— 30秒でわかる結論 —
Q. 理事長との利益相反の契約を、定款の職務代行の規定で副理事長が結ぶことはできますか?
理事長の物件を借りるなどの契約で、特別代理人を立てずに副理事長が署名してよいか迷っている方へ。定款に「理事長に事故あるとき又は欠けたとき」の規定があれば、理事長が職務活動をすることができない場合に当たるとして、副理事長が契約を締結することは可能、とされています。ただし相手方から、特別代理人の選任を含む手続きを求められる可能性があります(内閣府NPO法Q&A 2-3-10(2026年10月20日確認))。
この記事は制度の解説です。NPO法人の総会・解散・継続的なご相談は、料金と流れを専用のページでご案内しています。
こんな方に読んでいただきたい記事です
- 理事長の物件を借りる・理事長の会社に仕事を頼むなど、利益相反の契約を控えているNPO法人の理事の方
- 定款の「副理事長が職務を代行」の条文で、特別代理人なしに進めてよいか確かめたい事務局の方
- これから定款を作る・直すときに、利益相反のときの代表の決め方まで考えておきたい方
ご相談いただくと、こう進みます
- 最初の30分の無料相談で、いまの定款の代表権・職務代行・理事会の承認の条文を一緒に読み、4通りのうちどれが使えるかを確かめます
- ご依頼後は、理事会の議案と議事録、相手方に見せる根拠の資料を整え、必要なら特別代理人の請求や定款の変更の手続を進めます
- その後は、役員の改選や定款の見直しのときに、利益相反のときの代表の決め方が定款と合っているかを見直します
「理事長の物件を借りる契約、定款に『副理事長が職務を代行』とあるから、副理事長が署名すればいい?」と迷っている方へ。Q&Aは「可能」としつつ、相手方から特別代理人の選任を求められる可能性も書いています
NPO法人で、理事長が持っている建物を事務所として借りたい。理事長の会社に仕事を頼みたい。これは利益相反になると聞いた。特別代理人の申立ては手間がかかりそうだ。定款には「理事長に事故あるとき又は欠けたときは、副理事長がその職務を代行する」と書いてある。これで副理事長が法人の代表として契約できないか。内閣府のQ&Aにも、ほぼそのままの質問が載っています。
答えはこうです。定款に「理事長に事故あるとき又は欠けたとき~」という規定を設けていれば、「理事長の欠けたとき」には、理事長が存在しなくなったときだけではなく、存在はするものの事実上又は法律上の原因から職務活動をすることができない場合も含まれます。そうした場合には、副理事長が契約を締結することは可能と考える、とされています(制度。内閣府NPOホームページ「NPO法Q&A 役員等」2-3-10(2026年10月20日確認))。
ただし、同じ答えに続きがあります。契約の相手側から見ると、副理事長に実際の代表権があるか否かが必ずしも明確ではないため、副理事長の代表権を明確に証するための何らかの手続き(特別代理人の選任を含む)を要求される可能性はある、としています(同)。定款の1行だけで、相手方が納得するとは限らない、ということです。
前提——利益相反のとき、理事長は代表権を持たない
利益相反とは、NPO法人と理事の利益がぶつかる事項のことで、その事項については、理事は、代表権を有しないと法律に定められています(制度。特定非営利活動促進法 第17条の4(2026年10月20日確認))。同じ条文は、この場合においては、所轄庁は、利害関係人の請求により又は職権で、特別代理人を選任しなければならない、と続きます。
もともと、理事は、すべて法人の業務について法人を代表しますが、定款をもって、その代表権を制限することができます(同 第16条)。多くの法人は、定款で「理事長は、この法人を代表し」「理事長以外の理事は、この法人を代表しない」と決めています。千葉県の手引きの定款例も、第15条でこの形を示し、注で、代表権を持つ者(理事長等)と法人が不動産賃貸など契約を締結する場合は、利益相反行為となるので注意が必要、と書いています(千葉県「特定非営利活動法人申請・届出の手引き」定款例 第15条(2026年10月20日確認))。
代表権が理事長だけにあると、理事長が利益相反で代表できない契約は、法人の側に代表する人がいなくなります。そこで、特別代理人を選ぶか、別の方法で代表する人を立てるかを考えることになります。理事長の物件を借りる場面の特別代理人の流れは理事長の物件を事務所に借りるときの利益相反に書いています。
代表する人の立て方は4通り——定款の書き方で選べる道が変わる
結論として、内閣府のQ&Aを並べると、利益相反の契約で法人を代表する人の立て方は4通りあります。どれが使えるかは、いまの定款に何が書いてあるかで決まります。
| 立て方 | 使える条件(原文から) | 気をつける点 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| ほかに代表権を持つ理事が契約する | 理事長以外に代表権を有する理事が存在する場合には、当該理事が法人を代表して契約を締結する | 定款で代表権を理事長だけにしていると使えない | Q&A 2-3-12 |
| 副理事長が職務を代行して契約する | 定款に「理事長に事故あるとき又は欠けたとき」の規定があり、理事長が事実上又は法律上の原因から職務活動をすることができない場合 | 相手方から代表権を証する手続き(特別代理人の選任を含む)を求められる可能性がある | Q&A 2-3-10 |
| 理事会の承認を得て、他の理事が代行する | 定款に、当該事項については理事会の承認が必要である旨が定められていること。承認する理事会で、当該理事に議決権はない | 共有建物の事例への回答で、ほかの契約に同じ扱いができるかは所轄庁に確認(要確認)。いまの定款に無ければ、定款の変更が先になる | Q&A 2-3-13 |
| 特別代理人を選んでもらう | 所轄庁が、利害関係人の請求により又は職権で選任 | 理事会での議決・候補者の就任承諾など、所轄庁ごとの手続がある | 第17条の4・Q&A 2-3-12 |
(制度。内閣府NPO法Q&A 2-3-10・2-3-12・2-3-13、特定非営利活動促進法 第17条の4(2026年10月20日確認)。「気をつける点」は当事務所の見解を含みます)。
熊本市は、特別代理人の選任がいらない場合の例として、定款で、理事長が欠けたとき、副理事長が職務を代行するなどと定めているときを挙げています。そのうえで、上記のような場合でも、契約相手から特別代理人の選任を求められる場合がある、としています(熊本市「特別代理人の選任について」(2026年10月20日確認))。Q&A 2-3-10と同じ読み方です。
代表権のない理事でも、利益相反は起こる
ひとことで言うと、「代表権がないから関係ない」とはなりません。Q&A 2-3-11は、代表権の有無にかかわらず、理事と法人との間の利益相反自体は起こり得ます、としています。そのうえで、例えば、代表権を有する別の理事Bによって、代表権のない理事Aと法人との間の利益相反事項が有効に成立することはあり得る、と書いています(制度。内閣府NPO法Q&A 2-3-11(2026年10月20日確認))。
同じ答えは、法人側に損害が生じれば、当該事項の成立に実質的な責任を有する理事は、当該法人の損害に対して賠償責任を負うことになる、とも書いています(同)。2-3-13も、民法第644条の、理事のいわゆる「善管義務」に違反するような場合には賠償責任を負う、と添えています。代表する人を立てられることと、その契約が法人にとって妥当かどうかは、別の問題です(当事務所の見解)。
— この段階でご相談いただく理由 —
いまの定款の代表権と職務代行の条文を一緒に読み、4通りのうちどれが使えるかを決めます。契約の相手方に見せる議事録の形まで整えます。
理事会で残すこと——契約の前に確かめる点検表
結論として、どの立て方を選んでも、理事会で「利益相反に当たること」「誰が代表するか」「契約の中身が妥当か」を議事録に残しておくと、相手方にも所轄庁にも説明しやすくなります。法人の業務は、定款に特別の定めのないときは、理事の過半数をもって決します(制度。特定非営利活動促進法 第17条(2026年10月20日確認))。
| 確かめること | 書き方の例(当事務所の見解) |
|---|---|
| 利益相反に当たる理事 | 理事長本人か、理事長が代表を務める会社か、ほかの理事か。代表権のない理事も対象になる(Q&A 2-3-11) |
| 定款の代表権の条文 | 「理事長以外の理事は、この法人を代表しない」があるか。ほかに代表権を持つ理事がいるか |
| 定款の職務代行の条文 | 「理事長に事故あるとき又は欠けたとき」の規定があるか。副理事長が複数なら、理事長があらかじめ指名した順序があるか |
| 理事会の承認の定め | 利益相反の事項は理事会の承認が必要、と定款にあるか。あれば、承認する理事会で当該理事は議決に加わらない(Q&A 2-3-13) |
| 契約の中身 | 賃料・期間・相場との比較など、法人に損にならないと言える根拠を議事録に書く |
| 相手方への説明 | 代表する人と、その根拠(定款の条文・議事録)を契約の前に相手方に見せ、特別代理人を求められないか確かめる |
(制度上の根拠は、特定非営利活動促進法 第16条・第17条・第17条の4、内閣府NPO法Q&A 2-3-10〜2-3-13、千葉県の手引きの定款例 第15条。右の列は当事務所が例を書いたものです(2026年10月20日確認))。特別代理人の選任を請求する場合は、熊本市の案内では、理事長及び親族、利害関係人はこの議決に参加できず、理事長の配偶者や親族、利害関係人、監事は特別代理人になることはできない、としています(熊本市(2026年10月20日確認))。所轄庁ごとの扱いは確認してください。
定款に「理事会の承認」の定めを足すなら——総会の議決と、認証か届出か
ひとことで言うと、Q&A 2-3-13の道を使いたくても、いまの定款に定めが無ければ、先に定款を変える必要があります。なお、2-3-13は、法人と理事長が共同で所有する建物を法人が借りる事例への回答です。理事長が単独で持つ物件や、理事長の会社との契約に同じ扱いができるかは、所轄庁に確認してください(要確認)。定款の変更は、定款で定めるところにより、社員総会の議決を経なければなりません。議決は、社員総数の2分の1以上が出席し、その出席者の4分の3以上の多数をもってします(ただし、定款に特別の定めがあるときは、この限りでない)(制度。特定非営利活動促進法 第25条第1項・第2項(2026年10月20日確認))。
さらに、定款の変更のうち「役員に関する事項」(第11条第1項第6号)に係るもの(役員の定数に係るものを除く)は、所轄庁の認証を受けなければ、その効力を生じません(同 第25条第3項)。利益相反の承認と職務の代行の定めが「役員に関する事項」に当たるかどうかは、所轄庁に確かめてください(要確認)。認証が要るなら、効力が生じるまでの期間を見込んで、契約の日程を組む必要があります。定款変更の認証と届出の分かれ目は定款変更の認証と届出に書いています。
作った当事者の目で見ると
法人を作る側にいると、定款の副理事長の条文は「理事長を補佐する役」くらいの気持ちで入れてしまいやすい1行です。でも、理事長の物件を借りる、理事長の会社に仕事を頼む、という話は、設立の後で意外と早く出てきます。そのとき効いてくるのが、代表権を誰に持たせたか、職務代行と理事会の承認をどう書いたか、です。これから定款を作るなら、利益相反のときに誰が代表するかまで考えて書いておくと、あとで総会を開き直さずに済みます(当事務所の見解)。
任期が切れて後任が決まらないときの仮理事(第17条の3)は、利益相反の特別代理人とは別の制度です。違いは役員の任期が切れたのに後任が決まらないときの仮理事に、理事長が職員を兼ねて給与を受ける場面は理事長が事務局の職員を兼ねるときに書いています。理事長が海外に住むことになり、定款の職務代行ではなく理事長そのものを替えて登記する必要がある場面は理事長が海外に住むことになったときの手続に書いています。
今日やること——3つだけ
まず、いまの定款を開き、代表権の条文(理事長だけか)と、職務代行の条文(「事故あるとき又は欠けたとき」)、利益相反の承認の定めがあるかを確かめます。で、予定している契約が利益相反に当たるなら、4通りのうちどれで進めるかを理事会で決め、議事録に理由と契約の中身を書きます。最後に、副理事長が代表するなら、その根拠を契約の相手方に先に見せ、特別代理人を求められないかを確かめます。この3つで、「たぶん大丈夫」が「この根拠で代表しています」と言える状態に変わります。
参考にした一次資料
- 内閣府NPOホームページ「NPO法Q&A 役員等」(2-3-10〜2-3-13)(2026年10月20日確認)
- 特定非営利活動促進法(第11条・第16条・第17条・第17条の4・第25条。e-Gov法令検索)(2026年10月20日確認)
- 千葉県「特定非営利活動法人 申請・届出の手引き」(R7.2。定款例 第15条と注)(2026年10月20日確認)
- 熊本市「特別代理人の選任について」(2026年10月20日確認)
※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・要領および指定権者の案内をご確認ください。
📍 千葉県ローカルメモ|千葉県内の所轄庁
千葉市にのみ事務所を置く法人は千葉市長、それ以外で千葉県内に主たる事務所を置く法人は千葉県知事が所轄庁です。特別代理人の選任の請求や、定款の変更が認証か届出かで迷うときは、所轄庁に確認します(2026年10月20日確認)。
※2026年10月20日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。
💬 目加多のひとこと
利益相反の契約は、「身内の話だから」と後回しにしやすいところだと思います。Q&Aを読むと、定款の書き方しだいで、特別代理人を待たずに進める道もあります。でも、相手方が納得するかは別の話です。まずは定款を開いて、代表権と職務代行の条文に線を引くところから始めてみてください。

執筆・監修
目加多 龍めかた りょう
行政書士 × 人事・財務アドバイザー(目加多龍行政書士事務所 代表)
行政書士/2級FP技能士(AFP)/国家資格キャリアコンサルタント。
障害福祉・障害児支援とNPO法人を専門にしています。放課後等デイサービス・児童発達支援・就労継続支援A型・B型・グループホーム(共同生活援助)などの指定申請、処遇改善加算・変更届・指定更新・運営指導(実地指導)への対応を支援します。NPO法人は、設立認証から事業報告書・役員変更などの運営まで支援します。
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