— 30秒でわかる結論 —

Q. グループホームは夜勤を置かないといけませんか?

一律に夜勤が義務づけられているわけではなく、入居者の状況と提供する支援によって必要な体制が変わります。ただし現実には、夜間の見守り・排せつ・緊急時対応が必要な方が入居されていれば、宿直での対応には無理が出ます。判断の軸は「夜間にどれだけの対応が発生するか」——実態が労働なら夜勤、待機が中心なら宿直(労基署の許可が前提)という整理です。なお、夜間の体制を手厚くすると人件費は増えますが、夜間支援等体制加算が原資になります。支援ニーズから体制を決め、その裏づけとして加算を取る、という順番で設計してください。

グループホームの開業相談で、物件と人材の次に必ず出てくるのが「夜、どうするか」です。ここは制度・労務・お金の3つが同時に絡むため、迷いやすいところ。順に整理します。

夜勤と宿直は「別物」——ここを混同しない

まず言葉の整理から。夜勤は、夜間も継続して支援を行うことを前提とした通常の労働時間としての勤務です。一方宿直は、本来ほとんど労働がない待機的な勤務を想定した働き方で、労働基準監督署の許可(断続的労働に従事する者の許可)を受けて初めて成り立ちます

実務で問題になりやすいのが、実態と名目のズレです。夜間に何度も呼ばれ、対応に追われているのに宿直扱いのまま——これは労務上のリスクになり得ます。「夜、実際に何が起きているか」を記録して見直すことをおすすめします(労働時間や許可の具体的な取扱いは社労士・労基署の領域のため、当事務所では提携社労士と連携して対応しています)。

加算は「体制の裏づけ」——順番を間違えない

制度側には夜間支援等体制加算が用意されており、夜間支援従事者の配置の形や対象となる利用者数などによって区分が分かれます(2026年7月時点。区分・単位数は報酬改定で変わるため、最新の告示と指定権者の案内でご確認ください)。

ここで大切なのが順番です。加算が取れるから夜勤を置くのではなく、入居者の支援に夜間体制が必要だから置き、その原資として加算を確実に取る。前者の発想で始めると、必要のない人件費を抱えるか、逆に支援が手薄なまま加算だけ算定して運営指導で問題になるか、どちらかに転びます。加算は毎月満たし続けるものだという原則を忘れないでください。

複数の住居があるとき——「1人で何棟まで見るか」

グループホームは複数の住居を持つことがあり、夜間の支援を住居ごとに置くのか、複数住居を1人で回るのかで、体制も加算の区分も変わります。物件が離れていれば移動時間がかかり、緊急時の到達時間にも影響します。物件の選び方の段階から夜間体制を想定しておくことが、後の設計を楽にします(物件選びの落とし穴)。

緊急時の備え——夜間こそ「決めておく」

体調急変、転倒、無断外出、災害。夜間は職員が少ないぶん、その場の判断に委ねない仕組みが要ります。誰に連絡するか、救急を呼ぶ基準、記録の残し方——マニュアルとして書面化し、新任の職員が最初の夜勤に入る前に共有しておくこと。これは運営指導でも確認される部分ですが、それ以前に、夜勤者を一人にしないための仕組みだと思っています。

夜間体制は、採用と定着に直結する

最後にひとつ。夜勤の有無とシフトの組み方は、求人への応募と職員の定着に最も影響する条件です。人が集まらない、続かないという相談の背景に、無理のある夜間シフトがあることは少なくありません。体制設計は制度の話であると同時に、人事の話でもある——当事務所が指定申請と採用・定着支援を一体でお受けしている理由がここにあります。全体像はGH開業ガイド、収支への影響はGHの収支構造へ。

📍 千葉県ローカルメモ|制度は指定権者、宿直許可は労基署

千葉県内でGHを開業する場合、夜間支援体制の考え方や加算の算定にあたっての確認事項は、指定権者(千葉県または千葉市・船橋市・柏市)の手引きに沿って整理します。宿直の許可については所轄の労働基準監督署の管轄となるため、提携社労士と連携してご案内しています。

※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。

💬 目加多のひとこと

夜勤の相談をしていると、「夜が回らないと昼も回らない」とよく感じます。夜間体制は人件費の重い部分ですが、ここを無理な形で始めた事業所ほど、あとで人が辞めていく。最初にきちんと設計する価値がある場所だと思います。

行政書士 目加多龍

執筆・監修

目加多 龍めかた りょう

行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)

障害福祉・障害児支援の指定申請を専門とする行政書士。放課後等デイサービス・児童発達支援・グループホーム(共同生活援助)・就労継続支援A型/B型・就労移行支援・生活介護・居宅介護・重度訪問介護など障害福祉・障害児の全類型に対応し、千葉県指定と千葉市/船橋市/柏市の市指定どちらの窓口も日常的に扱っています(オンラインで全国対応)。開業後の変更届・体制届・処遇改善加算の届出、運営指導への備えまで伴走します。

前職では従業員約800名規模の3社合併にともなう人事制度統合を主導し、正社員・パート等あわせて約800名の給与計算と社会保険実務を運用。処遇改善加算のキャリアパス要件は、突き詰めれば賃金表と等級制度の設計そのもの——加算の届出だけでなく、その先の賃金設計まで踏み込めることが強みです。国家資格キャリアコンサルタントとして、サビ管・児発管など資格者の採用と定着も支援しています。

保有資格:行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/財務コンサルタント(ASJ)/2級FP技能士(AFP)/人事総務検定2級ほか計11種。制度改正のたびに一次資料を確認しながら、note・LinkedIn・Instagram・Threadsで介護・障害福祉の実務情報をほぼ毎日発信しています。

プロフィールを見る →