— 30秒でわかる結論 —

Q. 体制等状況一覧表で「未実施なし」と届け出ていますが、実態が伴っていないかもしれません。どうなりますか?

この欄は行政が現地を確認した結果ではなく、事業所側の自己申告です。受理されたことは実態が確認されたことを意味しません。運営指導で委員会の議事録・研修の記録・指針・担当者の指名が確認され、出せなければ、届け出ていた期間について実態が伴っていなかったものとして整理されます。減算率は虐待防止措置未実施で所定単位数の1%、身体拘束廃止未実施で施設・居住系10%/訪問・通所系1%、BCP未策定で施設・居住系3%/その他1%、情報公表未報告で施設・居住系10%/その他5%です(2026年9月10日に厚生労働省資料で確認)。減算は過去に遡って適用されるものではなく、事実が確認された月の翌月から改善が認められた月まで(最短でも3か月)です。気づいた時点で速やかに改善計画を出し、改善報告まで進めるのが最短の道です。一方、実施していないと知りながら請求を続けた場合は、障害者総合支援法第8条第2項により返還額に100分の40を乗じた額の支払いを求められることがあります。まず、いま届け出ている控えと手元の記録を突き合わせてください。

こんな方に読んでいただきたい記事です

  • 体制等状況一覧表を出したものの、中身を確認しないまま数年が経っている方
  • 「身体拘束をしていないから委員会は不要」と考えている方
  • 運営指導の通知が届き、何から手を付けるか迷っている方

📗 関連の深掘り——届出と実態の棚卸しを、加算の取りこぼし点検や収支の改善と一度に済ませる進め方はこちらの記事で扱っています。

「未実施なし」は、行政が現地を見て決めたことではありません

体制等状況一覧表(加算・減算の体制の届出)を出すとき、虐待防止措置や身体拘束の適正化の欄で「未実施なし」を選びます。ここで一度、立ち止まっていただきたいのです。

この欄は、行政が事業所を見て判断した結果ではありません。事業所が自分で「実施しています」と申告した記録です。受理されたことは、実態が確認されたことを意味しません。実態の確認は、運営指導のときにまとめて行われます。

つまり構造としてはこうなります。届出の時点では通る。数年後の運営指導で、委員会の議事録や研修の記録を求められる。出せなければ、「未実施なし」と届け出ていた期間について、実態が伴っていなかったことになります

ここが、単に減算を知らなかった場合と決定的に違うところです。4つの未実施減算の中身とチェックリストは別の記事に整理しています。この記事は「実施していると届け出た側の責任」に絞ります。

まず、減算の重さを正確に

厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」で確認した減算率です(2026年9月10日確認)。

減算施設・居住系訪問・通所系
虐待防止措置未実施減算所定単位数の1%所定単位数の1%
身体拘束廃止未実施減算所定単位数の10%所定単位数の1%
業務継続計画(BCP)未策定減算所定単位数の3%所定単位数の1%
情報公表未報告減算所定単位数の10%所定単位数の5%
支援プログラム未公表減算
(児童発達支援・放課後等デイサービス)
所定単位数の85%で算定(=15%減)

施設・居住系は障害者支援施設・療養介護・共同生活援助・宿泊型自立訓練・障害児入所施設、訪問・通所系は居宅介護から放課後等デイサービスまでを指します。虐待防止措置未実施減算は計画相談支援・障害児相談支援・地域移行支援・地域定着支援を含めて対象とされています(自治体の案内で確認)。身体拘束の10%、情報公表の10%は、経営に直接効く水準です。ただし過去に遡って減算が適用されるわけではありません。減算は、運営指導等で事実が確認された月を「事実が生じた月」として、その翌月から改善が認められた月まで適用されます。速やかに改善計画を提出し、事実が生じた月から3か月後に改善報告を行う流れになるため、最短でも3か月は続きます(複数の自治体の案内で確認。2026年9月10日)。なお、これは4つの未実施減算についての取扱いです。人員基準欠如減算のように、要件を欠いていた月そのものが減算対象になる類型は別なので、混同しないでください。

「実施している」の線引きは、書類の有無ではありません

運営指導で見られるのは、頻度・記録・周知の3点です。指針のファイルが棚にあるかどうかではなく、それが動いていた証跡が残っているかが問われます。

項目「実施している」と言える状態よくあるズレ
虐待防止委員会1年に1回以上開催し、結果を従業者に周知徹底している。開催日・出席者・議題・決定事項が議事録に残っている開いた記憶はあるが議事録がない/管理者だけで検討して終わっている
虐待防止の研修1年に1回以上実施し、加えて新規採用時にも実施。実施日・内容・資料・出席者(欠席者への後日対応も)が記録されている入職時に一度説明しただけ/出席者名簿がない
虐待防止の担当者担当者を置いている。誰かが辞令や運営規程・組織図で特定できる「たぶん管理者」で、書面で誰も指名されていない
身体拘束適正化検討委員会定期的に開催し、結果を従業者に周知徹底。身体拘束をしていなくても開催が必要(開催頻度の具体的な運用は指定権者の案内で確認)「うちは拘束していないから不要」と考えて未開催
身体拘束の指針自事業所の運営に合わせて整備し、職員が見られる場所にあるひな形の事業所名だけ差し替えて、誰も読んでいない
身体拘束の記録やむを得ず行った場合に、態様・時間・利用者の心身の状況・緊急やむを得ない理由を記録「拘束にあたるとは思っていなかった」行為が記録されていない
業務継続計画(BCP)感染症と非常災害の両方について策定し、計画に従って必要な措置を講じている作ったが職員が存在を知らない/訓練や見直しをしていない
情報公表障害福祉サービス等情報公表システムで報告が完了している前年度に報告したまま更新していない/担当者の異動で引き継がれていない

いちばん多いのが、身体拘束適正化検討委員会の未開催です。「うちは身体拘束をしていないので関係ない」というお考えは、制度上は通りません。要件は「拘束をした場合に記録すること」だけでなく、「委員会を定期的に開催すること」「指針を整備すること」「研修を定期的に実施すること」が並列で置かれています。拘束がゼロでも、委員会・指針・研修は必要です。

介護・障害福祉の事業者の方へ
これから開業される方にとっては、この話は「先の話」ではありません。指定申請と同時に出す体制等状況一覧表が、最初の自己申告になります。開設前に委員会・指針・研修・担当者の型を作っておけば、あとから遡って整えるという最も苦しい作業をせずに済みます。指定申請と同時に決めるものの全体像は、処遇改善加算を含めた開業前の段取りにまとめています。

ズレていたと分かったときに、何が起きるか

大切なのは、気づいた時点で自分から動いたかです。ここで対応が二手に分かれます。

段階実務でやること
①事実の確定どの要件が、いつから満たされていなかったかを記録で確認できる範囲だけ確定する。推測を混ぜない
②改善計画の提出運営基準を満たしていない事実が生じたら、速やかに指定権者へ改善計画を提出する。様式を用意している自治体が多い
③減算の届出体制等状況一覧表を「未実施あり」に直して届け出る。異動年月日は「事実が生じた月」の翌月1日とする運用が一般的(指定権者の案内に従う)
④改善報告事実が生じた月から3か月後に、改善計画に基づく改善報告書を提出する。改善が認められた月が減算の終了月になる
⑤請求の修正減算適用月の請求を済ませていた場合は、国保連への過誤申立てにより減算後の単位数で再請求する
⑥再発防止委員会・研修・指針・担当者・BCP・情報公表を1つのファイルに束ね、年間の実施カレンダーに落とす

この流れに素直に乗れば、負担は減算相当額にとどまります。一方、実施していないと知りながら「未実施なし」で請求を続けていた場合は、話が変わります。障害者総合支援法第8条第2項は、事業者が偽りその他不正の行為により給付費の支給を受けたときは、返還させるほか、返還額に100分の40を乗じた額を支払わせることができると定めています。実際に、この規定にもとづく返還請求と指定取消しの処分が自治体から公表されています。

「うっかり」と「知っていて」の差は、記録の残り方に出ます。だからこそ、気づいた時点の自主点検が最大の防御になります。

5分でできる自己点検

自己点検の5問答えられなければ
直近1年の虐待防止委員会の議事録を、いま出せますか(1年に1回以上の開催)「未実施なし」の届出と実態がずれている可能性
直近1年の研修と、新規採用者への研修の出席者名簿を、いま出せますか同上。開催の事実だけでは足りません
虐待防止の担当者は誰か、書面で示せますか担当者の配置が要件です
身体拘束適正化検討委員会を、拘束の有無にかかわらず開いていますか「していないから不要」は最も多い誤解
BCPは感染症と災害の両方ありますか。訓練の記録はどちらか欠けていれば未策定の扱い

1問でも詰まったら、いま届け出ている体制等状況一覧表の控えを出して、該当欄を確認してください。届出の内容と手元の記録が一致しているか。それだけの確認です。ズレていた場合の進め方は、上の表のとおりです。

当事務所の関わり方

体制等状況一覧表の内容と実態の突合、不足している委員会・指針・研修・担当者の整備、指定権者への相談の同席までをお受けしています。運営指導への備え全般は運営指導対策サポートを、加算の届出まわりは処遇改善加算の届出サポートをご覧ください。指摘事項への対応は改善報告書の書き方に整理しています。

要確認:体制等状況一覧表の様式・記載欄の名称、届出の期限、過誤申立ての手続と対象月の考え方は、指定権者ごとに運用が異なります。必ず所管の自治体の案内で確認してください。委員会の開催頻度や研修の実施回数についての具体的な運用も、指定権者の解釈により幅があります。本記事は2026年9月10日時点の一般的な整理です。

参考にした一次資料

※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・要領および指定権者の案内をご確認ください。

📍 千葉県ローカルメモ|千葉県の障害児通所支援では、体制届は毎月15日必着

千葉県の障害児通所支援(放課後等デイサービス・児童発達支援)では、加算の算定に関する体制等状況一覧表は毎月15日必着で翌月1日から適用、16日以降の提出は翌々月1日からの適用になります(2026年9月10日に県ページで確認)。届出の内容に変更が生じたときも同じ流れです。ここで確認していただきたいのは、「毎月出せる」ということは「毎月、実態と一致しているかを確認できる」ということでもあるという点です。委員会や研修の実施が滞っていることに気づいたら、まず記録を整え、必要に応じて届出の見直しを指定権者に相談してください。運営指導の全体像は運営指導で指摘されやすい事項をご覧ください。

※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。

💬 目加多のひとこと

この記事を書こうと思ったのは、「未実施なし」に丸を付けた瞬間の重さが、あまり語られていないと感じたからです。届出は行政とのやりとりの中でいちばん静かな手続きで、受理の連絡すら来ないことも多い。だからこそ、通ったことを「大丈夫だった」と受け取ってしまいます。私は人事の仕事を長くやってきて、書類が実態から離れていく瞬間を何度も見ました。離れるときはいつも、悪意ではなく忙しさが理由でした。だから責める話ではなく、いま手元の控えを1枚出して見比べる、それだけの話として書いています。

行政書士 目加多龍

執筆・監修

目加多 龍めかた りょう

行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)

行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/2級FP技能士(AFP)。ブリヂストン系列企業とNEC系列企業で人事・労務の現場15年を経て2026年に独立。個人向けキャリア相談はココナラで約70件・全件★5.0(プラチナランク・2026年7月時点)。障害福祉・障害児支援の指定申請を軸に、資金調達から人材の定着まで、中小企業の「手続き」「資金」「人材」を一体で支援しています。

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