— 30秒でわかる結論 —
Q. 障害者グループホームの開業には結局いくら必要ですか?
賃貸物件・定員6名の例で、初期費用と運転資金をあわせて概算370〜570万円。これに消防等の改修費(ゼロ〜数百万円)が加わります——前提次第で大きく動く数字です。内訳は、法人設立の法定費用(株式会社で概算25万円前後)、物件の契約初期費用(家賃の4〜6か月分)、消防設備等の改修費(ゼロ〜数百万円と最も振れる項目)、備品、そして開業後2〜3か月分の人件費・家賃(報酬入金が約2か月遅れるため)。「1,000万円程度」と言われるのは、改修費が重い物件や自己所有・新築系のケースを含むためです。金額の断定より大切なのは、この5項目で漏れなく積み上げ、特に運転資金を削らないこと——本文に試算表の型を用意しました。
「グループホームの開業って、結局いくらかかるんですか?」——最も多く、そして最も答えにくい質問です。答えにくい理由は簡単で、物件条件で数百万円単位で変わるから。そこで本記事は「◯◯円です」と断定する代わりに、前提を明示した試算モデルをお渡しします。前提を差し替えれば、あなたのケースの概算が出せる「型」です。
⚠️ 本記事の金額はすべて概算・一例です(2026年7月時点)。税制・料金・相場は変わります。実際の計画では必ず個別に見積もり・試算してください。
試算の前提(この条件で計算します)
・賃貸の戸建て住宅を利用(家賃月15万円と仮定)
・定員6名・介護サービス包括型
・株式会社を新設
・大規模な間取り変更はなし(改修は消防設備等のみ)
①法人設立の法定費用——概算25万円前後(株式会社)
グループホームは法人でなければ指定を受けられません。株式会社の設立には、定款認証や登録免許税(15万円〜)などの法定費用が概算25万円前後。合同会社なら登録免許税6万円〜で概算10万円前後に抑えられます。既に法人をお持ちなら、事業目的の変更(登録免許税3万円)で済む場合もあります(会社設立の法定費用)。
②物件の初期費用——家賃の4〜6か月分が目安
賃貸の場合、敷金・礼金・仲介手数料・前家賃でおおむね家賃の4〜6か月分。家賃15万円の前提なら60〜90万円です。ここで絶対に忘れてはいけないのが、契約前に消防・用途変更の確認を済ませること——次の③が跳ねるかどうかは、物件選びの段階でほぼ決まります(物件の落とし穴)。
③消防設備等の改修費——最大の変動要因(ゼロ〜数百万円)
開業費用が「数百万円」で済むか「1,000万円コース」になるかを分けるのが、ここです。自動火災報知設備・誘導灯などの消防設備、場合によっては建築基準法上の用途変更——物件の現況によってゼロに近いこともあれば、数百万円規模になることもあります。
費用を読む方法は1つだけ——契約前に、消防署への相談と見積もりを済ませること。千葉県は建物図面の事前確認(任意・回答まで3週間程度)も受け付けており、これを使わない手はありません(最新スケジュールと事前確認)。
④備品・什器——概算50〜100万円
居室の家具・家電、共用部のテーブル・冷蔵庫・洗濯機、事務用品、通信環境。1室あたり10万円×6室+共用部で、概算50〜100万円を見込むケースが多い項目です。中古・リースの活用で圧縮できます。
⑤運転資金——ここを削ると開業後に詰みます
最も見落とされ、最も重要な項目です。報酬の入金は、サービス提供月からおおむね2か月後。つまり開業した月から2〜3か月は、収入ほぼゼロのまま人件費と家賃が出ていきます。
前提例で月々の支出を置いてみます(すべて概算・一例)——サビ管・世話人・生活支援員の人件費で月60〜90万円、家賃15万円、水道光熱・雑費10万円。月85〜115万円×3か月分=概算250〜350万円。さらに開業直後は満室でないのが普通なので、稼働が立ち上がるまでの持久力もここに含まれます(GHの収支構造・手元資金は月商何か月分?)。
合計——この前提なら「概算370〜570万円+改修費」
| 項目 | 概算(この前提での一例) | 変動要因 |
|---|---|---|
| ①法人設立 | 約10〜25万円 | 株式会社か合同会社か/既存法人か |
| ②物件初期費用 | 約60〜90万円 | 家賃水準×契約条件(4〜6か月分) |
| ③消防等の改修 | 0〜数百万円 | 物件の現況(最大の変動要因) |
| ④備品・什器 | 約50〜100万円 | 定員数/中古・リース活用 |
| ⑤運転資金(3か月) | 約250〜350万円 | 人員体制/立ち上がり稼働率 |
| 合計 | 概算370〜570万円+改修費 | 改修費しだいで総額は変動。「1,000万円程度」と言われるのは改修が重いケース等を含むため |
※すべて概算・一例(2026年7月時点の一般的な水準感にもとづく当事務所の整理)。個別の物件・体制で必ず再試算してください。なお指定申請そのものの手数料は、徴収しない自治体が多い一方で取り扱いが分かれるため、申請先でご確認を。
費用を抑える「順番」——安い物件探しより先にやること
費用圧縮というと家賃の安い物件探しから始めがちですが、順番が逆です。①消防・用途変更の事前確認で「改修が軽い物件」を選ぶ(家賃月1万円の差より、改修費200万円の差のほうが大きい)→②法人形態と備品で小さく削る→③運転資金は削らず、創業融資で厚くする。日本政策金融公庫の創業融資は、この⑤運転資金にこそ使うべき資金です(創業融資の窓口ガイド・自己資金の考え方)。自治体によっては施設整備の補助制度がある場合もあるため、開業予定地での確認も価値があります(制度の有無・条件は自治体ごとに異なります)。
この「型」で、あなたの数字を出しましょう
まとめます。開業費用の答えは「いくら」ではなく、①〜⑤の型に自分の前提を入れて出すものです。当事務所は行政書士として指定申請を、財務コンサルタント(ASJ)・2級FP技能士として、この試算と創業融資の申請を一体でお手伝いしています。物件候補の図面を持ってご相談いただければ、改修リスクの見立てから概算をご一緒します(GH開業の完全ガイド・就労B型版の試算モデル・お金と人の総合支援)。
📍 千葉県ローカルメモ|契約前の三点確認が費用を決める
千葉県内では、物件の消防関係は所轄消防署、建築基準法の用途変更は建築部局が窓口です。県の図面事前確認(任意・回答まで3週間程度)とあわせ、契約前の三点確認(消防・建築・指定基準)をおすすめしています。松戸・柏・流山エリアの物件は、土地勘も含めてご相談ください。
※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。
💬 目加多のひとこと
費用の相談で「1,000万円と聞いて諦めかけていた」という方に、内訳を分解してお見せすると表情が変わることがあります。金額の正体は前提の集合です。分解すれば、動かせる項目が見えてきます。

執筆・監修
目加多 龍めかた りょう
行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)
障害福祉・障害児支援の指定申請を専門とする行政書士。放課後等デイサービス・児童発達支援・グループホーム(共同生活援助)・就労継続支援A型/B型・就労移行支援・生活介護・居宅介護・重度訪問介護など障害福祉・障害児の全類型に対応し、千葉県指定と千葉市/船橋市/柏市の市指定どちらの窓口も日常的に扱っています(オンラインで全国対応)。開業後の変更届・体制届・処遇改善加算の届出、運営指導への備えまで伴走します。
前職では従業員約800名規模の3社合併にともなう人事制度統合を主導し、正社員・パート等あわせて約800名の給与計算と社会保険実務を運用。処遇改善加算のキャリアパス要件は、突き詰めれば賃金表と等級制度の設計そのもの——加算の届出だけでなく、その先の賃金設計まで踏み込めることが強みです。国家資格キャリアコンサルタントとして、サビ管・児発管など資格者の採用と定着も支援しています。
保有資格:行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/財務コンサルタント(ASJ)/2級FP技能士(AFP)/人事総務検定2級ほか計11種。制度改正のたびに一次資料を確認しながら、note・LinkedIn・Instagram・Threadsで介護・障害福祉の実務情報をほぼ毎日発信しています。