— 30秒でわかる結論 —
Q. 放課後等デイサービス・児童発達支援の経営で、赤字にしないために何をすればよいですか?
動かせるレバーは4つだけです。①単価(加算の取り切り)②稼働率(契約数と欠席率)③固定費(人員配置の設計)④DX(間接業務の時間を支援に振り替える)。着手の順番は①→②→③で、④は並行して早く始めます。①は児童も職員も増やさずに翌月の請求から効き、加算は届け出た月からしか算定できず遡れないためです。危機感を持っていただきたいのは数字の背景です。放デイの収支差率は令和6年度で9.1%(全サービス平均4.6%)ですが、この水準は制度側から是正の対象と見られており、令和8年6月から新規指定事業所の基本報酬が引き下げられました(児発988/1000、放デイ982/1000)。本格的な調整は令和9年度の報酬改定で来ます。赤字事業所の割合は全サービスで43.6%まで上昇しており、平均の内側で黒字と赤字が分かれています。
こんな方に読んでいただきたい記事です
- 放デイ・児発を運営していて、次の報酬改定が不安な方
- 利益は出ているが、その理由を数字で説明できない方
- 稼働率や加算について「なんとなく」で判断している自覚のある方
📗 関連の深掘り——放デイ・児発以外の類型も含めて、全サービスの「量の天井」と単価の余地を一覧で見たい方はこちらの記事で扱っています。
いま出ている数字が、じつは危険信号です
令和7年の障害福祉サービス等経営概況調査(令和6年度決算・2025年11月25日公表)で、放課後等デイサービスの収支差率は9.1%でした。全サービス平均の4.6%の倍近くあります。数字だけ見れば好調です。
問題は、この数字が制度側から「是正の対象」として見られていることです。
| 数字 | 内容 |
|---|---|
| 放課後等デイサービスの収支差率 | 令和5年度 7.9% → 令和6年度 9.1% |
| 全サービス平均の収支差率 | 令和5年度 5.0% → 令和6年度 4.6% |
| 赤字事業所の割合(全サービス) | 令和5年度 41.6% → 令和6年度 43.6% |
| 令和8年6月からの新規事業所の基本報酬 | 児童発達支援 988/1000(▲1.2%)/放課後等デイサービス 982/1000(▲1.8%) |
実際、令和8年6月から、就労継続支援B型・共同生活援助・児童発達支援・放課後等デイサービスの新規指定事業所に限って基本報酬が引き下げられました(厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」。2026年9月10日確認)。選ばれた基準は「年間総費用額の1%以上」「令和6年度の収支差率が5%以上」「過去3年間の事業所数の伸び率が5%以上」の3つ。放デイと児発は、この3条件に当てはまったということです。
この措置は令和9年度の報酬改定までの応急的なものと位置づけられています。つまり本格的な調整は次の定期改定(令和9年度)で来ます。加えて、赤字事業所の割合は全サービスで43.6%まで上がり、人件費(給与費割合)は多くのサービスで上昇しています。
つまりこういうことです。いまの利益は「制度がまだ調整していないから出ている」部分を含んでいます。次の改定で単価が下がったとき、単価・稼働率・固定費・DXの4つを自分で動かせない事業所から赤字に落ちます。平均が9.1%でも、平均の内側では黒字と赤字がはっきり分かれています。
放デイ・児発の利益は、4つのレバーでしか動かない
売上の式は単純です。売上 ≒(定員 × 稼働率)× 開所日数 × 児童1人あたり単価。費用は人件費が主役で、児童が少なくても人員基準があるため簡単には減りません。だから動かせるレバーは4つしかありません。
| レバー | 効き方 | 着手の順番 |
|---|---|---|
| ①単価を上げる | 同じ児童・同じ職員でも、算定できる加算を取り切れば単価が上がる。取りこぼしは過去分を取り戻せない | 最初にやる。追加投資がほぼ不要で、効果がその月から出る |
| ②稼働率を上げる | 売上=(定員×稼働率)×開所日数×単価。固定費が動かないぶん、稼働率の1割は利益の数割に効く | 2番目。契約数の増加と、既契約児童の利用頻度・欠席率は別の打ち手 |
| ③固定費を下げる | 人件費は人員基準があるため単純には下げられない。効くのは配置の設計と家賃・送迎・給食 | 3番目。人を減らす話ではなく、同じ人件費で何時間の支援が生まれているかを見る |
| ④DX化する | 記録・請求・シフト・送迎の間接業務を削り、支援の時間に振り替える。令和8年6月から報酬にも直結 | ①〜③と並行。効果が出るまで時間がかかるので、着手は早いほうがいい |
構造の詳しい解説は放デイの収支はどう組み立つかに書いています。ここから先は、運営中の事業所が実際に何から手を付けるかの話です。
レバー① 単価を上げる——追加投資なしで、その月から効く
いちばん先に着手すべきなのはここです。児童も職員も増やさずに単価が上がり、しかも効果が翌月の請求から出ます。
| 単価の構成要素 | 見るポイント |
|---|---|
| 基本報酬(定員規模・時間区分) | 実際の提供時間と算定している区分がずれていないか。開設時のまま見直していない事業所が多い |
| 体制で取る加算 | 職員の資格・配置・研修修了で算定できるもの。要件を満たしているのに届け出ていないケースが典型的な取りこぼし |
| 個別支援計画に紐づく加算 | 対象児童の状態像に応じて算定するもの。アセスメントと計画の記載が根拠になるため、計画の書き方が単価に直結する |
| 処遇改善加算 | 区分と加算率。令和8年6月から対象が障害福祉従事者に広がり、上乗せ区分も新設された |
| 減算されていないか | 未実施減算・未公表減算は、届出上は「なし」でも実態が伴っていなければ後で効いてくる |
実務で多いのは「要件は満たしているのに届け出ていない」型の取りこぼしです。加算は届け出た月からしか算定できず、遡って取り直すことはできません。1か月見送るごとに、その分は永久に戻りません。
逆方向のリスクもあります。体制等状況一覧表で「未実施なし」と届け出ていても、委員会や研修の実態が伴っていなければ、あとで減算として整理されます。単価を上げる作業と、届出と実態のズレを潰す作業は、同じ棚卸しで一度に済ませるのが効率的です。
レバー② 稼働率を上げる——「契約数」と「欠席率」は別の問題
稼働率が上がらないとき、多くの事業所は「利用児童を増やす」ことだけを考えます。しかし稼働率は契約児童数 × 一人あたりの利用頻度で決まるため、打ち手は2系統あります。
- 契約数を増やす——相談支援専門員・特別支援学校・医療機関との関係づくり、見学対応の設計。ここは営業ではなく信頼の話です
- 既契約児童の欠席を減らす——欠席の理由を体調・家庭事情・送迎・満足度に分けて記録する。理由がわからないまま「欠席が多い」と言っている事業所が非常に多い
固定費はほとんど動かないので、稼働率の数ポイントが利益の数割を動かします。まず自事業所の損益分岐稼働率を出し、いまが何ポイント上か下かを把握してください。
レバー③ 固定費を下げる——人を減らす話ではありません
人件費は費用の主役ですが、人員基準がある以上、単純な削減はできません。それに、職員を減らせば稼働率と加算の両方が落ちて、かえって収支は悪化します。見るべきは金額ではなく配置の設計です。
- 常勤・非常勤の組み合わせが、開所時間帯の実際の忙しさに合っているか
- 資格者の配置が、算定できる加算の要件と噛み合っているか(同じ人件費でも単価が変わります)
- 家賃・送迎車両・給食など、人件費以外の固定費を1年以上見直していないものはないか
- 離職による採用コストと、欠員期間の減算リスクが計上されているか
レバー④ DX化——令和8年6月から、報酬にも直結しました
DXは「あとでやること」に置かれがちですが、令和8年6月の改正で位置づけが変わりました。処遇改善加算に生産性向上や協働化に取り組む事業者向けの上乗せ区分(イ・ロ)が新設されたからです。業務改善の取組が、加算率という形で報酬に反映されるようになりました。
| 領域 | 削れる時間 | 進め方 |
|---|---|---|
| 記録・請求 | 支援記録の転記、実績記録票の突合、請求前チェック | 記録から請求まで一気通貫のシステムを選ぶ。加算の算定要件チェックが内蔵されているかを見る |
| 送迎 | ルート組み、当日の欠席による組み替え、連絡 | ルートの固定化とテンプレート化。安全管理の記録も同じ仕組みに載せる |
| シフト・勤怠 | 毎月のシフト作成、人員基準の確認、加算要件の充足確認 | 人員基準と加算の必要配置を条件として持てる仕組みにする |
| 保護者連絡 | 連絡帳、日々の様子の共有、面談日程の調整 | アプリ化で往復を減らす。ただし関係づくりの部分は減らさないのが原則 |
| 内部の情報共有 | 会議・議事録・研修記録・指針の保管 | 虐待防止・身体拘束・BCPの記録を1か所に束ねる。運営指導の備えと同じ作業になる |
DXの本質は、間接業務の時間を支援と関係づくりに振り替えることです。記録・請求・シフトに使っている時間が減れば、その分を稼働率(保護者対応・関係機関連携)と単価(アセスメントと個別支援計画の質)に回せます。4つのレバーは独立していません。
介護・障害福祉の事業者の方へ
この4つのレバーは、生活介護・就労継続支援・グループホームでもそのまま使えます。ただし効くレバーの順番が違います。たとえば生活介護は収支差率(通所型9.7%)が高く新規の減額対象からは外れましたが、給与費割合の上昇が大きく、③配置の設計が最初のレバーになります。ご自身のサービス類型でどこから手を付けるかは、運営中の事業所さま向けの窓口でご相談ください。
5つの問いで、いまの状態がわかります
| 問い | 答えられなければ |
|---|---|
| 自事業所の損益分岐稼働率は何%ですか | 固定費と単価の把握ができていません。ここが出発点です |
| 算定できるのに届け出ていない加算はありませんか | 毎月の取りこぼしが続いています。過去分は取り戻せません |
| 先月の欠席率と、その理由の内訳を言えますか | 稼働率が「なんとなく」で動いています |
| 職員1人あたり、月に何時間を記録・請求事務に使っていますか | DXの効果を測る基準がありません |
| 令和9年度の報酬改定で単価が下がったとき、何%まで耐えられますか | 感応度分析ができていません |
この5問に即答できる事業所は、次の報酬改定が来ても対応できます。答えに詰まった問いがあれば、そこが最初に着手すべき場所です。
「で、具体的にどうやるのか」は、一度お話ししたほうが早い
ここまで読んでいただいて、レバーの構造はご理解いただけたと思います。ただ、どのレバーから、どの順番で、いくらの効果を狙って動かすかは、事業所ごとに答えが違います。定員も、家賃も、職員構成も、地域の競合状況も違うからです。
当事務所では60分の無料相談をお受けしています。その時間内で、次の3つの無料診断ができます。
- 加算・減算の取りこぼし診断——いま算定できるのに取れていない加算がないか
- 運営指導の事前チェック——届出と実態にズレがないか
- 届出状況の棚卸し——変更届・体制届の出し忘れがないか
診断だけで終わっても構いません。顧問契約は不要で、スポットのご依頼も、開業を他所で行った事業所の途中からのご依頼も歓迎しています。行政書士としての手続きの視点と、2級FP技能士・ASJ財務コンサルタントとしての財務の視点、企業人事15年の人材の視点を、ひとつの窓口でお出しします。オンラインで全国対応です。
ご相談は運営中の介護・障害福祉事業所さまへのページから、またはお問い合わせフォームでお受けしています。
参考にした一次資料
- 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」(障害福祉サービス等報酬改定検討チーム・2026年2月18日/応急的な報酬単価の対象と選定基準、処遇改善加算の上乗せ区分。2026年9月10日確認)
- 厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(第48回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム・2025年11月25日/令和6年度決算のサービス別収支差率・赤字事業所割合・給与費割合。2026年9月10日確認)
- 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について」(告示・留意事項通知・Q&A。2026年9月10日確認)
- 当事務所の障害福祉事業所向け相談実務(加算の取りこぼし診断・届出状況の棚卸し)
※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・要領および指定権者の案内をご確認ください。
📍 千葉県ローカルメモ|千葉県内で、次の一手を考えている事業所さまへ
松戸・市川・流山・柏・船橋の放デイ・児発は、地域によって供給状況が大きく異なります。稼働率が上がらない原因が「地域の需要不足」なのか「関係機関との接点不足」なのかで、打つ手はまったく変わります。市町村の障害福祉計画には、サービス種別ごとの見込み量が数字で載っており、2026年度は第8期障害福祉計画(令和9〜11年度)の策定年です。自治体の見込み量とパブリックコメントは、地域の需要を読むうえで最も確度の高い一次情報になります。無料相談では、この読み方もあわせてお伝えしています。
※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。
💬 目加多のひとこと
「利益は出ているのですが、このままでいいのか不安で」というご相談が増えています。不安の正体は、たいてい利益が出ている理由を数字で説明できないことです。稼働率が良いのか、加算が効いているのか、単に人件費を抑えているだけなのか。理由がわからない利益は、理由がわからないまま消えます。私が最初にお願いするのは、損益分岐稼働率を出すことです。この1つの数字が出ると、次に何をすべきかが自然に決まります。むずかしい分析ではありません。固定費と単価がわかれば計算できます。

執筆・監修
目加多 龍めかた りょう
行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)
行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/2級FP技能士(AFP)。ブリヂストン系列企業とNEC系列企業で人事・労務の現場15年を経て2026年に独立。個人向けキャリア相談はココナラで約70件・全件★5.0(プラチナランク・2026年7月時点)。障害福祉・障害児支援の指定申請を軸に、資金調達から人材の定着まで、中小企業の「手続き」「資金」「人材」を一体で支援しています。
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