— 30秒でわかる結論 —
Q. 業務管理体制の届出とは何ですか。うちのような1事業所の法人にも必要ですか?
必要です。業務管理体制の届出は、指定を受けたすべての介護サービス事業者・障害福祉サービス事業者等に課される法人単位の義務で、事業所数が20未満なら「法令遵守責任者の選任」を届け出ます(20以上で法令遵守規程、100以上で定期監査が加わります)。届出先は事業所の広がりで決まり、1つの都道府県内なら都道府県知事、すべて同一の指定都市・中核市内ならその市長、2以上の都道府県にまたがれば厚生労働大臣(地方厚生局)です。新規指定時のほか、法令遵守責任者の交代など届出事項の変更時にも遅滞なく届け出ます。未届は運営指導で確認される項目です。
こんな方に読んでいただきたい記事です
- 自力または他の事務所で指定を取り、業務管理体制の届出を出した記憶がない法人の代表者・管理者の方
- 代表者や管理部門の交代があり、法令遵守責任者の変更届を出したか不安な方
- 介護保険と障害福祉、または複数の市に事業所を持ち、どこに何件出すのか整理したい方
「事業所ごとの届出」ではなく「法人ごとの届出」
指定申請・変更届・体制届は事業所単位の手続きですが、業務管理体制の届出だけは事業者(法人)単位の手続きです。介護保険法第115条の32(介護サービス事業者)、障害者総合支援法第51条の2(障害福祉サービス事業者等)、児童福祉法(障害児通所支援事業者等)にもとづき、指定を受けたすべての事業者に法令遵守のための体制を整備し、その内容を届け出る義務があります。介護保険では2009年5月から、障害福祉・障害児では2012年4月から義務化されている制度で、開業支援を受けずに自力で指定を取った事業者ほど、この届出の存在自体を知らないまま運営していることが少なくないと感じています。
届出を怠っても直ちに報酬に影響するわけではありませんが、運営指導で「業務管理体制の届出はされていますか」と確認される項目であり、未届は法人としての法令遵守体制がないと受け取られます。1事業所の小さな法人であっても対象です。
整備する内容は「事業所数」で3段階に分かれる
整備すべき内容は、その法人が指定を受けている事業所等の数で決まります(介護保険・障害福祉とも同じ3段階です)。
| 指定事業所等の数 | 整備・届出の内容 |
|---|---|
| 20未満 | ①法令遵守責任者の選任(氏名・生年月日を届出) |
| 20以上100未満 | ①に加えて、②業務が法令に適合することを確保するための規程(法令遵守規程)の整備(概要を届出) |
| 100以上 | ①②に加えて、③業務執行の状況の監査を定期的に行う体制(監査の方法の概要を届出) |
多くの中小事業者は「20未満」に該当し、届け出るのは法令遵守責任者の氏名と生年月日、事業者の名称・所在地・代表者、そして事業所等の一覧です。法令遵守責任者に資格要件はありませんが、厚生労働省の案内では「事業者内部の法令遵守を徹底できる者」が想定されており、代表者や管理部門の責任者を充てるのが一般的です。何の権限も持たない他法人の職員を選任することは想定されていない、とされています。
事業所数の数え方には注意点があります。介護保険では、みなし指定の事業所(保険医療機関等が行う訪問看護・居宅療養管理指導など)と総合事業の事業所は数に含めません。障害福祉では、障害者総合支援法と児童福祉法の根拠条文ごとに事業者の種類が分かれており、同一法人でも該当する種類ごとに届出が必要です(例:障害福祉サービスと障害児通所支援の両方を運営する法人は2件の届出)。
届出先は「事業所がどこに広がっているか」で決まる
届出先も法人単位で判定します。介護保険の原則的な区分は次のとおりです。
| 事業所等の所在状況 | 届出先 |
|---|---|
| 指定事業所・施設が2以上の都道府県に所在する | 厚生労働大臣(地方厚生局が窓口。3以上の地方厚生局の管轄区域にまたがる場合は厚生労働省本省) |
| 地域密着型サービス(介護予防を含む)のみを行い、事業所がすべて同一市町村内に所在する | 市町村長 |
| 事業所がすべて同一の指定都市・中核市内に所在する | その指定都市・中核市の長(千葉市・船橋市・柏市など) |
| 上記以外(1つの都道府県内に所在) | 都道府県知事 |
障害福祉・障害児も骨格は同じで、都道府県・指定都市・中核市・市町村・厚生労働省のいずれかに届け出ます。松戸市・流山市・市川市などに事業所がある法人は千葉県、千葉市内だけで運営している法人は千葉市、というように、指定申請の窓口の分岐(県か市か)と似た構造です。ただし業務管理体制は法人単位なので、松戸市と千葉市の両方に事業所を持つ法人は「県内の複数市」として千葉県が届出先になります。
いつ出すのか——新規・変更・区分変更・所管変更の4場面
- 新規:はじめて指定を受けたとき(指定と同時期に「遅滞なく」届け出る)。開業時の書類リストに入れておくのが最も確実です。
- 届出事項の変更:法令遵守責任者の交代、法人の名称・所在地・代表者の変更、事業所の追加・廃止による一覧の変更など。こちらも「遅滞なく」です。
- 区分の変更:事業所数が20以上(または100以上)になった/下回ったとき。整備すべき内容そのものが変わります。
- 届出先の変更:他県や他の指定都市・中核市に事業所を出し、届出先の区分が変わったとき。変更前と変更後の両方の行政機関に届け出る必要があります。
実務上いちばん漏れやすいのは2番目の「法令遵守責任者の交代」です。代表者交代や管理部門の異動で、指定申請の変更届は出したのに業務管理体制の届出を忘れる、というケースを何度も見てきました。変更届・指定更新の年間管理に「業務管理体制(法人単位)」の行を1つ足しておくだけで防げます。
運営指導での見られ方と、当事務所の関わり方
運営指導(実地指導)では、届出の有無に加えて、届け出た法令遵守責任者が実際に機能しているか——各事業所の法令遵守の取組状況の把握、職員研修、関係法令の情報収集と周知、法令違反があった場合の事実確認と解決策の検討——を確認する自治体があります。20未満の小規模法人に求められる水準は高くありませんが、「名前を届けただけ」では説明に困ります。年1回の集団指導への参加と資料の保存、指摘されやすい10項目の自己点検を、法令遵守責任者の年間業務として位置づけておくと、それ自体が「取組状況の把握」の記録になります。
当事務所では、新規指定時の届出をセットで行うほか、既に運営中の法人については届出状況の棚卸しの中で「業務管理体制の届出が出ているか・法令遵守責任者は現在の体制と一致しているか」を確認項目に含めています。変更届(税込22,000円〜)と同じ枠組みでスポットでもお受けしていますので、心当たりのある方はまず現状をお聞かせください。
参考にした一次資料
- 厚生労働省「介護サービス事業者の業務管理体制の監督について」(老健局総務課介護保険指導室)
- 厚生労働省「介護サービス事業者の業務管理体制整備に関する届出について」(介護保険法第115条の32・同法施行規則第140条の40)
- 神奈川県「業務管理体制の整備に関する届出」(障害者総合支援法・児童福祉法/根拠条文ごとの届出)
- 千葉市「業務管理体制の整備」(障害福祉サービス事業者等)
- 当事務所「介護・障害福祉の運営指導 完全実務ガイド」(2026年8月版)
※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・要領および指定権者の案内をご確認ください。
📍 千葉県ローカルメモ|届出先の見分け方(障害福祉)
千葉市・船橋市・柏市の指定都市・中核市内だけで運営する法人はその市、松戸・流山・市川・我孫子など県指定の市に事業所がある法人(県内の複数市にまたがる法人を含む)は千葉県が届出先の原則です。東京都など他県にも事業所がある場合は厚生労働大臣(関東信越厚生局)になります。障害福祉は障害者総合支援法と児童福祉法で別々に届け出ます。
※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。
💬 目加多のひとこと
指定申請を自力でされた方の書類を拝見すると、変更届や体制届は出しているのに、この届出だけ抜けていることが本当に多いのです。制度が「事業所」ではなく「法人」を見ているという一点だけ押さえれば、あとは一覧表を添えて出すだけの手続きです。運営指導の前に、静かに埋めておきましょう。

執筆・監修
目加多 龍めかた りょう
行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)
行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/2級FP技能士(AFP)。ブリヂストン系列企業とNEC系列企業で人事・労務の現場15年を経て2026年に独立。個人向けキャリア相談はココナラで約70件・全件★5.0(プラチナランク・2026年7月時点)。障害福祉・障害児支援の指定申請を軸に、資金調達から人材の定着まで、中小企業の「手続き」「資金」「人材」を一体で支援しています。
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