— 30秒でわかる結論 —

Q. 障害福祉事業所の収入を増やすには、稼働率を上げるほかに何がありますか?

単価を上げること、つまり算定できる加算を取り切ることです。稼働率には天井があります。定員10名の事業所からは11名分の報酬は生まれず、訪問系なら支給決定量とヘルパーの稼働時間が、相談支援なら相談支援専門員が担当できる件数が上限になります。一方、単価に天井はありません。同じ利用者・同じ職員・同じ支援でも、加算を取り切っているかで入る金額は変わり、しかも加算は積み上がります。単価は4つの層でできています。①基本報酬②体制で取る加算③個別支援に紐づく加算④処遇改善加算。最優先は②です。職員の資格・配置・研修修了ですでに要件を満たしている場合が多く、届け出るだけで翌月から単価が上がるからです。ただし加算は届け出た月からしか算定できず、遡って取り直せません。就労移行支援・就労継続支援A型・B型は、加算だけでなく基本報酬そのものが実績(就職定着・スコア・平均工賃)で動く点も押さえてください。

こんな方に読んでいただきたい記事です

  • 定員がほぼ埋まっていて、次の打ち手が見えない事業所さま
  • 加算の名前は聞くが、自分の類型で何が取れるか把握できていない方
  • 職員の資格取得や研修修了が、請求につながっているか不安な方

📗 関連の深掘り——取りこぼしの最大要因「人事の動きが請求につながっていない」を、加算要件チェック表と決まった日に動く運用で解消する方法はこちらの記事で扱っています。

稼働率には天井がありますが、単価には天井がありません

収入を増やそうとするとき、多くの事業所がまず稼働率を見ます。正しい着眼点です。ただ、稼働率にははっきりした天井があります。

定員10名の事業所は、どれだけ努力しても11名分の報酬は生まれません。訪問系なら、利用者の支給決定量とヘルパーの稼働時間を超えることはできません。相談支援なら、相談支援専門員1人が担当できる件数には限りがあります。稼働率100%に近づくほど、次の一手がなくなっていく——これが、収入を稼働率だけで考えたときに必ずぶつかる壁です。

もうひとつのレバーが単価です。こちらには天井がありません。同じ利用者、同じ職員、同じ1日の支援でも、算定できる加算を取り切っているかどうかで、入ってくる金額は変わります。しかも加算は積み上がります。1つひとつは小さくても、通年で積めば人件費1人分に届くことも珍しくありません。

この記事では、まず自分の類型の「量の天井」と「単価の余地」を整理し、加算がどういう構造で積み上がるのかまでをお伝えします。「では、うちの事業所で具体的にどの加算が取れるのか」は、事業所ごとに答えが違いますので、最後にその調べ方をご案内します。

まず、自分の類型の「量の天井」と「単価の余地」を知る

サービス類型「量」の天井を決めるもの「単価」を動かす主な余地
訪問系
居宅介護(ホームヘルプ)利用者の支給決定量と、ヘルパーの稼働時間時間帯、従業者の資格構成、事業所としての体制評価
重度訪問介護長時間の支給決定を受けた利用者の数重度者への対応体制、医療的ケアへの対応
同行援護対象となる利用者の支給量従業者の要件、盲ろう者等への対応体制
行動援護対象者が限られるため、契約者数従業者の研修修了状況、行動障害への対応体制
重度障害者等包括支援対象者が極めて限定的包括的な提供体制そのもの
日中活動系
生活介護利用定員と開所日数障害支援区分の構成、医療的ケア、人員配置体制、常勤看護職員等の配置
自立訓練(機能訓練・生活訓練)利用定員と標準利用期間専門職の配置、在宅・訪問での支援体制
就労移行支援利用定員と標準利用期間就職・定着の実績で基本報酬が変わるほか、支援体制の加算
就労継続支援A型利用定員スコア方式の評価点で基本報酬が変わるほか、支援体制の加算
就労継続支援B型利用定員平均工賃月額で基本報酬が変わるほか、支援体制の加算
就労定着支援支援対象となる就労者の数定着率、支援体制
療養介護利用定員医療的ケアと看護体制
短期入所(ショートステイ)空床・専用居室の数医療的ケア、緊急受入れの体制
居住系
共同生活援助(グループホーム)入居定員障害支援区分の構成、夜間支援体制、医療連携、地域移行の支援
施設入所支援入所定員夜間の支援体制、重度者への対応
障害児支援
児童発達支援利用定員と開所日数専門職の配置、個別の専門的支援、家族支援、送迎、延長
放課後等デイサービス利用定員と開所日数同上。あわせて支援プログラムの公表など、未実施だと減算になるもの
保育所等訪問支援訪問できる件数(職員の稼働)訪問先での支援体制、関係機関との連携
居宅訪問型児童発達支援訪問できる件数(職員の稼働)重症心身障害・医療的ケアへの対応体制
相談支援
計画相談支援契約件数と相談支援専門員の担当可能数機能強化の体制、モニタリングの頻度、令和8年6月からは処遇改善加算も対象
障害児相談支援同上同上
一般相談支援(地域移行支援・地域定着支援)契約件数体制整備、関係機関との連携

※このほか、自立生活援助、宿泊型自立訓練、就労選択支援(令和7年10月創設)、障害児入所支援なども指定の対象です。類型ごとの根拠法・人員・指定権者は全類型一覧にまとめています。

表を見ていただくとわかるのは、「量」の天井は類型ごとに固定されているのに、「単価」の余地はどの類型にもあるということです。定員が埋まっている事業所ほど、残されたレバーは単価しかありません。

就労系の3類型(就労移行支援・就労継続支援A型・就労継続支援B型)はさらに特殊で、加算だけでなく基本報酬そのものが実績で動きます。就職・定着の実績、スコア方式の評価点、平均工賃月額。ここは加算とは別軸の単価要因で、区分がひとつ変わるだけで年間の収入が大きく変わります。

単価は4つの層でできています

加算を「たくさんある項目」として眺めると手が付きません。構造で見ると、単価は4つの層に分かれます。

中身取りにいく順番
第1層 基本報酬定員規模・時間区分・障害支援区分などで決まる土台。就労系のように実績が基本報酬の区分を動かす類型もある見直しの機会は限られるが、開設時の設定のままになっていないかは要確認
第2層 体制で取る加算職員の資格・配置・研修修了・設備・体制で算定できるもの。要件を満たしていれば、届け出るだけで単価が上がる最優先。すでに満たしているのに届け出ていない例が非常に多い
第3層 個別支援に紐づく加算対象となる利用者・児童の状態像や、実際に行った支援に応じて算定するもの。アセスメントと個別支援計画、そして記録が根拠になる2番目。計画と記録の書き方を変えれば、日々の支援はそのままでも算定できる場合がある
第4層 処遇改善加算報酬総額に加算率を掛けて算定。令和8年6月から対象が障害福祉従事者に広がり、上乗せ区分も新設された区分を上げられないか、毎年見直す

着手すべきは第2層(体制で取る加算)です。理由は単純で、すでに要件を満たしている可能性が高く、届け出るだけで翌月から単価が上がるからです。追加の投資も、新しい取り組みも要りません。

当サイトでは、算定件数が多く誤解も多い加算を個別に解説しています。ご自身の類型に関係するものからご覧ください。

なぜ、取りこぼしが起きるのか

取りこぼす理由起きていること
①要件を満たしたことに気づいていない職員が資格を取った、研修を修了した、常勤が増えた——人事の動きが加算の要件に直結しているのに、届出につながっていない
②届出をしていない要件は満たし、実態も伴っているのに、体制等状況一覧表を出していない。加算は届け出た月からしか算定できず、遡れません
③記録が要件を満たしていない支援そのものは行っているが、算定要件が求める記録の形になっていない。運営指導で否認されるのはここ
④個別支援計画に書かれていない個別支援計画に位置づけられていることが要件の加算がある。支援はしているのに計画に記載がない
⑤そもそも存在を知らない加算の数は多く、改定のたびに新設・統合される。自分の類型で算定可能な加算の全体像を持っていない

とくに①は、事務の問題ではなく人事と請求がつながっていないという組織の問題です。職員が資格を取ったこと、研修を修了したこと、常勤に切り替わったこと——これらはすべて加算の要件に直結しますが、人事の情報が請求担当まで届いていない事業所は本当に多いです。私が企業の人事を15年やってきて、いちばん強く感じるのはここです。

介護・障害福祉の事業者の方へ
放課後等デイサービス・児童発達支援を運営されている方は、単価だけでなく稼働率・固定費・DXを含めた4つのレバーで全体像を押さえておくと、次の報酬改定に備えられます。収支差率9.1%の意味と、4つのレバーの着手順で整理しています。

取りこぼしの裏側には、減算があります

単価の話には、必ず反対側があります。取れるはずの加算を取っていない損失と、取ってはいけない状態で算定している損失です。後者のほうが深刻になります。

体制等状況一覧表で「未実施なし」と届け出ていても、虐待防止委員会や研修の実態が伴っていなければ、運営指導の場で減算として整理されます。減算率は虐待防止措置未実施で1%、身体拘束廃止未実施で施設・居住系10%/訪問・通所系1%、情報公表未報告で施設・居住系10%/その他5%です(厚生労働省資料で2026年9月10日確認)。

加算の棚卸しと、届出と実態のズレの点検は、同じ作業の表と裏です。どうせ手を付けるなら、一度に済ませるのが効率的です。

「で、うちはどの加算が取れるのか」——ここからは個別の話になります

ここまでは、どの事業所にも当てはまる構造の話でした。ただ、実際にどの加算が算定できるかは、事業所ごとにまったく違います

  • サービス類型と定員規模
  • いま在籍している職員の資格・研修修了状況・常勤非常勤の別
  • 利用者・児童の障害支援区分や状態像の構成
  • いま出している体制等状況一覧表の内容
  • 個別支援計画と支援記録の書き方

この5つを突き合わせないと、「取れるのに取っていない加算」は見えてきません。逆に言えば、突き合わせればだいたい何かしら出てきます。これまでお手伝いした事業所で、1つも出てこなかったことはありません。

当事務所では60分の無料相談をお受けしています。その時間内で、次の3つの無料診断ができます。

  • 加算・減算の取りこぼし診断——いま算定できるのに取れていない加算がないか
  • 運営指導の事前チェック——届出と実態にズレがないか
  • 届出状況の棚卸し——変更届・体制届の出し忘れがないか

職員名簿(資格と勤務形態がわかるもの)と、いま出している体制等状況一覧表の控えをお手元にご用意いただけると、その場でかなりのところまで見えます。診断だけで終わっても構いません。顧問契約は不要で、スポットのご依頼も、開業を他所で行った事業所の途中からのご依頼も歓迎しています。オンラインで全国対応です。

ご相談は運営中の介護・障害福祉事業所さまへのページから、またはお問い合わせフォームでお受けしています。

要確認:加算の算定要件・単位数・対象サービスは、告示および厚生労働省の留意事項通知・Q&Aで定められており、改定のたびに変わります。算定の可否は最終的に指定権者の判断によります。本記事の表は類型ごとの考え方を整理したもので、個別の加算の算定可否を示すものではありません。必ず所管の自治体および最新の告示でご確認ください。賃金制度・労務管理の運用は社会保険労務士、税務は税理士の業務であり、当事務所は行いません。本記事は2026年9月10日時点の整理です。

参考にした一次資料

※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・要領および指定権者の案内をご確認ください。

📍 千葉県ローカルメモ|千葉県内の事業所さまへ——加算の棚卸しは、体制届の締切に合わせて

加算を新しく算定するには、体制等状況一覧表の届出が要ります。千葉県の障害児通所支援(放課後等デイサービス・児童発達支援)は毎月15日必着で翌月1日から適用、16日以降の提出は翌々月1日からの適用です(2026年9月10日に県ページで確認)。障害福祉サービス側や、千葉市・船橋市・柏市など市が指定権者となる場合は運用が異なりますので、所管の窓口でご確認ください。棚卸しをするなら、締切の2週間前から逆算して動くと、その月のうちに届出まで到達できます。松戸・市川・流山を中心に、オンラインでも対応しています。

※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。

💬 目加多のひとこと

加算の相談をお受けしていて、いちばん多く出てくる言葉が「知りませんでした」です。責められることではまったくありません。加算の数は多く、改定のたびに増えたり統合されたりします。現場は日々の支援で手一杯です。ただ、私が申し上げたいのは、加算は制度が「この支援をしてくれてありがとう」と言っている場所だということです。すでにやっている支援に、制度が値段を付けている。それを受け取っていないだけ、という事業所が本当に多い。もらい損ねているのは、事業所ではなく、そこで働く職員の給与の原資です。

行政書士 目加多龍

執筆・監修

目加多 龍めかた りょう

行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)

行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/2級FP技能士(AFP)。ブリヂストン系列企業とNEC系列企業で人事・労務の現場15年を経て2026年に独立。個人向けキャリア相談はココナラで約70件・全件★5.0(プラチナランク・2026年7月時点)。障害福祉・障害児支援の指定申請を軸に、資金調達から人材の定着まで、中小企業の「手続き」「資金」「人材」を一体で支援しています。

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