— 30秒でわかる結論 —

Q. 介護・障害福祉の事業所で、利用者の写真をSNSに投稿してもいいですか?

同意の取り方次第です。利用者の記録・写真には障害の状況など要配慮個人情報が含まれ得るため、取得と第三者提供には原則として本人(保護者)の同意が必要で、指定基準上も秘密保持の義務があります。契約時の包括的な同意書では足りず、「支援に必要な情報の取得・利用」「関係機関との共有」「写真・動画・作品の利用」の3つに分け、写真については事業所内掲示・お便り・ウェブサイト・SNSなど媒体ごとに◯×を取り、いつでも撤回できることと撤回後の対応を明記してください。投稿前は、同意していない利用者の写り込み、職員の個人アカウントからの投稿、位置情報や外出先の特定、顔を隠しても服装や持ち物で特定できることの4点を2人で確認します。運営指導では同意書より、誓約書・研修記録・保管方法といった秘密保持の体制が見られます。

こんな方に読んでいただきたい記事です

  • 放デイ・児発・就労支援・GHで、行事や作品の写真をSNSやお便りに載せている(載せたい)管理者の方
  • 契約時の同意書を作って以来、見直していない事業所の方
  • 職員が個人のSNSに投稿していないか不安な法人の方

「行事の写真をインスタに上げたいんですが、大丈夫ですか」

放課後等デイサービスや就労支援の事業所から、よく受ける相談です。答えは「同意の取り方次第」なのですが、現場で起きている問題はもう少し手前にあります。契約時の同意書に「写真の利用」が入っているから大丈夫、と思っていること。そして保護者から「載せないで」と言われた利用者の写真が、集合写真の端に写っていること。この2つが、苦情と信頼失墜の典型です。

まず整理——利用者の記録・写真は「個人情報」であり「要配慮個人情報」を含む

介護・障害福祉の事業所が扱う情報は、氏名や住所だけではありません。障害の有無・程度、病歴、支援の内容は、個人情報保護法で「要配慮個人情報」に位置づけられ、取得には原則として本人の同意が必要で、本人の同意なく第三者に提供することは原則できません(オプトアウトによる第三者提供も認められていません)。写真に障害の状況が写り込めば、それも同じ扱いです。

指定基準の側からも、事業者には利用者・家族の秘密保持と、正当な理由なく業務上知り得た秘密を漏らさない体制(従業者への周知・退職後の守秘の取り決め)が求められています。「SNSに上げるのは広報だから」という理屈は、ここでは通りません。

同意書は「3つ」に分ける

ひとつの同意書に「写真・記録・第三者提供」をまとめて書くと、保護者は内容を理解しないまま署名し、後で「そんなつもりではなかった」になります。用途ごとに分けてください。

同意の種類何のための同意かポイント
①支援に必要な情報の取得・利用アセスメント・個別支援計画・記録の作成契約時に必須。ここは断られることがほぼない
②関係機関との情報共有学校・相談支援事業所・医療機関・行政との連携誰と・何を・何のために共有するかを列挙。包括的な「関係機関」だけでは弱い
③写真・動画・作品の利用事業所内掲示/お便り/ウェブサイト/SNS/パンフレット媒体ごとに◯×を付ける。「SNSは不可、お便りは可」という保護者は多い。いつでも撤回できることを明記

③は撤回できることと、撤回後の対応(既に投稿したものを削除する/削除できない範囲の説明)まで書いておくと、後の紛争を防げます。

SNS運用で実際に起きた4つの事故パターン

  • 写り込み——本人は同意していても、背景に同意していない利用者や、他の利用者の名前が書かれた掲示物が写っている。投稿前に「本人以外に誰が・何が写っているか」を2人で確認する。
  • 職員の個人アカウント——事業所の公式ではなく、職員が個人のSNSに利用者の写真を上げる。就業規則・服務規程で禁止し、入職時の誓約に含める。退職後も同じ。
  • 位置情報・時間——投稿の位置情報や「今日の外出先」で、利用者の行動パターンが特定できる。障害のある方の外出先の特定は、安全上の問題になり得る。
  • 「顔を隠したから大丈夫」——顔にスタンプを付けても、服装・持ち物・体型で本人や保護者には分かる。保護者が「うちの子だ」と分かる投稿は、本人特定情報として扱う。

運営指導で見られるのは「同意書」より「体制」

運営指導では、同意書の有無だけでなく、秘密保持の体制——誓約書(在職中・退職後)、研修の実施記録、記録の保管方法(施錠・アクセス制限)、持ち出し禁止のルール——が確認されます。SNSの運用ルールも、その体制の一部として文書化しておくと説明が楽です。運営指導の日常整備は指摘されやすい10項目にまとめています。

今週できる3つ

  • 契約時の同意書を開き、写真・SNSの項目が媒体ごとに分かれているかを確認する。分かれていなければ③だけ別紙で作り直す
  • SNSに投稿する前のチェック手順を1枚にする(誰が撮影・誰が確認・写り込み・位置情報・同意の有無)
  • 職員の誓約書に個人アカウントでの投稿禁止と退職後の守秘が入っているかを確認する
要確認:個人情報保護法の解釈と運用は個人情報保護委員会のガイドライン、指定基準上の秘密保持義務はサービス種別ごとの基準省令・解釈通知によります。本記事は2026年9月3日時点の一般的な整理で、同意書の様式・記録の保管方法・研修の頻度は指定権者の運用や運営指導の確認項目により異なります。個別の事案(既に起きたトラブル、法的紛争)は弁護士にご相談ください。

当事務所の関わり方

同意書(3種)の設計、SNS運用ルールと投稿前チェック表の作成、職員向け研修、運営指導前の秘密保持体制の棚卸しをお受けしています。運営中の事業所さま向けの窓口からご相談ください。

参考にした一次資料

  • 個人情報保護法(要配慮個人情報の取得・第三者提供の原則)および個人情報保護委員会のガイドライン
  • 各サービスの指定基準省令(秘密保持等)
  • 当事務所「介護・障害福祉の運営指導 完全実務ガイド」(2026年8月版)

※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・要領および指定権者の案内をご確認ください。

📍 千葉県ローカルメモ|千葉県内の事業所の方へ

運営指導で秘密保持の体制を確認する項目は、千葉県・千葉市・船橋市・柏市の運営指導の実施要領・自己点検表で確認できます。SNSの運用ルールを文書化しておくと、確認の際に「体制がある」ことを示す資料になります。

※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。

💬 目加多のひとこと

写真の相談を受けると、私はまず「保護者が一番嫌がるのは何だと思いますか」と聞きます。答えはたいてい「勝手に載せられること」ではなく「載せてほしくないと言えない空気」です。同意書を媒体ごとに分けるのは、断りやすくするためでもあります。

行政書士 目加多龍

執筆・監修

目加多 龍めかた りょう

行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)

行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/2級FP技能士(AFP)。ブリヂストン系列企業とNEC系列企業で人事・労務の現場15年を経て2026年に独立。個人向けキャリア相談はココナラで約70件・全件★5.0(プラチナランク・2026年7月時点)。障害福祉・障害児支援の指定申請を軸に、資金調達から人材の定着まで、中小企業の「手続き」「資金」「人材」を一体で支援しています。

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