— 30秒でわかる結論 —

Q. 介護・障害福祉の事業を開業します。創業融資はいくらくらい借りればいいですか?

「設備資金+運転資金」で考え、この業界は特に運転資金を厚めに見るのが鉄則です。理由は3つ——①給付費の入金はサービス提供月の約2か月後(開業してもすぐ現金が入らない)②利用者は紹介経由で段階的にしか増えない③指定基準を満たす人員は利用者がゼロでも配置が必要で、人件費が先に出ていく。目安として、開業費用の概算は訪問介護で300〜500万円、グループホームで370〜570万円+改修、放課後等デイサービスで700〜1,200万円、生活介護で750〜1,500万円程度(いずれも2026年7月時点の概算・規模や物件で大きく変動)。ここに立ち上がり期の運転資金として人件費を中心に数か月分を上乗せした額が、実際に必要な調達額です。自己資金は総額の3割程度が一つの目安。そして最も多い失敗は、物件契約を先に進めて融資が間に合わないパターン——指定申請と融資申込は同時進行で設計してください。

障害福祉・障害児支援の開業相談で、資金の話は必ず出ます。そして多くの方が、飲食店や小売店と同じ感覚で資金計画を立てて、つまずきます。この業界の資金は、性質が違うからです。この記事は、その違いから設計まで通しでまとめた完全ガイドです(2026年7月時点の一般的整理。金額はすべて前提付きの概算モデルで、実際の計画は個別に試算します)。

この記事の対象——介護・障害福祉の全サービス類型に共通です

放課後等デイサービス児童発達支援グループホーム(共同生活援助)就労継続支援A型・就労継続支援B型・就労移行支援・就労定着支援/生活介護/同行援護/行動援護/短期入所/自立訓練/保育所等訪問支援/相談支援(その他類型の依頼ガイド)——いずれにも対応しています(指定申請サポート トップ)。

💬 実際に伺った、2つの声(要旨)

自力で就労継続支援B型を立ち上げた運営者の方——「立ち上げの壁は人と物件、そして現金。いちばんの難所は融資の事業計画づくりと金融機関対応だった。建物や消防が絡む複雑な指定申請の書類だけでも専門家に頼めていれば、その時間を利用者の確保に注げたはず」。

開業を準備されていた別の方——「物件の契約まで進んだのに、融資が実行されず、開業そのものを断念した」。

指定が下りても、お金が間に合わなければ開業はできません。当事務所が財務コンサルタントの資格を持つ行政書士として、入金2か月遅れを織り込んだ運転資金設計・公庫等への事業計画・融資実行と物件契約の順番調整を、申請と同じ工程表で組むのはこのためです。

※いずれも実際に伺った声を、ご本人が特定されない形で要旨として掲載しています。

1. 他業種と何が違うのか——3つの構造

特徴資金への影響
給付費の入金は約2か月後4月提供分が入るのは6月ごろ。開業から2か月は収入ゼロで家賃と給与が出ていく(業種別の入金比較
稼働率は段階的利用者はケアマネ・相談支援専門員の紹介を経て増える。初月満員はまずない
人件費が先に出る指定基準の人員は利用者ゼロでも配置が必要。最大の資金圧迫要因

この3つが重なると何が起きるか——開業から数か月、収入は細く人件費は満額という谷ができます。飲食店なら初日から現金が入りますが、福祉はそうならない。この谷を埋めるお金を借りるのが、介護・障害福祉の創業融資の本質です。

2. いくら必要か——サービス類型別の概算モデル

開業費用(設備・初期費用)の概算目安は次のとおりです。いずれも2026年7月時点の概算モデルで、物件の状態・規模・地域により大きく変動します(各リンク先で前提条件を明示しています)。

サービス開業費用の概算変動要因
障害者グループホーム約370〜570万円+改修費消防設備・住居の改修
就労継続支援B型約470〜870万円生産活動の設備投資
放課後等デイサービス約700〜1,200万円送迎車両・内装改修
デイサービス約700〜1,300万円浴室改修・リフト車
生活介護約750〜1,500万円重度対応の設備

※上表はいずれも2026年7月時点の概算モデル(前提条件は各リンク先の記事に明示)。物件の状態・定員・地域・改修の程度で大きく変動するため、実際の計画は個別に試算します。

ここに運転資金を上乗せします。考え方は「収入が細い立ち上がり期に、毎月出ていく固定費(人件費+家賃+車両費)を何か月分持つか」。給付費の2か月ラグに加え、稼働が計画水準に届くまでの期間を見込むため、数か月分を確保する設計が現実的です。ここを削った計画は、開業3〜4か月目に必ず苦しくなります。

3. 自己資金はいくら要るか

創業融資では自己資金の額とその貯まり方が見られます。目安は総額の3割程度——ただしこれは制度上の絶対要件ではなく、実務上の一つの基準です。福祉分野で特に大切なのは、自己資金が「使い切られる前提」になっていないか——設備に全額を投じて手元をゼロにする計画は、上記の谷を越えられません。詳しくは自己資金の考え方と見せ金がバレる理由をご覧ください。

4. 資金使途の分け方——設備と運転を混ぜない

融資は設備資金と運転資金を区分して申し込むのが原則です(区分を間違えると減額される理由)。福祉での典型的な内訳——設備資金=物件の改修(消防設備・浴室・バリアフリー)、送迎車両、什器備品、初期の広告費。運転資金=人件費(最大項目)、家賃、水道光熱費、車両維持費、給付費入金までのつなぎ。「人件費を設備資金に紛れ込ませる」ような計画書は、審査で必ず崩れます——正直に区分し、運転資金の必要性を上記3構造で説明するほうが、はるかに通ります。

5. 審査で見られる「福祉特有の3点」

見られる点計画書での答え方
指定が取れる見込み物件が基準に適合する見込み・事前相談の状況・申請スケジュールを明示(指定申請の流れ
人員確保の目処管理者・サビ管/児発管など要件職の確保状況と採用計画(採用の仕組み
利用者獲得の根拠紹介経路の設計(ケアマネ・相談支援)と商圏の需要データ

この3点は、他業種の「売れる根拠」に相当します。福祉は許認可事業なので「指定が取れなければ売上ゼロ」——だから審査側は①を強く見ます。逆に言えば、指定申請の段取りが具体的に語れる事業者は、それだけで計画の信頼度が上がるのです。行政書士と財務の両面を一つの窓口で扱う意味は、まさにここにあります。

6. 最重要——指定申請と融資申込の「同時進行」

実務で最も多い失敗が、物件契約だけ先に進み、融資が間に合わないパターンです(放デイでの実例)。指定申請には申請期限と審査期間があり(千葉県のスケジュール)、融資にも申込から入金までの期間がある——両者を一本の工程表に載せて逆算するのが正解です。順番の原則は、①物件の目星+指定要件の適合確認(契約前)→②事業計画書の作成(融資と指定で共通の土台になります)→③融資申込と指定の事前相談を並行→④契約・改修・人員確保→⑤指定申請→⑥開業。資金の目処が立つ前に不可逆な契約をしない——この一点だけでも、開業の事故は大きく減ります。

7. どこから借りるか

創業期の入口は日本政策金融公庫と自治体の制度融資の二本柱です。福祉分野は事業の公益性が理解されやすい一方、「制度に依存した事業」という見方をされることもあるため、報酬改定リスクへの備え(複数サービスの展開構想・稼働率の保守的な見積り)を計画に含めると説得力が増します。開業後は13週資金繰り表月次試算表で、給付費入金のリズムを管理してください。

8. 当事務所の支援——指定と資金を一つの窓口で

障害福祉・障害児支援の開業は、指定申請(行政書士)・資金調達(財務)・人員確保(キャリアコンサルタント)が同時に走るプロジェクトです。当事務所は3つを一体で設計します——物件の適合確認から、収支計画と資金計画の作成、公庫・制度融資の申込支援、指定申請の代行、開業後の資金繰りと採用の伴走まで。松戸・柏・流山・船橋・市川など千葉県内および東京・埼玉・茨城、オンラインで全国対応です。初回60分のご相談は無料——物件を契約する前に、ぜひ一度お声がけください(お金と人の総合支援開業準備の全体像)。

📍 千葉県ローカルメモ|千葉県の指定スケジュールと融資を一枚の工程表に

千葉県内の指定権者は、千葉市・船橋市・柏市が各市、それ以外の市町村は県です(我孫子市など事務移譲でサービス別に市が窓口となる例外あり)。指定の申請期限は指定希望月から逆算して定められているため、融資のスケジュールと合わせた工程表づくりを、物件を決める前の段階からご一緒します。

※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。

💬 目加多のひとこと

「良い支援がしたい」という想いで開業される方ほど、資金の話を後回しにされます。でも、資金が尽きた事業所は支援を続けられない。お金の設計は、理念を守るための技術です——そう思って、この分野の融資支援に取り組んでいます。

行政書士 目加多龍

執筆・監修

目加多 龍めかた りょう

行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)

障害福祉・障害児支援の指定申請を専門とする行政書士。放課後等デイサービス・児童発達支援・グループホーム(共同生活援助)・就労継続支援A型/B型・就労移行支援・生活介護・居宅介護・重度訪問介護など障害福祉・障害児の全類型に対応し、千葉県指定と千葉市/船橋市/柏市の市指定どちらの窓口も日常的に扱っています(オンラインで全国対応)。開業後の変更届・体制届・処遇改善加算の届出、運営指導への備えまで伴走します。

前職では従業員約800名規模の3社合併にともなう人事制度統合を主導し、正社員・パート等あわせて約800名の給与計算と社会保険実務を運用。処遇改善加算のキャリアパス要件は、突き詰めれば賃金表と等級制度の設計そのもの——加算の届出だけでなく、その先の賃金設計まで踏み込めることが強みです。国家資格キャリアコンサルタントとして、サビ管・児発管など資格者の採用と定着も支援しています。

保有資格:行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/財務コンサルタント(ASJ)/2級FP技能士(AFP)/人事総務検定2級ほか計11種。制度改正のたびに一次資料を確認しながら、note・LinkedIn・Instagram・Threadsで介護・障害福祉の実務情報をほぼ毎日発信しています。

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