— 30秒でわかる結論 —

Q. 就労継続支援B型の開業には結局いくら必要ですか?

賃貸テナント・定員20名の例で、初期費用と運転資金をあわせて概算470〜870万円——ただし幅の主因は「何の仕事(生産活動)をするか」です。内訳は、法人設立(10〜25万円)、テナント初期費用(60〜90万円)、作業室等の改修(50〜200万円)、生産活動の設備・道具(50〜150万円)、そして運転資金3か月分(300〜400万円)。報酬の入金はサービス提供から約2か月後のため、運転資金を削ると開業直後に詰みます。なおA型はこれに加えて、利用者への賃金支払いが初月から始まる分の立ち上がり資金が必要——「B型の費用+賃金原資」と考えてください。金額より大切なのは、この型に自分の前提を入れて計算し直すことです。

グループホーム編(GHの開業費用)に続く、費用試算モデルの就労支援編です。「いくらかかるか」は前提で変わるので、本記事も前提を明示した試算の「型」をお渡しします。

⚠️ 本記事の金額はすべて概算・一例です(2026年7月時点)。実際の計画では必ず個別に見積もり・試算してください。

2026年9月15日 追記:本記事の試算は運転資金を3か月分で置いています。当事務所の現在の標準は、給付費の入金ラグ(約2か月)と稼働率の立ち上がり(3〜4か月)を合わせた運転資金6か月分です。本記事の合計(概算470〜870万円)は下限として読み、6か月分で見た必要資金(約800〜1,300万円)と他類型との比較は4類型の開業資金比較をご覧ください。

試算の前提(この条件で計算します)

・賃貸テナント(賃料月15万円と仮定)
・就労継続支援B型・定員20名
・株式会社を新設
・生産活動は軽作業+自社商品の小規模製造を想定

①法人設立の法定費用——概算10〜25万円

指定は法人が受けるため、法人設立が出発点です。合同会社なら登録免許税6万円〜で概算10万円前後、株式会社なら定款認証・登録免許税15万円〜で概算25万円前後会社設立の法定費用)。

②テナントの契約初期費用——概算60〜90万円

敷金・礼金・仲介手数料・前家賃でおおむね賃料の4〜6か月分。賃料15万円の前提なら60〜90万円です。物件選びでは広さだけでなく、作業室・相談室・トイレ等の指定基準を満たせるかを契約前に確認してください(物件と設備基準)。

③作業室等の改修——概算50〜200万円

間仕切り・相談室の確保・トイレ・手洗い場など。テナントの現況次第で大きく変わります。居抜きに近い物件を選べるかどうかが圧縮の分かれ目です。

④生産活動の設備・道具——概算50〜150万円(最大の変動要因)

就労支援ならではの項目がこれです。軽作業中心なら作業台と道具で小さく始められますが、食品製造なら厨房設備+保健所の営業許可、印刷なら機材、EC販売なら撮影・梱包環境——何の仕事をするかで数十万〜数百万円単位で動きます。ここは「大きく構えない」が鉄則。受注が見えてから段階的に投資する方が、資金繰りにも支援の質にも効きます(工賃の育て方)。

⑤運転資金(3か月分)——概算300〜400万円

最重要項目です。報酬の入金はサービス提供月からおおむね2か月後。その間もサビ管・職業指導員・生活支援員の人件費(月80〜110万円規模)と賃料は出ていきます。加えて開業直後は利用者が定員まで埋まらないのが普通で、立ち上がりの持久力もここに含まれます。

就労支援で間違えやすいのが、利用者の工賃をこの運転資金に紛れ込ませること。工賃は生産活動収入から支払うのが原則で、職員給与とは財布が違います二階建ての収支構造)。運転資金の計算は「職員人件費+家賃+光熱・雑費」で組み、生産活動は生産活動で小さく回る設計にする——この分離が、後の会計管理(生産活動会計の区分)にもそのまま効きます。

合計——この前提なら「概算470〜870万円」

項目概算(この前提での一例)変動要因
①法人設立約10〜25万円株式会社か合同会社か
②テナント初期費用約60〜90万円賃料水準×契約条件(4〜6か月分)
③作業室等の改修約50〜200万円テナントの現況(居抜きか否か)
④生産活動の設備約50〜150万円何の仕事をするか(最大の変動要因)
⑤運転資金(3か月)約300〜400万円職員体制/立ち上がりの利用者数
合計の目安概算470〜870万円生産活動の設備投資と改修で振れる

※すべて概算・一例(2026年7月時点の当事務所の整理)。指定申請そのものの手数料は徴収しない自治体が多い一方、取り扱いが分かれるため申請先でご確認を。

A型は「+賃金原資の立ち上がり資金」が要る

A型を選ぶ場合、上の試算にもう一段の資金が加わります。雇用契約を結ぶため、開業初月から利用者へ最低賃金以上の支払いが始まる——一方で、その原資となる生産活動の売上は受注・納品・入金のサイクルを経て後から入ります。この時間差を埋める立ち上がり資金を持たずにA型を始めると、賃金支払いに追われて支援も経営も崩れる——最も多い失敗パターンです(A型の三重構造)。生産活動収支が赤字続きの場合は経営改善計画の枠組みで改善を求められる点も、B型との大きな違いです。

開業支援パッケージ・FC加盟という費用について

就労支援の分野では、フランチャイズ加盟や開業支援パッケージに数百万円規模の費用がかかる例も見られます。誤解のないように申し上げると、これらは開業の必須費用ではありません。指定申請・収支計画・人材確保は個別に専門家へ依頼でき、生産活動の仕事づくりこそ地域の実情に合わせて組むべき部分です。パッケージを検討する場合も、「何にいくら払い、自分に何が残るのか」を上の試算表と並べて比較することをおすすめします。

費用を抑える「順番」

①仕事の当てを先に固める(設備投資の的が絞れる)→②設備は受注に合わせて段階投資③改修が軽い物件を選ぶ④運転資金は削らず、創業融資で厚くする。日本政策金融公庫の創業融資は⑤運転資金にこそ使う資金です(創業融資の窓口ガイド)。自治体の補助制度は有無・条件が地域と年度で異なるため、開業予定地での最新確認を。

この「型」で、あなたの数字を

就労支援の費用の答えは「いくら」ではなく、生産活動の構想しだいで①〜⑤が動く関数です。当事務所は指定申請に加えて、財務コンサルタント・2級FP技能士として試算と創業融資を、キャリアコンサルタントとして職員採用を一体でお手伝いします。仕事の構想段階からどうぞ(就労支援開業の完全ガイドお金と人の総合支援)。

📍 千葉県ローカルメモ|生産活動の内容が費用と許認可を決める

千葉県内の就労継続支援は、千葉市・船橋市・柏市に事業所を置く場合のみ各市、それ以外(我孫子市を含む)は県が窓口です。生産活動で食品を扱う場合は保健所の営業許可が別途必要になり、設備投資額も変わります。市町村意見申出制度により指定日の4か月前から手続きが始まる点も、資金計画の時間軸に織り込んでください。

※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。

💬 目加多のひとこと

費用相談で「設備を先に揃えたい」という方には、いつも「仕事が先、設備は後」とお伝えしています。受注のない設備は毎月の固定費になるだけ。仕事の当てづくりから伴走するのが、遠回りに見えて一番の節約です。

行政書士 目加多龍

執筆・監修

目加多 龍めかた りょう

行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)

障害福祉・障害児支援の指定申請を専門とする行政書士。放課後等デイサービス・児童発達支援・グループホーム(共同生活援助)・就労継続支援A型/B型・就労移行支援・生活介護・居宅介護・重度訪問介護など障害福祉・障害児の全類型に対応し、千葉県指定と千葉市/船橋市/柏市の市指定どちらの窓口も日常的に扱っています(オンラインで全国対応)。開業後の変更届・体制届・処遇改善加算の届出、運営指導への備えまで伴走します。

前職では従業員約800名規模の3社合併にともなう人事制度統合を主導し、正社員・パート等あわせて約800名の給与計算と社会保険実務を運用。処遇改善加算のキャリアパス要件は、突き詰めれば賃金表と等級制度の設計そのもの——加算の届出だけでなく、その先の賃金設計まで踏み込めることが強みです。国家資格キャリアコンサルタントとして、サビ管・児発管など資格者の採用と定着も支援しています。

保有資格:行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/財務コンサルタント(ASJ)/2級FP技能士(AFP)/人事総務検定2級ほか計11種。制度改正のたびに一次資料を確認しながら、note・LinkedIn・Instagram・Threadsで介護・障害福祉の実務情報をほぼ毎日発信しています。

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