— 30秒でわかる結論 —

Q. 虐待防止や身体拘束の「未実施減算」とは何ですか?何をしていれば減算されませんか?

基準で求められる措置を講じていない場合に、基本報酬そのものが減算される仕組みです。虐待防止措置未実施減算では、①虐待防止委員会を年1回以上開催して結果を従業者に周知②虐待防止の研修を年1回以上実施③これらを実施する担当者を配置、の3つが骨子で、障害福祉サービス等では令和6年4月から適用され減算率は所定単位数の100分の1(障害福祉の例)です。身体拘束廃止未実施減算では、記録・委員会・指針・研修の4点が求められ、重要なのは「身体拘束をしていない事業所でも、措置が未実施なら減算対象になり得る」という点。ほかに業務継続計画(BCP)未策定減算、情報公表未報告減算があります。減算は事実が生じた月の翌月から改善が認められた月までで、過去に遡って適用されることはないとされています。減算率や対象は制度・類型で異なるため、最新の告示と指定権者の資料での確認が確実です。

こんな方に読んでいただきたい記事です

  • 委員会や研修をまだ開催していない事業所の方
  • 「拘束していないから関係ない」と考えている方
  • 小規模で委員会の開催が難しいと感じている方

📗 関連の深掘り——体制等状況一覧表で「未実施なし」と届け出ている場合の責任(減算率の一覧、運営指導での判定の線引き、ズレが分かったときの過誤申立ての手順)はこちらの記事で扱っています。

いちばん怖いのは「やっていないと気づいていない」こと

運営指導の対応で、事業所の方がいちばん驚かれるのがこの領域です。加算を取り損ねる「取りこぼし」と違い、気づかないうちに基本報酬そのものが毎月削られる——それが未実施減算です。

しかも要件の中身は、難しい設備投資でも高度な専門知識でもありません。委員会を年1回開く。指針を作る。研修を年1回やる。担当者を決める。——この程度のことで、やっていなければ減算、やっていれば減算なし。これほど費用対効果の高い「守り」は他にありません。

この記事の対象——介護・障害福祉の全サービス類型に共通です

放課後等デイサービス児童発達支援グループホーム(共同生活援助)就労継続支援A型・就労継続支援B型・就労移行支援・就労定着支援/生活介護/同行援護/行動援護/短期入所/自立訓練/保育所等訪問支援/相談支援(その他類型の依頼ガイド)——いずれにも対応しています(運営指導対応サポート)。

ここは必ず確認を——措置の未実施そのものが減算要件

厚生労働省のQ&Aでは、身体的拘束等を行っていない場合でも、適正化のための措置が未実施なら減算対象となる旨が示されています。拘束の有無ではなく、委員会・指針・研修という措置を講じているかが問われます。

4つの未実施減算——構造は驚くほど似ています(当事務所の独自整理)

※減算率・適用時期・対象サービスは制度(介護保険/障害福祉)と類型、経過措置の有無で異なります。上記は2026年8月時点で確認した骨子であり、自事業所の正確な取扱いは最新の告示・指定権者の資料でご確認ください(当事務所でも確認を代行します)。

減算求められる措置の骨子備考
虐待防止措置未実施減算①虐待防止委員会を年1回以上開催し、結果を従業者に周知
②虐待防止の研修を年1回以上実施
③これらを適切に実施する担当者を配置
障害福祉サービス等では令和6年4月から適用。減算率は所定単位数の100分の1(障害福祉の例)。介護保険サービスでも同様の減算が新設されています
身体拘束廃止未実施減算①身体拘束等を行う場合の記録
②適正化検討委員会を年1回以上開催し周知
③適正化のための指針を整備
④適正化の研修を年1回以上実施
拘束をしていなくても、措置(委員会・指針・研修)が未実施なら減算対象という点が最大の誤解ポイント。減算率は制度・類型で異なるため要確認
業務継続計画(BCP)未策定減算感染症・災害それぞれの業務継続計画を策定し、計画に従い必要な措置を講じていることいずれか又は両方が未策定かつ必要な措置が講じられていない場合が対象。周知・研修・訓練・見直しの有無は、この減算自体の要件ではないとされています(ただし運営基準上は別途求められます)
情報公表未報告減算制度に基づく情報公表(未報告の場合に減算)公表制度への未報告が対象。運用は指定権者の案内で確認を

減算はいつから、いつまで?——「翌月から改善月まで」の仕組み

実務でよく聞かれるのがこの点です。運営指導等で基準を満たさない事実が確認された場合、その事実が生じた月の翌月から、改善が認められた月まで、利用者全員について減算される取扱いが一般的です。そして重要な点として、厚生労働省のQ&Aでは発見した日の属する月より過去に遡って減算を適用することはできないと示されています。

つまり——今日気づいて今月中に整えれば、傷は最小で済む。過去に遡って何百万円という話ではなく、「これから」を止められるかどうかの勝負です。だからこの記事を読んだ今日が、いちばん安いタイミングなのです。

誤解トップ3——ここで多くの事業所がつまずきます

誤解①「うちは身体拘束をしていないから関係ない」——最大の落とし穴です。拘束の有無ではなく、措置(委員会・指針・研修)を講じているかが要件。拘束ゼロの事業所こそ「関係ない」と思い込んで未実施になりがちです。

誤解②「小規模だから委員会なんて無理」——委員会は法人単位での設置・開催が可能とされ、虐待防止委員会と身体拘束適正化検討委員会を一体的に運営することも可能です。オンライン会議も認められています。小規模事業所は、法人内合同・他委員会との合同・外部研修の活用で十分に成立します。

誤解③「研修は年1回やればいい」——定期研修に加えて、新規採用時の研修が求められる点を落としがちです。職員の入れ替わりが多い事業所ほど、ここが穴になります。

今日からできる「減算ゼロ」の型——4点セットを1つのファイルに

難しく考える必要はありません。当事務所がおすすめしているのは、①委員会の議事録 ②指針 ③研修の実施記録(資料・参加者名簿・新規採用者分を含む)④担当者を定めた文書——この4点を、虐待防止・身体拘束・BCPそれぞれについて1つのファイルにまとめておくことです。運営指導で求められるのは、まさにこの束。ファイルがあれば、通知が来ても慌てません(通知が来たら最初の24時間)。

そして運用のコツは、年間カレンダーに落とすこと。「毎年◯月に委員会と研修を合同開催」と決めてしまえば、記憶に頼らず回ります(体制届の年間カレンダー化)。

当事務所ができること

虐待防止・身体拘束適正化・BCPの指針や様式の整備、委員会・研修の年間設計、記録の型づくり、そして運営指導での確認対応まで、運営顧問(月額35,000円〜)の範囲でご一緒します。「今の状態で減算に当たらないか」の点検だけでも、初回無料相談(60分)でお持ち帰りいただけます。指摘されやすい項目全体は指摘されやすい10項目もご覧ください。

手続き・資金・人材を、ひとつの窓口で。当事務所は障害福祉・障害児支援の指定申請・運営指導対応・処遇改善加算の届出に加えて、創業融資・資金繰りの支援と、人事15年×国家資格キャリアコンサルタントによる採用・定着支援をワンストップで提供します。初回60分無料・オンライン全国対応。

参考にした一次資料

  • 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」(虐待防止措置未実施減算・身体拘束廃止未実施減算・業務継続計画未策定減算の新設)
  • 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定に関するQ&A」(身体的拘束等を行っていない場合の取扱い、減算の適用時期)
  • 各サービス類型の指定基準を定める厚生労働省令(虐待防止・身体拘束等の適正化・業務継続計画に関する規定)
  • 各指定権者が公表する減算の取扱い・改善報告の様式案内

※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・通知および指定権者の案内をご確認ください。

📍 千葉県ローカルメモ|千葉県内での確認先と、この論点の重み

減算の取扱い・様式・改善計画の提出先は指定権者(千葉市・船橋市・柏市の事業所は各市、松戸・流山・市川などは千葉県)です。運営指導の際に真っ先に確認される領域でもあるため、候補となる書類は日頃から1ファイルにまとめておくと当日の負担が大きく変わります。なお2025年度から就労A型・B型、グループホーム、児童発達支援、放課後等デイサービスの5事業について運営指導の頻度を高める方針が示されており、この4点の整備は今後さらに重みを増すと考えています。

※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。

💬 目加多のひとこと

この記事を書きながら、複雑な気持ちになりました。虐待防止も身体拘束の適正化も、本来は減算を避けるためではなく、利用者さんの尊厳を守るための取り組みです。ただ、現場が忙しさに飲まれるとき、制度は「減算」という形で背中を押してくる。それが良いことなのか、私にはまだ答えが出ません。でも一つだけ言えるのは、委員会と研修を形式で終わらせず、支援を見直す時間として使えたなら、それは減算対策以上の価値を持つということです。

行政書士 目加多龍

執筆・監修

目加多 龍めかた りょう

行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)

障害福祉・障害児支援の指定申請を専門とする行政書士。放課後等デイサービス・児童発達支援・グループホーム(共同生活援助)・就労継続支援A型/B型・就労移行支援・生活介護・居宅介護・重度訪問介護など障害福祉・障害児の全類型に対応し、千葉県指定と千葉市/船橋市/柏市の市指定どちらの窓口も日常的に扱っています(オンラインで全国対応)。開業後の変更届・体制届・処遇改善加算の届出、運営指導への備えまで伴走します。

前職では従業員約800名規模の3社合併にともなう人事制度統合を主導し、正社員・パート等あわせて約800名の給与計算と社会保険実務を運用。処遇改善加算のキャリアパス要件は、突き詰めれば賃金表と等級制度の設計そのもの——加算の届出だけでなく、その先の賃金設計まで踏み込めることが強みです。国家資格キャリアコンサルタントとして、サビ管・児発管など資格者の採用と定着も支援しています。

保有資格:行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/財務コンサルタント(ASJ)/2級FP技能士(AFP)/人事総務検定2級ほか計11種。制度改正のたびに一次資料を確認しながら、note・LinkedIn・Instagram・Threadsで介護・障害福祉の実務情報をほぼ毎日発信しています。

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