— 30秒でわかる結論 —
Q. 職員が資格を取ったのですが、加算には関係ありますか?
関係する場合が多いです。有資格者の割合や配置を要件とする加算は、職員の資格取得でその日から要件を満たすことがあります。研修の修了、非常勤から常勤への切替えも同様です。ところが人事の情報が請求担当まで届いていないために、要件を満たしたことに誰も気づかず、届け出ていない事業所が非常に多い。加算は届け出た月からしか算定できず、遡って取り直せないため、気づくのが遅れた分はそのまま取りこぼしになります。おすすめしているのは、自事業所で算定し得る加算の要件を1枚にまとめ、人事の出来事が決まった日にその表を見る運用です。注意点は、加算によって常勤換算で数えるものと常勤の人数で数えるものがあること。福祉専門職員配置等加算のように常勤の頭数で割る加算では、常勤への切替えが分母と分子の両方を動かします。
こんな方に読んでいただきたい記事です
- 職員の資格や研修修了状況を、請求担当が把握していない事業所
- 加算の届出を「思い出したとき」に出している方
- 処遇改善のキャリアパスと加算要件を連動させたい方
加算の取りこぼしは、事務の問題ではなく「人事と請求がつながっていない」問題です
加算の棚卸しをお手伝いしていて、いちばん多く出てくるのが「職員が資格を取っていたのに、誰も加算に結びつけていなかった」という場面です。責められる話ではありません。人事の出来事と請求の要件が、組織の中で別々に管理されているのが普通だからです。
企業の人事を15年やってきた立場から見ると、障害福祉事業所の加算は人事の異動情報がそのまま売上に変わるという、他の業界にはない構造を持っています。職員が資格を取る、研修を修了する、常勤に切り替わる——このひとつひとつが、加算の要件を満たしたり外れたりする出来事です。ところが、それを請求担当まで届ける仕組みを持っている事業所はまだ少数です。
人事の出来事と、加算・減算の対応表
| 人事で起きること | 加算・減算との関係 | 確認すること |
|---|---|---|
| 職員が資格を取得した(社会福祉士・介護福祉士・保育士など) | 有資格者の割合や配置を要件とする加算に直結 | 割合の計算方法(常勤換算か常勤の人数か)と、届出の要否 |
| 研修を修了した(強度行動障害支援者養成研修、喀痰吸引等研修など) | 研修修了者の配置を要件とする加算に直結 | 修了証の保管と、配置する事業所・時間帯 |
| 非常勤から常勤に切り替わった | 「常勤の人数」で割る加算の分母・分子が動く | 常勤の定義(就業規則上の所定労働時間)との整合 |
| 職員が退職した | 人員基準の充足、加算要件の喪失、体制の変更届 | 翌月末までに補充できるか。減算の猶予との関係 |
| 管理者・サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者が交代した | 変更届(10日以内)と、体制届の見直し | 後任の要件充足を事前に確認 |
| 職員の勤務時間・シフトを変えた | 常勤換算の人数が動き、人員配置体制加算の区分が変わることがある | 月ごとの常勤換算の再計算 |
とくに気をつけていただきたいのは3点目の「常勤の人数」です。加算によって、常勤換算で数えるものと、常勤の頭数で数えるものがあります。たとえば福祉専門職員配置等加算は常勤換算ではなく常勤の人数で割ります。非常勤から常勤への切替えは、この種の加算では分母と分子の両方を動かします。
「加算要件チェック表」を人事の稟議に貼る
仕組みは複雑にしないほうが続きます。おすすめしているのは、自事業所の類型で算定し得る加算の要件を1枚にまとめ、人事の出来事が起きたときにその表を見るという運用です。
| タイミング | やること | 担当 |
|---|---|---|
| 採用・資格取得・研修修了・退職・勤務形態変更が決まった日 | 「加算要件チェック表」に該当欄があるか確認する | 人事担当(管理者) |
| 確認の結果、加算要件に影響があるとき | 請求担当に共有し、体制等状況一覧表の変更が必要かを判定する | 人事担当→請求担当 |
| 届出が必要なとき | 指定権者の締切(例:毎月15日必着)から逆算して提出する | 請求担当 |
| 毎月の請求前 | 当月の常勤換算・有資格者割合を再計算し、届出内容と一致しているか確認する | 請求担当 |
| 年1回 | 在籍職員全員の資格・研修修了状況を棚卸しし、届け出ていない加算がないか点検する | 管理者 |
ポイントは「決まった日」に動くことです。加算は届け出た月からしか算定できず、遡って取り直せません。資格取得の日から届出までの空白が、そのまま取りこぼしになります。逆に退職の場合は、人員欠如減算に翌月末までの猶予があるため、決まった日に動けば減算を免れる余地があります。
人事側で先に整えておくと楽になるもの
- 資格・研修の台帳——職員ごとに、資格の種類・取得日・修了証の所在を一覧化する。加算の届出には修了証の写しが要る場合がある
- 常勤の定義の明文化——就業規則の所定労働時間と、指定基準上の常勤の考え方を突き合わせておく。ここがずれていると常勤換算の計算がずれる
- 研修の年間計画——加算要件になる研修(強度行動障害支援者養成研修など)は受講枠が限られる。採用計画と一緒に組む
- 処遇改善加算との連動——資格取得や研修修了をキャリアパス要件の昇給ルールに組み込むと、加算の要件充足と職員の定着が同じ動きになる。令和8年6月からは配分の対象が障害福祉従事者に広がり、上乗せ区分も新設されている(令和8年度の処遇改善加算の改正点)
まず、いまの職員名簿と体制届を突き合わせてみてください
この記事の運用を始める前に、一度だけやっていただきたいことがあります。在籍職員の資格・研修修了状況の一覧と、いま出している体制等状況一覧表の控えを並べることです。要件を満たしているのに届け出ていない加算は、この2枚を並べるだけで大半が見えます。
当事務所では60分の無料相談をお受けしています。その時間内で、加算・減算の取りこぼし診断、運営指導の事前チェック、届出状況の棚卸しの3つの無料診断ができます。診断だけで終わっても構いません。顧問契約は不要で、開業を他所で行った事業所の途中からのご依頼も歓迎です。オンラインで全国対応しています。ご相談は運営中の介護・障害福祉事業所さまへのページ、またはお問い合わせフォームからどうぞ。
職員名簿(資格と勤務形態がわかるもの)と体制等状況一覧表の控えをお手元にご用意いただけると、60分でかなりのところまで見えます。
参考にした一次資料
- 障害者総合支援法・児童福祉法にもとづく各サービスの報酬告示および留意事項通知(加算の算定要件・常勤換算の考え方)
- 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」(処遇改善加算の対象拡大・上乗せ区分。2026年9月11日確認)
- 当事務所の障害福祉事業所向け相談実務(加算の取りこぼし診断・企業人事での異動管理の経験)
※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・要領および指定権者の案内をご確認ください。
📍 千葉県ローカルメモ|千葉県内の事業所さまへ——届出の締切から逆算する
千葉県の障害児通所支援では、加算の算定に関する体制等状況一覧表は毎月15日必着で翌月1日から適用、16日以降は翌々月1日からです(2026年9月11日に県ページで確認)。資格取得や研修修了が月の前半に分かれば、その月の15日までに届け出て翌月から算定できます。後半に分かった場合は翌々月からになるので、決まった日に動くことが1か月分の差になります。障害福祉サービス側や市が指定権者の場合は運用が異なります。
※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。
💬 目加多のひとこと
企業の人事にいたころ、異動の辞令が出ると、給与・社会保険・システム権限が一斉に動く仕組みがありました。障害福祉の事業所で同じ景色を見たとき、辞令の先に「加算」が入っていないことに気づきました。資格を取った、研修を修了した、常勤になった。それは職員の成長であると同時に、制度が値段を付けている出来事です。人事の動きを加算につなぐ仕組みは、事務の効率化ではなく、職員の成長をきちんと収入に変える仕組みだと思っています。

執筆・監修
目加多 龍めかた りょう
行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)
行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/2級FP技能士(AFP)。ブリヂストン系列企業とNEC系列企業で人事・労務の現場15年を経て2026年に独立。個人向けキャリア相談はココナラで約70件・全件★5.0(プラチナランク・2026年7月時点)。障害福祉・障害児支援の指定申請を軸に、資金調達から人材の定着まで、中小企業の「手続き」「資金」「人材」を一体で支援しています。
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