— 30秒でわかる結論 —
Q. NPO法人の「その他の事業」で赤字が出たら、どうなりますか?
その他の事業の赤字で心配している方へ。初年度の赤字だけで、すぐに問題になるわけではありません。内閣府のNPO法Q&Aは、その他の事業は初年度から黒字が見込めるとは限らないとしたうえで、2事業年度継続して多額の赤字が生じるような場合は、所轄庁による報告徴収・立入検査の対象となる可能性がある、としています(特定非営利活動促進法 第5条第1項・内閣府NPO法Q&A 2-4-2(2026年10月9日確認))。
こんな方に読んでいただきたい記事です
- 資金づくりのために始めたカフェや物販などの「その他の事業」が赤字になったNPO法人の方
- 赤字が2事業年度続きそうで、所轄庁に何か言われないか不安な理事・事務局の方
- これからその他の事業を始めるので、赤字が出たときの扱いを先に知っておきたい方
ご相談いただくと、こう進みます
- 最初の60分の無料相談で、定款のその他の事業の条文と、直近の活動計算書の別欄を一緒に確認します
- ご依頼後は、赤字の原因の整理、事業報告書での説明の書き方、縮小・廃止する場合の定款変更の手続きを進めます
- 税金の扱いは、税理士に確認していただく事項として整理してお渡しします
「収益のために始めた事業が赤字で…」と心配している方へ。初年度の赤字だけで、すぐに問題になるわけではありません
NPO法人が、活動の資金づくりのためにカフェや物販などの「その他の事業」を始めた。でも、思ったより売れず、初年度は赤字。そこで頭をよぎるのが「NPO法人で赤字を出して大丈夫なのか」という不安です。内閣府のNPO法Q&Aにも、この質問がそのまま載っています。「「その他の事業」により赤字が生じた場合はどうなるのですか。」
答えはこうです。その他の事業は、特定非営利活動に係る事業に支障がない範囲で行うことができる。それゆえ、必ずしもその他の事業の開始の初年度から黒字が見込めるとは限りませんが、2事業年度継続して多額の赤字が生じるような場合は、所轄庁による報告徴収・立入検査の対象となる可能性があります(制度。特定非営利活動促進法 第5条第1項・内閣府NPO法Q&A 2-4-2(2026年10月9日確認))。
つまり、問題になるのは「赤字そのもの」ではなく、赤字が続いて、本来の活動に支障が出ていないか、という点です。
そもそも「その他の事業」とは——本来の活動を支えるための事業です
その他の事業とは、NPO法人が、特定非営利活動に係る事業に支障がない限り行うことができる、それ以外の事業のことです(第5条第1項)。利益が出たら、特定非営利活動に係る事業のために使わなければなりません。内閣府のQ&Aは、その利益は特定非営利活動に係る事業に繰り入れなければなりません、としています(2-4-3)。
そして、その他の事業に関する会計は、特定非営利活動に係る事業の会計から区分し、特別の会計として経理しなければなりません(第5条第2項)。この区分経理は、その他の事業の利益が本来事業に充てられたこと、その他の事業が本来事業に支障がないこと、を確認できるように定められたもの、とQ&Aは説明しています(2-4-4)。
その他の事業を行うには、定款に「その他の事業を行う場合には、その種類その他当該その他の事業に関する事項」を書いておく必要があります(第11条第1項第11号)。
赤字は書類のどこに出るか——活動計算書の「その他の事業」の欄です
ひとことで言うと、その他の事業の赤字は、毎年の活動計算書の中で、本来事業とは別の欄に数字として出ます。千葉県の手引きは、活動計算書と活動予算書について、別葉表示は求めないが、一つの書類の中で別欄表示する、としています。その他の事業を実施していない年は、脚注にその旨を書くか、その他の事業の欄全てに「ゼロ」を書きます(制度。千葉県「特定非営利活動法人申請・届出の手引き」(2026年10月9日確認))。
千葉県の作成例の活動計算書には「経理区分振替額」という行があり、注に「その他の事業で得た利益の振替額」と書かれています。黒字なら本来事業へ振り替える行ですが、赤字の年は、その他の事業の欄がマイナスのまま並ぶことになります。事業報告書と一緒に所轄庁に出すので、2事業年度続けば、書類を見た人にはすぐ分かります(当事務所の見解)。事業報告書の提出期限は事業報告書の提出期限にまとめています。
しかも活動計算書は、所轄庁だけが見る書類ではありません。事務所に備え置き、社員や利害関係人から求められれば閲覧させる書類です。会員や寄附者が別欄の赤字を見たときに説明できるか、という目でも見ておきたいところです。備置きと閲覧の決まりは事業報告書等の備置きと閲覧にまとめています。
所轄庁の監督は段階的です——報告徴収・立入検査、改善命令、認証の取消し
結論として、赤字が続いたからといって、いきなり認証が取り消されるわけではありません。法律の監督の規定は、段階を踏む形になっています。
| 段階 | 条文の要件 | その他の事業の赤字との関係 |
|---|---|---|
| 報告徴収・立入検査(第41条) | 法令、法令に基づいてする行政庁の処分又は定款に違反する疑いがあると認められる相当な理由があるとき | 内閣府Q&Aは、2事業年度継続して多額の赤字が生じるような場合は対象となる可能性がある、としている |
| 改善命令(第42条) | 法令等に違反し、又はその運営が著しく適正を欠くと認めるときなど。期限を定めて改善のために必要な措置を命ずる | 本来事業に支障が出ているなど、第5条第1項の要件との関係が問われる場面(当事務所の見解) |
| 設立の認証の取消し(第43条第1項) | 改善命令に違反し、他の方法により監督の目的を達することができないとき、又は3年以上にわたって事業報告書等を提出しないとき | 赤字だけを理由とする規定ではない |
(制度。特定非営利活動促進法 第41条・第42条・第43条、内閣府NPO法Q&A 2-4-2(2026年10月9日確認))
所轄庁によっては、この考え方を運用方針として文章にしています。例えば京都市の「特定非営利活動促進法の運用方針」は、その他の事業の設立の認証基準を「設立当初の事業年度及び翌事業年度(計画及び予算ベース)ともに赤字計上されていないこと」としています。報告徴収等の対象となり得る監督基準は「2事業年度連続して赤字計上されている場合」です(京都市(2026年10月9日確認))。内閣府のQ&Aは「多額の赤字」、京都市は「赤字計上」と、書き方が違います。どこから問題にされるかは、所轄庁の運用方針で確認してください(要確認)。
設立の申請をこれからする方は、活動予算書のその他の事業の欄を、最初の2つの事業年度とも赤字で組まないことが大切です。京都市の運用方針は、事業計画上赤字計上されているその他の事業は、特定非営利活動に係る事業に「支障がない限り」行われることが意図されているとは言えない、としています(当事務所の見解を含む)。
立入検査をするときは、所轄庁は、違反の疑いがあると認められる相当の理由を記載した書面を、あらかじめ法人の役員等に提示させなければならない、と決まっています(第41条第2項)。「何の説明もなく突然来る」という形ではありません。
— この段階でご相談いただく理由 —
赤字が初年度のうちなら、続けるか、縮めるか、やめるかを、定款と書類の手続きまで含めて落ち着いて選べます。2事業年度目の決算を迎えてからだと、選べる時間が短くなります。
赤字が出た年にやること——自己点検の5項目
ひとことで言うと、「本来の活動に支障が出ていないか」を、書類と数字で説明できるようにしておきます。
| 確認すること | 見る書類 |
|---|---|
| その他の事業の赤字を、本来事業の会費・寄附・助成金で穴埋めしていないか | 活動計算書の別欄・預金の動き |
| 本来事業の活動(回数・対象・内容)が、赤字の前より減っていないか | 事業報告書 |
| その他の事業の会計が、本来事業の会計と区分されているか | 帳簿・活動計算書(第5条第2項) |
| 赤字の原因(初期費用か、売上不足か、続く固定費か)を分けて書けるか | その他の事業の収支の内訳 |
| 翌年度の見通しと、続けない場合の判断の時期を決めているか | 事業計画書・活動予算書・理事会の議事録 |
(項目は、第5条と内閣府Q&A 2-4-2〜2-4-4の趣旨を、当事務所が点検の順に並べたもの)
赤字の原因が、設備や仕入れなどの初期費用なら、Q&Aのいう「初年度から黒字が見込めるとは限らない」場面に近いと言えます。逆に、毎月の家賃や人件費が売上を上回り続けているなら、2事業年度目も赤字になる可能性が高い。原因を分けて書いておくことが、所轄庁に聞かれたときの説明にもなります(当事務所の見解)。
財務の目で見ると
その他の事業の赤字で一番こわいのは、本来事業のために集めた会費や寄附が、知らないうちに赤字の穴埋めに回っていることです。会計を区分していても、預金口座が1つだと、お金の流れは見えにくくなります。月に1回、その他の事業の売上と経費だけを抜き出して、累計の赤字がいくらになっているかを理事会で共有してみてください。続けるか、やめるかの判断が、感覚ではなく数字でできるようになります。
縮める・やめるときは、定款の手続きも確認します
結論として、その他の事業の中身を変えたりやめたりするときは、定款の変更が要るかを確かめます。千葉県の手引きは、「特定非営利活動の種類と事業、又はその他の事業の変更を伴う」定款変更の場合は、提出書類が異なるので注意してください、としています。その他の事業に変更がある場合は、定款の変更の日の属する事業年度及び翌事業年度の事業計画書及び活動予算書も添付します(千葉県の手引き(2026年10月9日確認))。
定款変更の認証と届出の分け方は定款変更の認証と届出を参考にしてください。
税金の話は、別に確認が要ります
ここまでの話は、NPO法の「その他の事業」の扱いです。その他の事業が法人税法上の収益事業に当たるか、赤字が出た年の法人税・住民税の申告をどうするかは、別の法律の話で、本記事では扱っていません。税理士に確認してください。NPO法人の税金の基本はNPO法人の税金の基本に整理しています。
今日やること——3つだけ
まず、直近の活動計算書で、その他の事業の欄の数字を確かめます。で、赤字の原因を「初期費用」「売上不足」「続く固定費」に分けて書き出します。最後に、次の理事会で、来年度も続けるか、縮めるか、やめるかを話す時期を決めます。この3つで、2事業年度目を迎える前の準備がほぼそろいます。
参考にした一次資料
- 内閣府NPOホームページ「NPO法Q&A 経理・会計等」(2-4-2〜2-4-4)(2026年10月9日確認)
- 特定非営利活動促進法(第5条・第11条・第41条〜第43条。e-Gov法令検索)(2026年10月9日確認)
- 京都市「特定非営利活動促進法の運用方針」(平成29年4月1日改正。その他の事業の認証基準・監督基準)(2026年10月9日確認)
- 千葉県「特定非営利活動法人申請・届出の手引き」(その他の事業・計算書類の別欄表示・活動計算書の作成例・定款変更の添付書類)(2026年10月9日確認)
※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・要領および指定権者の案内をご確認ください。
📍 千葉県ローカルメモ|千葉県内の所轄庁
千葉市にのみ事務所を置く法人は千葉市長、それ以外で千葉県内に主たる事務所を置く法人は千葉県知事が所轄庁です。活動計算書の別欄表示と作成例は、千葉県の手引きに載っています(2026年10月9日確認)。
※2026年10月9日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。
💬 目加多のひとこと
「赤字を出したら怒られる」と思って、本来の活動の会費で黙って穴埋めしてしまう。そのほうが、あとで説明に困ります。赤字の理由を数字で書けていれば、慌てる必要はないと思っています。

執筆・監修
目加多 龍めかた りょう
行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)
行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/2級FP技能士(AFP)。ブリヂストン系列企業とNEC系列企業で人事・労務の現場15年を経て2026年に独立。個人向けキャリア相談はココナラで約70件・全件★5.0(プラチナランク・2026年7月時点)。障害福祉・障害児支援の指定申請を軸に、資金調達から人材の定着まで、中小企業の「手続き」「資金」「人材」を一体で支援しています。
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