— 30秒でわかる結論 —
Q. 放デイは儲かると聞きましたが、実際どうなのですか?
「儲かるか」は構造で考えるのが正確です。売上の上限は定員×営業日数×単価でほぼ決まっており、青天井のビジネスではありません。一方、費用は人件費中心で下げにくい。つまり稼働率が損益分岐を超えるかどうかの勝負で、超えれば安定し、割れば固定費が重くのしかかる——それが放デイの収支の実像です。「儲かるらしい」で参入して稼働が集まらないケースを見てきたので、当事務所では開業前に、保守的な稼働率での資金繰りまで含めた計画づくりをおすすめしています。
行政書士でありながら財務コンサルタントでもある立場から、今日は放デイの「お金の構造」を、数字の断定なしに——しかし実務で使える解像度で——解説します。報酬単価は改定で変わりますが、この構造は変わりません。
📗 関連の深掘り——すでに運営している事業所が、令和7年の経営概況調査の数字と令和8年6月の報酬引下げを踏まえて何から着手すべきか(単価・稼働率・固定費・DXの着手順と自己診断5問)はこちらの記事で扱っています。
売上の方程式——上限が最初から見えている事業
放デイの売上は、おおむね次の式に集約されます。売上 ≒(定員 × 稼働率)× 営業日数 × 児童1人あたり単価。単価は基本報酬に加算が乗った合計で、国の報酬改定(おおむね3年ごと)で見直されます。この式が意味するのは、定員10名の事業所の売上には構造的な上限があるということ。だから放デイの経営は「売上を伸ばす」より「上限にどれだけ近づけ、費用をどう規律するか」のゲームになります。
費用の構造——人件費が主役の労働集約型
費用側の主役は人件費です。児発管・保育士・児童指導員の配置は人員基準で決まっており、児童が少なくても減らせません。ここに家賃・車両(送迎)・保険・消耗品が乗ります。売上に上限があり、費用の大半が固定的——この組み合わせが、稼働率を経営の生命線にしています。
レバー①:稼働率——契約児童数×利用頻度
稼働率は「契約児童の数」と「一人ひとりの利用頻度」の掛け算です。開業直後から満員になることはまずなく、相談支援事業所・学校との関係づくりで数か月かけて積み上げていくのが普通です。計画段階では、立ち上がり期の低稼働を正直に織り込むこと——ここを甘く見た計画は、融資審査でも見抜かれますし、開業後に自分を苦しめます。
レバー②:加算——体制で取り、体制で維持する
同じ児童数でも、加算体制の設計で単価は変わります。専門人材の配置や支援の質に関する加算は「取れるのに取っていない」ことも「体制が崩れたのに算定し続ける」ことも、どちらも損失です(後者は返還リスク)。加算・報酬の考え方で書いたとおり、加算は勤務体制と一体で管理するものです。
レバー③:人材の定着——採用費と減算リスクの圧縮
人が辞めると、採用費・教育の時間・最悪の場合は人員欠如による減算と、三重にお金が出ていきます。逆に定着している事業所は、採用市場でも選ばれやすく、加算体制も安定する。定着は福利厚生ではなく、収支のレバーです(人材施策の選び方)。
「盛らない」収支計画が、結局いちばん強い
まとめます。放デイの収支計画で当事務所が守っている原則は3つ——稼働率は保守的に、入金の2か月遅れを資金繰りに織り込み、加算は確実に取れるものだけ計上する。この「盛らない計画」は融資審査への説得力になり(開業融資のタイミング)、開業後の意思決定の物差しになります。具体的な数字を入れた計画づくりは、最新の報酬告示と地域の実情を反映しながら、「お金と人」の総合支援としてお手伝いします。全体像は放デイ開業の完全ガイドへ。
参考にした一次資料
- 厚生労働省「放課後等デイサービスガイドライン」「児童発達支援ガイドライン」
- 児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令)
- 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」
- 各指定権者が公表する変更届・体制届の様式および提出期限の案内
※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・通知および指定権者の案内をご確認ください。
📍 千葉県ローカルメモ|単価は「最新告示×地域区分」で
収支計画に入れる単価は、必ず最新の報酬告示・地域区分で確認します(金額は改定で変わるため、この記事では構造のみを扱いました)。千葉県内でも地域区分により単価は異なります。計画づくりの際は、開業予定地の区分での試算からご一緒します。
※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。
💬 目加多のひとこと
財務の仕事をしていると、「盛った計画」ほど脆いものはないと痛感します。保守的な計画で始めて上振れするのと、楽観計画で始めて資金が尽きるのとでは、同じ実績でも結末が違う。計画は夢を書く場所ではなく、守りを設計する場所です。

執筆・監修
目加多 龍めかた りょう
行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)
障害福祉・障害児支援の指定申請を専門とする行政書士。放課後等デイサービス・児童発達支援・グループホーム(共同生活援助)・就労継続支援A型/B型・就労移行支援・生活介護・居宅介護・重度訪問介護など障害福祉・障害児の全類型に対応し、千葉県指定と千葉市/船橋市/柏市の市指定どちらの窓口も日常的に扱っています(オンラインで全国対応)。開業後の変更届・体制届・処遇改善加算の届出、運営指導への備えまで伴走します。
前職では従業員約800名規模の3社合併にともなう人事制度統合を主導し、正社員・パート等あわせて約800名の給与計算と社会保険実務を運用。処遇改善加算のキャリアパス要件は、突き詰めれば賃金表と等級制度の設計そのもの——加算の届出だけでなく、その先の賃金設計まで踏み込めることが強みです。国家資格キャリアコンサルタントとして、サビ管・児発管など資格者の採用と定着も支援しています。
保有資格:行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/財務コンサルタント(ASJ)/2級FP技能士(AFP)/人事総務検定2級ほか計11種。制度改正のたびに一次資料を確認しながら、note・LinkedIn・Instagram・Threadsで介護・障害福祉の実務情報をほぼ毎日発信しています。