— 30秒でわかる結論 —

Q. 処遇改善加算による賃金改善分は、求人票にどう書くのがいいですか?

おすすめは「処遇改善手当 月◯円(加算の算定に基づき支給。区分の変更等により変動する場合があります)」という別立て+見込額明示の書き方です。基本給に含めると総額は大きく見えますが、加算額が下がったときに基本給を下げるのは原則として不利益変更の問題になり得ますし、賞与や割増賃金の算定基礎も膨らみます。逆に何も書かないのは、業界経験者ほど加算の扱いを気にするため機会損失です。別立てなら総支給額の魅力は落ちず、変動にも対応しやすく、加算を正しく理解している事業所という信頼シグナルにもなります。なお労働条件の明示や賃金規程の設計は社会保険労務士の専門領域のため、実務では連携して整えます。

処遇改善加算を、求人票のどこに書きますか

介護・障害福祉の求人で、意外と事業所ごとにバラバラなのがこれです。処遇改善加算による賃金改善分を、基本給に溶かすのか、手当として別立てにするのか、そもそも書かないのか

採用の観点だけを見れば「総額が大きく見える書き方」が有利です。しかし加算は制度である以上、区分や算定状況によって変動しうる性質を持っています。ここを踏まえずに書くと、採用では得をして、その後の労務で苦しむという事故が起きます。この記事は、行政書士(加算の届出)と人事・キャリアコンサルタント(求人と賃金設計)の両方の視点から、書き方を整理します。

この記事の対象——介護・障害福祉の全サービス類型に共通です

放課後等デイサービス児童発達支援グループホーム(共同生活援助)就労継続支援A型・就労継続支援B型・就労移行支援・就労定着支援/生活介護/同行援護/行動援護/短期入所/自立訓練/保育所等訪問支援/相談支援(その他類型の依頼ガイド)——いずれにも対応しています(処遇改善加算サポート)。

3つの書き方と、それぞれの損得(当事務所の独自整理)

書き方採用面(応募は増えるか)労務・運営面のリスク
A:基本給に含める
(加算分を基本給に溶かす)
◎ 月給の額面が大きく見え、検索の絞り込みにも引っかかりやすい△ 加算額が下がったときに基本給を下げるのは、原則として不利益変更の問題になり得ます。賞与・割増賃金・退職金の算定基礎も膨らみます
B:処遇改善手当として別立て○ 総支給額としては同じ。手当の性格と目安額を明示すれば納得感は高い◎ 加算の変動に対応しやすい。ただし支給ルール(算定根拠・変動の可能性)を最初に文書で示しておくことが前提
C:書かない× 同条件の他社に見劣りする。業界経験者ほど「加算はどうなってるの?」と気にします○ リスクはないが、機会損失が大きい

私のおすすめ——B(別立て)+「見込額の明示」

「処遇改善手当 月◯円(加算の算定に基づき支給。区分の変更等により変動する場合があります)」——この一行が、採用と労務の両立点だと考えています。

理由は3つ。①総額の魅力は落ちない(求職者が見るのは総支給額)。②変動に耐えられる(基本給と違い、支給ルールを事前に明示していれば調整の余地がある)。③「分かっている事業所」という信頼シグナルになる——業界経験者は、加算の扱いが曖昧な求人を警戒します。逆に、加算を正しく理解して誠実に開示している求人は、それだけで一段上に見えるのです。

実務の細部——ここまで書くと、応募の質が変わる

① 「加算を職員に配分している」ことを明記する——制度上、加算は賃金改善に充てるものです。当たり前のことでも、書いてある求人は多くありません。書くだけで差がつきます。② 配分の考え方に一言触れる——「経験年数と役割に応じて配分」など。配分ルールが見える事業所は、入職後の不満が起きにくい(25項目チェックリストの③言葉の層に通じます)。③ 賞与・昇給との関係を書く——「処遇改善手当とは別に賞与年2回」など、混同を避ける。④ サビ管など役職者への支給可否——令和8年度の改定で職種の扱いに関する整理が進んだ部分もあるため、自事業所がどう配分しているかを最新の要件で確認したうえで記載します(令和8年改定の記事)。

よくある事故——「加算込み月給30万円」の落とし穴

求人で「月給30万円(処遇改善加算含む)」とだけ書き、後から加算区分が変わって支給額が下がった、というケース。求職者にとっては「聞いていた金額と違う」という不信になり、事業所にとっては賃金の引き下げをめぐる労務問題になります。開業期に採った1人目との信頼が、ここで壊れるのは本当にもったいない。

防ぐ方法はシンプルで、「何がいくらで、どういう条件で変わりうるか」を最初に書く。それだけです。求人票は広告であると同時に、労働条件の最初の合意形成の場でもあります。なお、労働条件の明示や就業規則・賃金規程の設計は社会保険労務士の専門領域のため、当事務所は連携する社労士と分担して整えます。

加算を「採用の武器」に変える前提——まず取りこぼしていないこと

ここまでは書き方の話ですが、大前提として加算そのものを最大限取れているかが効いてきます。下位区分のままなら、原資が小さいので手当額も小さくなる。つまり加算の最適化=求人票の競争力なのです。自事業所の取りこぼしは取りこぼし試算の記事の早見表で概算できます。

当事務所は、加算の届出(税込55,000円〜)と求人票の設計を同じ担当者が見る——これは、行政書士と人事・キャリアコンサルタントを兼ねているからできる進め方です。「いくら取れるか」と「どう見せるか」を分断しないことが、いちばん実利につながります。採用チャネル全体の戦略は開業時採用の実務記事へ。

手続き・資金・人材を、ひとつの窓口で。当事務所は障害福祉・障害児支援の指定申請・処遇改善加算の届出に加えて、創業融資・資金繰りの支援と、人事15年×国家資格キャリアコンサルタントによる採用・定着支援(求人票の作成まで)をワンストップで提供します。初回60分無料・オンライン全国対応。

📍 千葉県ローカルメモ|千葉県内の求人で、加算の書き方が効く場面

松戸・柏・流山・船橋・市川・千葉市エリアは都内の事業所と人材を取り合う市場です。額面の総額で都内に対抗しづらいぶん、「加算の配分が明示されている」「支給ルールが分かる」という誠実さは、地元志向の求職者に効く差別化になります。求人媒体の限られた文字数のどこにこの一行を入れるかも含めて、ご一緒に設計します。

※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。

💬 目加多のひとこと

この記事は、実際に事業所を運営されている方との対話から生まれました。「加算分を最初から賃金に乗せれば大きく見せられるのでは」というご指摘に、私は「見せ方としては有効、ただし変動リスクは別立てで回避できます」とお答えしました。現場の発想と制度の知識が噛み合うと、こういう実務的な答えが出てきます。私の役割は、正解を上から教えることではなく、現場の知恵に制度の裏付けを添えることなのだと思っています。

行政書士 目加多龍

執筆・監修

目加多 龍めかた りょう

行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)

障害福祉・障害児支援の指定申請を専門とする行政書士。放課後等デイサービス・児童発達支援・グループホーム(共同生活援助)・就労継続支援A型/B型・就労移行支援・生活介護・居宅介護・重度訪問介護など障害福祉・障害児の全類型に対応し、千葉県指定と千葉市/船橋市/柏市の市指定どちらの窓口も日常的に扱っています(オンラインで全国対応)。開業後の変更届・体制届・処遇改善加算の届出、運営指導への備えまで伴走します。

前職では従業員約800名規模の3社合併にともなう人事制度統合を主導し、正社員・パート等あわせて約800名の給与計算と社会保険実務を運用。処遇改善加算のキャリアパス要件は、突き詰めれば賃金表と等級制度の設計そのもの——加算の届出だけでなく、その先の賃金設計まで踏み込めることが強みです。国家資格キャリアコンサルタントとして、サビ管・児発管など資格者の採用と定着も支援しています。

保有資格:行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/財務コンサルタント(ASJ)/2級FP技能士(AFP)/人事総務検定2級ほか計11種。制度改正のたびに一次資料を確認しながら、note・LinkedIn・Instagram・Threadsで介護・障害福祉の実務情報をほぼ毎日発信しています。

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