— 30秒でわかる結論 —
Q. 障害福祉の事業所です。パートの応募は来るのに、社員がまったく採れません。どうすればいいですか?
パートと社員は「別の採用活動」だと捉え直すことが出発点です。パート希望者は近さと時間を検索型媒体で探すため反応が速い。一方、社員候補は「この法人にキャリアを預けていいか」を数週間かけて見比べます——パート向けの条件羅列型の求人をそのまま社員募集に使うと、物語が伝わらず応募が細ります。処方箋は4つ——①社員は媒体4本柱(ハローワーク・自社採用ページ・専門媒体・リファラル)で、有料媒体は求人票と応募対応の受け皿が整ってから投入 ②求人票を「店舗拡大=ポストが増える会社」という物語+育成の道筋で書き直す ③SNSを応募前の裏取り先として整える ④歩留まり7段をKPIで月次管理し、人が消える場所(多くは連絡スピードと内定後の空白)を特定して塞ぐ。
「パートは求人を出せば3日で応募が来るんです。でも社員はひと月半かけてほぼゼロ。ようやく採れた方は、初日に来ませんでした」——障害福祉の多店舗展開期の経営者から、本当によく伺うご相談です。この記事では、この問題を精神論ではなく採用の仕組みの設計として分解します(人事15年の実務整理)。
この記事の対象——障害福祉サービスの全類型に共通です
放課後等デイサービス/児童発達支援/グループホーム(共同生活援助)/就労継続支援A型・就労継続支援B型・就労移行支援・就労定着支援/生活介護/同行援護/行動援護/短期入所/自立訓練/保育所等訪問支援/相談支援(その他類型の依頼ガイド)——いずれにも対応しています。
前提——パートと社員は「別の採用活動」
パート希望者は「家の近くで、時間の合う仕事」を検索します。検索型求人媒体と相性がよく、条件が合えば応募までが速い。一方、社員候補は「この法人にキャリアを預けていいか」を数週間かけて見比べます——給与や休日だけでなく、教育体制、資格取得支援、数年後の自分の姿。パート向けに最適化された条件羅列型の求人で社員を募集すると、条件は伝わっても物語が伝わらない——応募が細り、採れてもミスマッチで消える構造です。
社員採用の媒体4本柱——「有料の蛇口」は受け皿の後
| 柱 | 特徴 | 位置づけ |
|---|---|---|
| ①ハローワーク | 無料。地元のミドル層・転職検討層に今も強い | 土台。求人票の質で差がつく |
| ②自社採用ページ | 応募前に必ず見られる「確認先」。Googleしごと検索対応で入口にもなる | ここが空だと他媒体の費用が漏れる |
| ③介護・福祉専門媒体 | 有料。「業界で働くと決めた人」に届くが競合との比較購買 | 受け皿(求人票・対応フロー)が整ってから投入 |
| ④リファラル(社員紹介) | 定着率が高い中期の本命 | 手当の設計より先に「紹介したくなる職場か」 |
順番がすべてです。有料媒体という蛇口をひねるのは、受け皿が整ってから——逆にすると、応募が歩留まりの穴から漏れ、費用だけが増えます。
SNSは「裏取り先」として設計する——若手に任せる時の3点セット
SNSの第一の役割は応募の入口ではなく「裏取り先」です。求人を見た候補者は、応募前に必ず法人名で検索します。更新の止まったアカウントは不安に、日常の見えるアカウントは安心に振れる——つまりSNSは全媒体の歩留まりを底上げする装置です。投稿は4類型(職場の日常/スタッフの声/支援の風景/採用告知)を軸に、若年層にはInstagramのリール、転職検討層にはXやYouTubeと使い分け、主戦場1つ+転載が現実解。若手担当者に任せる場合は、感性は本人に・枠組みは会社に——①投稿カレンダーの型②公開前チェックの2人体制③リンククリック数と「SNSを見ました」言及数という測り方の3点を渡せば、担当が代わっても運用が残ります。そして障害福祉の絶対条件が利用者プライバシーの防波堤——撮影同意は書面で範囲まで明確に、迷ったら写さない、公開前チェックリストの紙運用。攻めの発信は、守りの仕組みの上にしか築けません。
求人票——「条件の羅列」から「不安への先回り」へ
Before:「サービス管理責任者候補募集。月給○万円、週休2日、要普通免許」
After:「3年で3店舗を増やす計画の、立ち上げメンバーを探しています。入社後まずは既存店舗で3か月、先輩の隣で流れを覚えていただきます(いきなり一人にはしません)。資格取得の研修費は法人負担。新店舗の管理者候補への道筋も、面接で具体的にお話しします」
条件は同じでも、物語と育成の道筋が入ると読む人が変わります。店舗拡大は、求職者にとって「ポストが増える会社」という最強の口説き文句です(求人票の書き方・採用ペルソナ)。
歩留まり7段のKPI——「応募数」を追うのをやめる
見るべきは漏斗です——応募→当日連絡率→面接設定率→面接実施率→内定承諾率→入社率→90日在籍率。月次で記録すれば、人が消える場所が特定できます。応募の熱は48時間で冷めるため当日連絡の仕組み化を。「初日に来ない」の犯人の多くは内定から入社日までの無音の空白——入社日までに一本、接点を作ってください(面接の二部構成・90日の受け入れ設計)。採用の成否は応募単価ではなく「90日在籍した一人あたりの総コスト」で測る——これが定着まで含めた採用KPIです。
障害福祉の採用は「加算」と直結した経営計画
この業界の採用は、人員配置に関する加算の取得——売上とサービス品質——に直結します。誰を・いつまでに・どの資格要件で採るかは、指定基準と報酬体系から逆算する経営計画そのもの。新店舗の展開なら、指定スケジュールから逆算して求人開始日が決まります(サビ管・児発管など要件職の確保は想像より時間がかかります——欠員時の初動・児発管の要件と確保)。当事務所は、指定申請・加算の設計という行政書士の領域と、採用ペルソナ・求人票・SNS運用の枠組み・KPI月次レビューというキャリアコンサルタントの領域を一体で設計します——役員お一人の属人採用を、誰でも回せる仕組みへ。オンラインで全国対応しています(介護・障害福祉の人材確保支援・お金と人の総合支援)。
📍 千葉県ローカルメモ|指定スケジュールと採用を一枚の工程表に
千葉県内はもちろん、遠方の事業所からのご相談もオンラインで承っています。多店舗展開の計画がある法人は、次の店舗の指定スケジュール(市町村意見の申出時期を含む)と要件職の採用リードタイムを、同じ一枚の工程表に載せるところから始めましょう。
※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。
💬 目加多のひとこと
採用支援で私が最初に見るのは求人票でも媒体でもなく、面接で聞いた「何で当法人を知り、応募前に何を見ましたか」の回答記録です。なければ今日から聞いてください。この一問が、媒体費の使い方を全部変えます。

執筆・監修
目加多 龍めかた りょう
行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)
障害福祉・障害児支援の指定申請を専門とする行政書士。放課後等デイサービス・児童発達支援・グループホーム(共同生活援助)・就労継続支援A型/B型・就労移行支援・生活介護・居宅介護・重度訪問介護など障害福祉・障害児の全類型に対応し、千葉県指定と千葉市/船橋市/柏市の市指定どちらの窓口も日常的に扱っています(オンラインで全国対応)。開業後の変更届・体制届・処遇改善加算の届出、運営指導への備えまで伴走します。
前職では従業員約800名規模の3社合併にともなう人事制度統合を主導し、正社員・パート等あわせて約800名の給与計算と社会保険実務を運用。処遇改善加算のキャリアパス要件は、突き詰めれば賃金表と等級制度の設計そのもの——加算の届出だけでなく、その先の賃金設計まで踏み込めることが強みです。国家資格キャリアコンサルタントとして、サビ管・児発管など資格者の採用と定着も支援しています。
保有資格:行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/財務コンサルタント(ASJ)/2級FP技能士(AFP)/人事総務検定2級ほか計11種。制度改正のたびに一次資料を確認しながら、note・LinkedIn・Instagram・Threadsで介護・障害福祉の実務情報をほぼ毎日発信しています。