— 30秒でわかる結論 —
Q. 指定申請は自分ひとりでもできますか?何が大変なのでしょうか?
制度上、自分で申請することは可能です。ただし自力で進めた方が実際につまずくのは、書類の書き方より手前の5点です——①情報が一箇所にまとまっておらず、国の基準と自治体独自の運用のどれが自分に適用されるかの特定に時間がかかる ②物件の不適合が契約後に判明する(用途地域・消防・区画。最も高くつくやり直し)③常勤換算や兼務可否など人員基準の解釈に確信が持てない ④申請期限・事前相談・審査期間を織り込んだ逆算ができず開所が遅れる ⑤採用・資金調達と並走する時期に、申請だけで数十時間が削られる。逆に、時間に余裕があり、単一サービスの小規模で、窓口に何度も通えるなら自力も現実的です。判断の材料として本記事をお使いください。
「指定申請って、自分でもできますか?」——正直にお答えします。できます。制度上、申請者本人が手続きすることに何の問題もありません。ただ、自力で進めて途中でご相談に来られる方には、驚くほど共通した詰まりどころがあります。今日はそれを5つ、包み隠さず書きます(2026年7月時点の一般的整理。売り込みではなく判断材料としてお読みください)。
理由①:情報が「一箇所にまとまっていない」
最初の壁は、書類作成ではなく情報収集です。指定申請に必要な情報は、国が定める基準(人員・設備・運営)、指定権者ごとの独自の運用や上乗せ、提出様式、そして改正情報に分散しています。しかも千葉県内なら、千葉市・船橋市・柏市は各市、それ以外は県と窓口自体が分かれる(一部の市は事務移譲でサービス別に窓口が異なります)。
ネット検索で出てくる解説記事は、他県の情報か、改正前の情報であることが少なくありません。自力申請の方が最も時間を取られるのは、実は「どれが自分の事業所に適用される情報か」を特定する作業です。防ぎ方——最初に指定権者の手引きを入手し、ネットの解説ではなく手引きを唯一の正として作業する。不明点は電話で確認し、日付と担当者名をメモに残す。
理由②:物件の不適合が「契約後」に判明する
これが最も高くつく失敗です。物件を契約し、内装工事の見積りまで進んだ段階で——用途地域の制限、建築基準法上の用途変更、消防設備の設置義務、必要な区画(訓練室・相談室・静養室など)の不足が判明する。すると追加の改修費と、使えない期間の家賃が同時に発生します。数十万〜百万円単位の損失になることもあり、開所は数か月ずれます。
防ぎ方——賃貸借契約の前に、図面を持って指定権者と消防に相談する。この一手間だけで大半は防げます。契約を急かされても、「指定が取れなければ事業が始まらない」以上、確認が先です。当事務所が物件の内見段階からのご相談をおすすめしているのは、この一点に尽きます(指定申請の流れとつまずきやすい3点)。
理由③:人員基準の「解釈」に確信が持てない
条文は読める。でも自分のケースに当てはめると、判断がつかない——ここが第三の壁です。典型的な論点は3つ。
| 論点 | つまずき方 |
|---|---|
| 常勤換算 | 「常勤換算2.5人」を頭数2.5人と誤解する。パートの勤務時間の積み上げ方、常勤職員の所定労働時間の設定で数字が変わる(訪問介護の2.5人の意味) |
| 兼務の可否 | 管理者と他職種、サービス提供責任者との兼務——サービス類型と条件により可否が分かれ、勤務形態一覧表の書き方に直結 |
| 要件職の資格充足 | サビ管・児発管の実務経験年数と研修の充足判定。「採用したのに要件を満たしていなかった」は致命傷(児発管の要件) |
防ぎ方——人員は採用の前に要件充足を確認する。候補者の経歴書と資格証・研修修了証を突き合わせ、判断が微妙なら指定権者に事前確認を。ここは「後で直せない」領域です。
理由④:スケジュールを逆算できない
指定は申請すればすぐ下りるものではありません。申請の受付期限(指定希望月から逆算して定められています)、事前相談、書類審査、必要に応じた現地確認——加えて千葉県では市町村意見申出の仕組みにより、より早い段階からの動きが必要です(千葉県のスケジュール解説)。
自力申請で起きるのは、「書類を作り終えてから、期限に間に合わないと気づく」という順番の事故です。開所が1〜2か月ずれれば、その間の家賃と、先に採用した職員の人件費が空費になります——これは資金計画を直撃する損失です。防ぎ方——最初に指定権者の受付期限を確認し、開所希望日から逆算した工程表を1枚作る。工程表がない申請は、ほぼ必ず遅れます。
理由⑤:本業と同時進行できない——時間という最大の資源
見落とされがちですが、これが実質的に最大の理由かもしれません。開業前後の経営者は、物件・資金調達・採用・営業(紹介経路づくり)・研修を同時に走らせています。そこに指定申請が加わる——書類作成そのものより、手引きを読み解き、窓口に何度も足を運び、差し戻しを直す往復に時間が溶けます。
仮に申請一式で30〜60時間(サービス類型と慣れによる幅・概算)かかるとして、その時間で経営者ができたはずのことは何か——ケアマネや相談支援専門員への挨拶回り、面接、資金計画の精緻化。開業直後の稼働率と人員体制は、この時期の営業と採用で決まります(ケアマネへの情報提供・採用の仕組み)。申請を自分でやる判断は、この機会費用まで含めて考える価値があります。
それでも「自分でやる」が向くケース
正直に書きます。次の条件が揃うなら、自力申請は十分に現実的です——①開所までの時間に余裕がある(半年以上)②単一サービス・小規模で、物件が明らかに要件を満たしている③平日の日中に窓口へ何度も通える④書類仕事に苦手意識がない。逆に、多機能型や複数事業所の同時申請、物件に不安がある、開所日が資金計画で決まっている——このいずれかに当てはまるなら、専門家の関与を検討する場面だと思います。
途中からの相談も、もちろん歓迎です
「自分で始めたけれど、行き詰まった」——この段階でのご相談は珍しくありませんし、まったく遅くありません。むしろ物件契約前・人員採用前であれば、まだ取り返しがつく論点がほとんどです。当事務所は指定申請の代行に加え、「ここまでは自分で、ここから先は依頼」という部分的な関与もお受けしています。指定申請サポートでは、通所介護・訪問介護・グループホーム・放課後等デイサービス・児童発達支援・就労継続支援など各サービスに対応。松戸・柏・流山・船橋・市川など千葉県内およびオンラインで全国対応、初回60分は無料です。まずは「今どこで詰まっているか」だけでもお聞かせください(差し戻される7つの理由もあわせてどうぞ)。
📍 千葉県ローカルメモ|まず「自分の窓口はどこか」を確定させる
千葉県内の指定権者は、千葉市・船橋市・柏市=各市、それ以外=県が原則です(我孫子市のように事務移譲でサービス別に市が窓口となる例外もあります)。窓口が違えば手引きも様式も受付期限も別物——まず自分の事業所がどの窓口かを確定させることが、自力申請の最初の一歩です。
※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。
💬 目加多のひとこと
この記事は営業のために書いたのではありません。私自身、前職で人事の実務を15年やって、行政手続きの往復に時間が溶ける感覚を知っています。頼むかどうかより先に、「何にどれだけ時間がかかるか」を知って選んでほしいのです。

執筆・監修
目加多 龍めかた りょう
行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)
障害福祉・障害児支援の指定申請を専門とする行政書士。放課後等デイサービス・児童発達支援・グループホーム(共同生活援助)・就労継続支援A型/B型・就労移行支援・生活介護・居宅介護・重度訪問介護など障害福祉・障害児の全類型に対応し、千葉県指定と千葉市/船橋市/柏市の市指定どちらの窓口も日常的に扱っています(オンラインで全国対応)。開業後の変更届・体制届・処遇改善加算の届出、運営指導への備えまで伴走します。
前職では従業員約800名規模の3社合併にともなう人事制度統合を主導し、正社員・パート等あわせて約800名の給与計算と社会保険実務を運用。処遇改善加算のキャリアパス要件は、突き詰めれば賃金表と等級制度の設計そのもの——加算の届出だけでなく、その先の賃金設計まで踏み込めることが強みです。国家資格キャリアコンサルタントとして、サビ管・児発管など資格者の採用と定着も支援しています。
保有資格:行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/財務コンサルタント(ASJ)/2級FP技能士(AFP)/人事総務検定2級ほか計11種。制度改正のたびに一次資料を確認しながら、note・LinkedIn・Instagram・Threadsで介護・障害福祉の実務情報をほぼ毎日発信しています。