— 30秒でわかる結論 —
Q. 介護・障害福祉の記録は何年保存すればいいですか?
介護保険の運営基準(省令)ではサービス提供に関する記録は完結の日から2年間ですが、条例で5年間に延長している自治体があります(千葉市は条例で5年間。東京都は条例でも2年で、起算点は「契約終了の日」と定めています)。障害福祉サービスは完結の日から5年間です。返還の遡及が実務上最大5年に及び得ること、介護と障害福祉を併営する法人では年限を分けると混乱することから、当事務所はすべての記録を5年で統一することを勧めています。起算点の「完結の日」は作成日ではなく、その利用者へのサービス提供が終了した日です。
この記事は制度の解説です。運営指導の事前点検・対策のご依頼は、料金と流れを専用のページでご案内しています。
こんな方に読んでいただきたい記事です
- 保管場所が足りず、古い記録をいつ捨ててよいか判断に迷っている管理者の方
- 介護保険と障害福祉の両方を運営していて、年限の違いに戸惑っている法人の方
- 「作成から2年」と思って廃棄してしまっていないか、不安になった方
結論:介護は「省令2年・条例で5年の自治体あり」、障害福祉は「5年」
介護保険の運営基準(省令)では、サービス提供に関する記録は完結の日から2年間保存すると定められています。ただし基準は都道府県・市の条例に委ねられており、条例で5年間に延長している自治体があります(例:千葉市は条例で完結の日から5年間)。一方、東京都のように2年のまま(起算点は「契約終了の日」)の自治体もあります。自分の指定権者の年限は、必ず条例の原典で確認してください。障害福祉サービス(障害者総合支援法)の基準では完結の日から5年間です。
| 制度 | 国の基準(省令) | 自治体の条例 | 起算点 |
|---|---|---|---|
| 介護保険 | 完結の日から2年間 | 2年のままの自治体と、5年に延長した自治体がある(千葉市は5年) | 「完結の日」(自治体により「契約終了の日」等の表現) |
| 障害福祉 | 完結の日から5年間 | 5年が基本 | 完結の日 |
| 障害児通所支援 | 5年間が基本(省令・条例で要確認) | ― | 完結の日 |
なぜ「5年で統一」を勧めるのか
当事務所では、制度上2年で足りる場合でも、すべての記録を5年で統一することを勧めています。理由は3つです。
- 返還の遡及が実務上最大5年に及び得るから。2年で廃棄した記録が、5年遡及の自主点検で提示できず、「記録がない=やっていない」と扱われる事故が実際に起きます。
- 介護保険と障害福祉の両方を運営する法人では、制度ごとに年限を分けると現場が混乱するから。
- 運営指導の確認対象期間が直近数年分に及ぶことがあり、年限をまたぐ記録を「ある」と言える状態が最も楽だから。
「保存年限を5年で統一した」は、当事務所の運営指導30項目チェックの1項目にもなっています。
— この段階でご相談いただく理由 —
保存年数を決めるだけでは足りず、「どの記録が」「どこに」「誰が探せる形で」あるかまで整っていないと、運営指導で「記録がない」になります。記録の一覧表と保管ルールの雛形をお渡しし、事業所の実態に合わせて調整します。
「完結の日」とは、いつのことか
起算点は「完結の日」——一般に、その利用者へのサービス提供が終了した日(契約終了日等)を指します。作成日から2年ではありません。長く利用されている方の記録は、利用が続く限り保存が続きます。ここを「作成から2年」と誤解して、利用中の方の古い記録を廃棄してしまう事故が起きやすいと感じています。自治体によって「契約終了の日」など表現が異なるので、条例の文言で確認してください。
年限を守るための仕組み——年度ごとの「完結処理」
| 時期 | やること |
|---|---|
| 契約終了時 | 利用者ファイルに「完結日」を記入し、廃棄予定年度(完結日+5年)を表紙に書く |
| 3月(年度末) | 年度の記録の完結処理と、保存年限の棚卸し(廃棄予定を過ぎたものだけ廃棄) |
| 随時 | 電子保存にする場合は、改ざん防止・出力可能性など電磁的記録の要件を満たす運用に |
廃棄は「捨てる日を決めてから捨てる」が原則です。年限を過ぎたからと自動で捨てず、運営指導・監査・訴訟等の対象になっていないかを確認してから廃棄する運用が安全ではないでしょうか。
▶ 運営中の手続き全体(変更届・指定更新・加算・処遇改善・運営指導)の入口は「運営中の介護・障害福祉事業所さまへ」にまとめています。
参考にした一次資料
- 「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)
- 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(平成18年12月6日障発第1206001号)
- 千葉市指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準を定める条例
- 東京都指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営の基準に関する条例(記録の保存:契約終了の日から二年間)
- 厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」(令和4年3月策定・令和6年7月改訂)
- 当事務所「介護・障害福祉の運営指導 完全実務ガイド」(2026年8月版)
※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・要領および指定権者の案内をご確認ください。
📍 千葉県ローカルメモ|千葉市は条例で「完結の日から5年間」
千葉市(市指定)の指定居宅サービス等基準条例では、サービス提供に関する記録を「完結の日から5年間」保存すると定めています。千葉県条例(平成24年条例第68号)、船橋市・柏市の条例の年限は、それぞれの原典で要確認です。松戸・流山・市川の事業所(千葉県指定の類型)も含め、5年で統一しておけば、どの指定権者の年限にも対応できます。
※2026年9月19日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。
💬 目加多のひとこと
記録は行政のために書くものではなく、その日のうちに書かれた提供記録は職員の引き継ぎを支え、勤務実績は職員の賃金を守り、預り金の出納簿は利用者の財産と職員の潔白を守ります。保存年限の話は、その記録を「守り切る」話でもあると感じています。中小企業の『手続き』『資金』『人材』、三つの現場から。

執筆・監修
目加多 龍めかた りょう
行政書士 × 人事・財務アドバイザー(目加多龍行政書士事務所 代表)
行政書士/2級FP技能士(AFP)/国家資格キャリアコンサルタント。
障害福祉・障害児支援とNPO法人を専門にしています。放課後等デイサービス・児童発達支援・就労継続支援A型・B型・グループホーム(共同生活援助)などの指定申請、処遇改善加算・変更届・指定更新・運営指導(実地指導)への対応を支援します。NPO法人は、設立認証から事業報告書・役員変更などの運営まで支援します。
企業人事15年の経験を土台に、児発管・サビ管の採用・定着、融資・補助金や資金繰りまで、「書類・人・お金」を一体で支えます。