— 30秒でわかる結論 —

Q. 介護・障害福祉で、行政に報告しなければならない事故の基準は何ですか?

介護保険では、厚生労働省の通知(令和3年3月19日・介護保険最新情報Vol.943、令和6年11月29日Vol.1332で様式改訂)が標準様式を示し、報告対象の目安として①死亡に至った事故、②医師の診断を受け投薬・処置等なんらかの治療が必要となった事故を挙げています。その他の事故を報告対象とするかは各自治体の取扱いによるため、市町村の要領の確認が必要です。報告先は市町村です。障害福祉サービス等では、国の準則例を踏まえて都道府県が事故等発生時の報告取扱要領を定めており、原則として支給決定市町村と指定権者(都道府県・政令市・中核市)の双方へ報告します。第一報は事実のみを速やかに、最終報告では原因分析と再発防止策を仕組みで書きます。虐待が疑われる事案は事故報告とは別に市町村への通報義務があります。

こんな方に読んでいただきたい記事です

  • 利用者の転倒や誤薬が起きて、行政に報告すべきか迷っている管理者・サービス管理責任者の方
  • 事故報告書の書き方が事業所内で統一されていない事業所の方
  • 運営指導を控えて、事故報告と再発防止の記録を点検したい方

「これは報告すべき事故か」で迷わないために

利用者がころんだ、送迎中に接触した、誤薬があった——現場で最初に迷うのは「これは行政に報告する事故なのか」です。判断が遅れて報告が後手に回ると、事故そのものより報告の遅れが問題になります。運営指導でも、事故の有無ではなく「報告と再発防止の記録があるか」が見られます。

介護保険と障害福祉では、報告の枠組みが違います。まずそこを分けて押さえてください。

介護保険——国が標準様式を示している

介護保険では、指定基準により、サービス提供により事故が発生した場合は速やかに市町村・家族等へ連絡し必要な措置を講ずることとされています。市町村ごとに基準がばらついていたため、厚生労働省が令和3年3月19日付の通知(介護保険最新情報Vol.943)で標準の報告様式を示し、令和6年11月29日付の通知(Vol.1332)でチェックボックス形式に改訂しました(市町村が独自項目を追加できる欄も設けられています)。

同通知が示す報告対象の目安は次の2つです。

  • ①死亡に至った事故
  • ②医師(施設の勤務医・配置医を含む)の診断を受け、投薬・処置等なんらかの治療が必要となった事故

そのうえで通知は、「その他の事故の報告については、各自治体の取扱いによる」としています。つまり「経過観察のみ」「湿布のみ」といったケースを報告対象にするかは自治体ごとで、ここが実務の分かれ目です。自分の市町村の要領を必ず確認してください(柏市のように、標準様式に準拠した様式を定め、原則メール提出としている自治体もあります)。

障害福祉——都道府県の「取扱要領」に沿って報告する

障害福祉サービス等では、国の準則例(標準例)を踏まえて都道府県が事故等発生時の報告取扱要領を定め、事業者はそれに沿って報告します。報告先は、原則として支給決定をしている市町村と、指定権者である都道府県(政令市・中核市)の双方です。第一報の様式は適宜でよいが、事故処理の区切りがついたところで所定の様式で報告する、という運用が一般的です。障害児(児童福祉法)と障害者(総合支援法)で様式が分かれている自治体もあります。

報告の3段階と、書き方の型

段階いつ何を
第一報事故を認識したらできるだけ早く(当日中を目安に)事実のみ——いつ・どこで・誰が・何が起きたか・現在の状態・受診の有無・家族への連絡状況
中間報告状況が動いたとき(診断確定・入院・容体変化)経過と、判明した事実。推測は書かない
最終報告事故処理の区切りがついたとき原因分析と再発防止策。ここが運営指導で最も見られる

書き方の鉄則は「事実と評価を分ける」ことです。「見守りが不十分だった」は評価、「◯時◯分、職員2名が別室で入浴介助中、当該利用者は食堂に1名でいた」が事実。事実を書けば、評価は読む側が判断します。逆に、事実を曖昧にしたまま反省だけを書いた報告書は、追加の説明を求められます。

再発防止策は「注意します」で終わらせない

最終報告で問われるのは、個人の注意ではなく仕組みです。誰が・いつ・何をするかまで書いてください。

  • ×「職員に注意喚起した」→ ○「毎朝の申し送りで、転倒リスク者3名の見守り担当を割り当てる(サビ管・毎日)」
  • ×「誤薬に気をつける」→ ○「与薬時のダブルチェックを手順書に追加し、チェック欄を服薬記録に設ける(管理者・9月中)」

この考え方は、運営指導の改善報告書とまったく同じです(改善報告書の書き方5点セット)。

事故報告と、日常の記録・研修はつながっている

事故発生の防止のための指針、委員会の設置、研修の実施は運営基準に位置づけられており、未実施減算の対象にもなり得ます。事故報告は単発の書類ではなく、指針→研修→事故→報告→再発防止→指針の見直しという輪の一部です。運営指導では、この輪が回っているかを、事故報告書と委員会の議事録の両方で確認されます。

要確認:報告の対象範囲(軽微な事故を含むか)、様式、提出方法(メール・電子申請・郵送)、提出期限は、市町村・都道府県ごとに定められています。本記事は2026年9月2日時点の国の通知・準則例にもとづく一般的な整理です。自分の事業所の扱いは、必ず指定権者と支給決定市町村の要領で確認してください。虐待が疑われる事案は事故報告とは別に、速やかに市町村へ通報する義務があります。

当事務所の関わり方

事故が起きた直後のご相談も承っています。多いのは「報告すべきか迷っているうちに数日経ってしまった」というケースです。迷ったら報告する、が原則です。報告書の書き方、再発防止策の設計、その後の運営指導への備えまで、運営中の事業所さま向けの窓口からご相談ください。

参考にした一次資料

※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・要領および指定権者の案内をご確認ください。

📍 千葉県ローカルメモ|千葉県内の提出先

介護保険の事故報告は市町村へ提出します(柏市は標準様式に準拠した様式を定め、原則メール提出としています)。障害福祉は、支給決定をしている市町村と、指定権者である千葉県または千葉市・船橋市・柏市の双方への報告が原則です。様式と提出方法は自治体ごとに異なるため、平時のうちに自分の事業所の提出先・様式・メールアドレスを一覧にしておくことをお勧めします。

※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。

💬 目加多のひとこと

事故が起きた直後のご相談で、いちばん多いのが「報告すべきか迷っているうちに数日経ってしまった」というものです。迷ったら報告する。これに尽きます。報告して怒られることはまずありませんが、報告しなかったことは必ず問題になります。

行政書士 目加多龍

執筆・監修

目加多 龍めかた りょう

行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)

行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/2級FP技能士(AFP)。ブリヂストン系列企業とNEC系列企業で人事・労務の現場15年を経て2026年に独立。個人向けキャリア相談はココナラで約70件・全件★5.0(プラチナランク・2026年7月時点)。障害福祉・障害児支援の指定申請を軸に、資金調達から人材の定着まで、中小企業の「手続き」「資金」「人材」を一体で支援しています。

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