— 30秒でわかる結論 —

Q. 就労支援事業は何で儲かるのですか?

収入源は2つあり、性質がまったく違います。ひとつは訓練等給付費(報酬)——利用者が通所した日数に応じて入る公費で、これが事業所の運営費(職員の給与・家賃など)を支えます。もうひとつが生産活動収入——利用者と一緒に行う仕事の売上で、ここからA型は賃金、B型は工賃を支払います。ポイントは、この2つの財布を混ぜないこと。報酬を賃金の穴埋めに回し続ける運営は制度が想定していない姿です。したがって経営としては「安定した通所(報酬)」と「稼げる仕事づくり(生産活動)」の両方を回す必要があります。

「構造で読む収支」シリーズ、放課後等デイサービスグループホームに続いて、今回は就労支援です。この事業は収支の構造がやや特殊なので、丁寧に分解します。

売上の一階:訓練等給付費(報酬)

まず土台となるのが訓練等給付費です。おおまかには利用者数 × 利用日数 × 単価で決まり、単価は事業所の実績評価(B型なら平均工賃、A型ならスコア方式など)や体制加算によって変動します。ここが職員の給与・家賃・光熱費といった事業所の運営費を支える収入です。

この一階部分で効くのは「通ってもらえているか」——利用契約者数だけでなく、実際の通所日数が売上に直結します。体調や環境の変化で通所が途切れやすい方をどう支えるかは、支援の質の話であると同時に、経営の話でもあります。

売上の二階:生産活動収入

もうひとつが、利用者と一緒に行う仕事の売上=生産活動収入です。そしてここからA型は賃金(最低賃金以上)、B型は工賃を支払うのが原則になります(A型の三重構造B型の工賃の育て方)。

この二階部分は、普通の商売とまったく同じです。何を売るか、いくらで受注するか、どう納期を守るか。福祉の専門性とは別の、事業経営の力が問われます。

いちばん混乱しやすいのは「人件費が2種類ある」こと

就労支援の収支で最も誤解されやすいのが、人件費です。職員(サビ管・職業指導員・生活支援員)の給与は報酬から。利用者の賃金・工賃は生産活動収益から。——同じ「人件費」でも財布が違います。

だからこそ、生産活動の会計は分けて管理することが求められます。分けていないと、事業として稼げているのか、公費で穴埋めしているのかが自分でも分からなくなる。逆に分けて管理していれば、「工賃を上げるには受注単価か作業効率のどちらを動かすか」という具体的な議論ができます。

費用の構造と、経営の打ち手

費用側は、職員人件費・家賃・送迎の車両費・生産活動の原材料費が主です。売上に上限がある構造(定員×開所日数×単価)である以上、経営の打ち手は次の3つに集約されます。①通所の安定(報酬側)②生産活動の受注と単価(生産活動側)③職員の定着(採用コストと支援の質の両方に効きます)。

計画は「二階建てで、保守的に」

開業時の収支計画では、報酬と生産活動を分けて、それぞれ保守的に組んでください。特に生産活動は、開業直後から受注が安定することはまずありません。加えて報酬の入金はサービス提供からおおむね2か月後——この間の運転資金まで含めた資金計画が必要です(創業融資の窓口ガイド)。

当事務所は指定申請に加えて、財務コンサルタントとして二階建ての収支計画づくりを、キャリアコンサルタントとして職員の採用・定着を一体でお手伝いしています(お金と人の総合支援)。開業の全体像は就労支援の開業ガイドへどうぞ。

📍 千葉県ローカルメモ|生産活動の内容で追加の許可が要ることも

千葉県内での就労支援事業の指定窓口は、所在地により千葉県または千葉市・船橋市・柏市です。生産活動の内容によっては、食品を扱うなら保健所の営業許可、運搬を伴うなら別の許認可が必要になる場合があります。生産活動の構想段階でご相談いただければ、必要な手続きをあわせて整理します。

※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。

💬 目加多のひとこと

就労支援の経営相談は、途中から必ず「どんな仕事を取ってくるか」の話になります。福祉の事業所でありながら、営業の話をする。前職で法人営業をしていた経験が、思わぬところで役に立っている実感があります。

行政書士 目加多龍

執筆・監修

目加多 龍めかた りょう

行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)

障害福祉・障害児支援の指定申請を専門とする行政書士。放課後等デイサービス・児童発達支援・グループホーム(共同生活援助)・就労継続支援A型/B型・就労移行支援・生活介護・居宅介護・重度訪問介護など障害福祉・障害児の全類型に対応し、千葉県指定と千葉市/船橋市/柏市の市指定どちらの窓口も日常的に扱っています(オンラインで全国対応)。開業後の変更届・体制届・処遇改善加算の届出、運営指導への備えまで伴走します。

前職では従業員約800名規模の3社合併にともなう人事制度統合を主導し、正社員・パート等あわせて約800名の給与計算と社会保険実務を運用。処遇改善加算のキャリアパス要件は、突き詰めれば賃金表と等級制度の設計そのもの——加算の届出だけでなく、その先の賃金設計まで踏み込めることが強みです。国家資格キャリアコンサルタントとして、サビ管・児発管など資格者の採用と定着も支援しています。

保有資格:行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/財務コンサルタント(ASJ)/2級FP技能士(AFP)/人事総務検定2級ほか計11種。制度改正のたびに一次資料を確認しながら、note・LinkedIn・Instagram・Threadsで介護・障害福祉の実務情報をほぼ毎日発信しています。

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