して身軽に始めるモデルが広く普及しています。自前設備で差別化するか、委託で初期投資を抑えるか——創業時の資金計画と直結する分岐です。

2024年度からの新展開——貸与と販売の「選択制」

2024年度の制度改正で、固定用スロープ・歩行器(歩行車を除く)・単点杖/多点杖(松葉杖を除く)について、利用者が貸与か販売かを選択できる仕組みが導入されました(2026年7月時点)。長く使うことが見込まれる用具は買った方が利用者負担が軽くなる場合がある——という発想で、事業者には貸与・販売双方のメリット・デメリットの説明が求められます。これは「貸すだけ」の事業者から「最適な持ち方を提案できる」事業者への進化を促す変化だと私は受け止めています。販売の指定を持っていないと選択肢を提示できない場面が出るため、これから開業するなら貸与・販売の両指定が実質的な標準装備と考えてよいのではないでしょうか。

経営の目線——在庫より「関係」が資産になる

この事業の売上はケアプランに位置づけられて生まれるため、ケアマネジャー・地域包括支援センターとの信頼関係が最大の営業資産になります。モニタリング訪問の質、納品・回収のスピード、住宅改修(こちらも扱うなら別途の対応)との一体提案。開業直後は知られていないことが最大の壁なので、開業前から居宅介護支援事業所への挨拶回りと得意分野の明確化を計画に織り込みましょう。指定申請から開業後の運営・加算体制まで、指定申請サポートで一貫してお手伝いしています。

📍 千葉県ローカルメモ|福祉用具の指定、申請先はどっち?

福祉用具貸与・販売の指定申請の窓口も、県内では原則どおりの区分です。事業所を千葉市・船橋市・柏市に置くならそれぞれの市へ、松戸市・流山市・市川市・鎌ヶ谷市など、そのほかの県内市町村なら千葉県へ。保管・消毒を委託で設計する場合は委託契約書の写し等の確認書類が必要になるのが通例なので、申請前に委託先選定まで済ませておくと審査がスムーズです。

※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。

💬 目加多のひとこと

福祉用具は「モノのビジネス」に見えて、実は「選定眼のビジネス」だと思います。同じ歩行器でも、その方の廊下の幅と握力で正解が変わる。その一台を選び抜ける専門相談員がいる会社は、価格競争から抜け出せます。開業設計の段階から、その強みを言語化するお手伝いをしています。

行政書士 目加多龍

執筆・監修

目加多 龍めかた りょう

行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)

障害福祉・障害児支援の指定申請を専門とする行政書士。放課後等デイサービス・児童発達支援・グループホーム(共同生活援助)・就労継続支援A型/B型・就労移行支援・生活介護・居宅介護・重度訪問介護など障害福祉・障害児の全類型に対応し、千葉県指定と千葉市/船橋市/柏市の市指定どちらの窓口も日常的に扱っています(オンラインで全国対応)。開業後の変更届・体制届・処遇改善加算の届出、運営指導への備えまで伴走します。

前職では従業員約800名規模の3社合併にともなう人事制度統合を主導し、正社員・パート等あわせて約800名の給与計算と社会保険実務を運用。処遇改善加算のキャリアパス要件は、突き詰めれば賃金表と等級制度の設計そのもの——加算の届出だけでなく、その先の賃金設計まで踏み込めることが強みです。国家資格キャリアコンサルタントとして、サビ管・児発管など資格者の採用と定着も支援しています。

保有資格:行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/財務コンサルタント(ASJ)/2級FP技能士(AFP)/人事総務検定2級ほか計11種。制度改正のたびに一次資料を確認しながら、note・LinkedIn・Instagram・Threadsで介護・障害福祉の実務情報をほぼ毎日発信しています。

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