— 30秒でわかる結論 —

Q. 公認心理師が独立して、障害福祉の分野で収入を得るにはどうすればよいですか?

いまの資格と経験で、法人を作らずに始められる入り方が3つあります。①児童発達支援・放課後等デイサービスに雇用されて専門的支援の要員になる ②市町村の発達支援センター等の巡回相談・発達相談(会計年度任用職員)③自費のカウンセリング・心理検査。最大の注意点は、「複数の放デイと業務委託契約を結んで週1回ずつ訪問する」設計では加算にならないことです。こども家庭庁のQ&A(VOL.3 問9、令和6年5月2日)は、専門的支援実施加算等の要員を「事業者と雇用契約を締結して事業所に配置されている者等」とし、外部から派遣された者による支援では算定できないと明記しています(2026年9月14日確認)。だから非常勤でも雇用契約を結ぶ設計にします。心理担当職員は心理学専修卒+心理療法の技術で該当(告示第270号)。将来、医療でCBTを本業にするなら、令和8年度診療報酬改定で新設された公認心理師による心理支援を伴う認知行動療法の実施者要件(専任・週22時間以上・2年以上)に向けて勤務実績を積みます。自分で相談支援事業所の指定を取る道は、法人格と相談支援専門員の要件が要り半年以上かかるため、3本が回ってから考えても遅くありません。

こんな方に読んでいただきたい記事です

  • 公認心理師・臨床心理士で、独立や副業として障害福祉の分野を考えている方
  • 「複数の放デイと業務委託で回る」設計を考えている心理職の方
  • 心理職を雇いたい放デイ・児発の事業者で、加算の要件を確認したい方

「特定相談支援の指定を取りたい」から始まったご相談が、別の答えにたどり着いた話

公認心理師の方から、「特定相談支援事業の指定を取りたい」というご相談をいただくことがあります。話を伺っていくと、本当にやりたいことは指定ではなく、発達障害や境界知能の方への心理支援(認知行動療法・心理検査・カウンセリング)を、経済的に厳しい方も利用しやすい形で提供することで、特定相談支援はそのための前段階として考えていた——というケースが少なくありません。

(※複数のご相談を合成した架空の場面です)

この記事は、そのご相談で実際に整理した「心理職が障害福祉の制度の中で収入の柱をどう作るか」を、原典にもとづいて一般化したものです。結論から言うと、指定を取るより先に、雇用契約で加算の要員になる道と、市町村の公費ポストと、自費の3本を組み合わせる設計のほうが、早く・確実に・低所得の方にも届く形になります。

心理職が障害福祉で収入を得る5つの入り方

入り方制度上どうなるか収入の性質
児発・放デイに雇用されて、専門的支援の要員になる専門的支援実施加算は常勤換算の配置要件なし。ただし事業者と雇用契約を結んだ従業者であることが必要。業務委託・他法人からの訪問では算定不可(こども家庭庁Q&A VOL.3 問9)給与(非常勤可)。事業所にとっては加算収入の根拠になるため、雇用の交渉材料になる
市町村の発達支援センター等の巡回相談・発達相談(会計年度任用職員)公認心理師・臨床心理士を対象に毎年募集する自治体がある。保育園・こども園の巡回相談や発達検査が業務公費。低所得の家庭にも届く支援に関われる
自費のカウンセリング・心理検査(個人事業)許認可は不要。保険外なので価格は自由。ただし個人事業に直接出る運営費補助は基本的になく、補助金は後払い売上。経済的に厳しい方へ届けるには、上の2つの公費ルートと組み合わせる
医療機関で認知行動療法(CBT)の担当になる令和8年度診療報酬改定で「公認心理師による心理支援を伴う認知療法・認知行動療法」が新設。実施者には専任の公認心理師として週22時間以上・2年以上の勤務など施設基準あり。業務委託は想定されず雇用が前提給与。将来CBTを本業にするなら、いまの勤務実績が積み上がる
自分で相談支援事業所や自立訓練の指定を取る法人格と、相談支援専門員(研修+実務経験)または各サービスの人員基準が必要。個人では指定を受けられない給付費。ただし設立と指定に半年以上、心理支援そのものは事業の一部になる

ポイントは、上の3つ(雇用・公費ポスト・自費)がいまの資格と経験で、法人を作らずに始められることです。4つ目(医療のCBT)は将来の選択肢として勤務実績を積む話、5つ目(自分で指定を取る)は半年以上かかり、心理支援は事業の一部になります。

いちばん大事な一点——「業務委託で複数の事業所を回る」は加算にならない

心理職の独立で、最も多く、最も痛い誤解がここです。「近隣の放デイ数か所と業務委託契約を結び、週1回ずつ訪問して専門的支援を行えば、事業所は加算が取れて自分は報酬をもらえる」——この設計は制度上、成立しません

こども家庭庁のQ&A(VOL.3 問9、令和6年5月2日)は、専門的支援実施加算等の算定に当たって配置すべき従業者を「事業者と雇用契約を締結して事業所に配置されている者等」とし、他の法人等から専門職員による訪問を受けるなど、外部から派遣された者による支援では加算を算定できないと明記しています(2026年9月14日確認)。

だから設計は逆になります。非常勤でもよいので雇用契約を結び、その事業所の従業者として専門的支援を担う。事業所側にとっては、あなたを雇うことが専門的支援実施加算(常勤換算不要)の根拠になり、常勤換算1.0以上なら体制加算の根拠にもなります。「加算の要員として雇いませんか」は、心理職の側から事業所に持ちかけられる、根拠のある提案です。加算の中身は専門的支援体制加算・実施加算の解説をご覧ください。

よくある想定と、実際

よくある想定実際
「複数の放デイと業務委託で回れば、加算で収入になる」加算の要員は雇用契約が前提。業務委託・訪問では算定できないので、事業所側に加算の根拠が生まれない
「先に特定相談支援の指定を取って、そこから広げる」相談支援専門員の研修は法人推薦が原則の県が多く、修了後5年以内に現任研修を受けないと要件を失う。前段階として研修だけ取る構成は成立しにくい(別記事
「個人事業でも補助金で運営費を賄える」個人事業に直接出る運営費補助は基本的にない。狙えるのは小規模事業者持続化補助金(販路開拓)や自治体の創業支援補助で、いずれも後払い
「心理職のCBTは診療報酬で評価されない」令和8年度改定で評価が新設された。ただし施設基準と勤務実績の要件があり、業務委託ではなく雇用が前提

3本柱の設計——収入・公費・自費

  • ①収入の柱=児発・放デイの非常勤雇用——専門的支援実施加算の要員として。週の勤務日数は事業所と相談し、複数の事業所に雇用される形も可能(上限回数は事業所ごとに数える)
  • ②公費で届ける柱=市町村の巡回相談・発達相談——会計年度任用職員の募集を自治体の採用ページで定期的に確認する。保育園・こども園への巡回と発達検査は、低所得家庭を含む全世帯に届く
  • ③自費の柱=大人向けのCBT・心理検査——個人事業として。価格は自由だが、①②で生活の土台を作ってから、無理のない価格設定で始める

この3本は、いまの資格と経験でそのまま始められます。将来、医療でCBTを本業にする道を残すなら、クリニックでの勤務実績(週22時間以上)を積む。自分で事業所の指定を取る道は、3本が回ってから法人化とあわせて考えても遅くありません。

要確認:専門的支援加算の要件・心理担当職員の該当性は指定権者の判断によります。診療報酬上の認知行動療法の施設基準・勤務要件は厚生労働省の令和8年度改定資料と各医療機関の届出状況によります。会計年度任用職員の募集の有無・条件は自治体ごとに異なります。補助金の対象は各公募要領で確認してください。税務は税理士、労務は社会保険労務士の業務であり、当事務所は行いません。本記事は2026年9月14日時点の整理です。

「自分の資格と経験で、どの入り方が成立するか」は、突き合わせないと分かりません

心理職の方の独立相談は、指定申請の相談として始まることが多いのですが、本当にやりたいことと、制度が用意している入口を突き合わせると、答えが変わることがよくあります。資格(公認心理師・臨床心理士・保育士など)、経験年数(相談支援・児童福祉・医療)、住んでいる自治体の募集状況、法人を作るかどうか——この4つで、5つの入り方のどれが成立するかが決まります。

当事務所では60分の無料相談で、この突き合わせをその場で行います。資格の一覧と職歴(勤務先の種別と年数がわかるもの)をお手元にご用意いただけると精度が上がります。指定を取る道が最善なら、指定申請サポート(220,000円〜/税込)でお受けしますし、雇用や公費ポストが最善なら、そうお伝えします。ご依頼にならなくて構いません。オンラインで全国対応です。お問い合わせフォームからどうぞ。

参考にした一次資料

※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・要領および指定権者の案内をご確認ください。

📍 千葉県ローカルメモ|千葉県内の心理職の方へ

松戸・市川・流山など千葉県内の放デイ・児発は、専門的支援加算の体制届を千葉県(障害児支援事業指定班)に出します。心理職を雇用する事業所側は、採用前に心理担当職員の該当性を県に確認してください。市町村の発達相談・巡回相談の募集は各市の採用ページ(会計年度任用職員)で確認できます。当事務所では、心理職の方と事業所の双方から「加算の要員としての雇用」のご相談を受けています。

※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。

💬 目加多のひとこと

このご相談で私自身が学んだのは、最初の質問が「指定を取りたい」でも、答えが「指定を取らない」になることがある、ということです。制度の入口を全部並べてみると、本当にやりたいことに最短で届く道は、たいてい法人設立の外にありました。そして途中で私は2回間違えました。業務委託でも加算になると言いかけ、心理職のCBTは診療報酬で評価されないと言いかけた。どちらも原典で覆りました。改定年度を先に確認する——その教訓ごと、この記事に置いておきます。

行政書士 目加多龍

執筆・監修

目加多 龍めかた りょう

行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)

行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/2級FP技能士(AFP)。ブリヂストン系列企業とNEC系列企業で人事・労務の現場15年を経て2026年に独立。個人向けキャリア相談はココナラで約70件・全件★5.0(プラチナランク・2026年7月時点)。障害福祉・障害児支援の指定申請を軸に、資金調達から人材の定着まで、中小企業の「手続き」「資金」「人材」を一体で支援しています。

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