— 30秒でわかる結論 —
Q. NPO法人が株式会社の株を持つ(株主になる)ことはできますか?
寄付や会費の余裕資金を株で運用してよいか迷っている方へ。NPO法人としての活動資金を得るために資産運用する場合の手段は特段禁じられておらず、株主になっても法第2条違反を問われることはないとされています。ただし、事業の一環としての出資に当たる場合は原則認められません(内閣府NPO法Q&A 2-4-1、特定非営利活動促進法 第3条第1項(2026年10月12日確認))。
こんな方に読んでいただきたい記事です
- すぐには使わない法人のお金を、株式で運用してよいか理事会で迷っているNPO法人の方
- 取引先や関係のある会社に出資したいと考えていて、NPO法人として問題がないか確かめたい方
- 株で運用を始めたあとの、会計と事業報告書の書き方が不安な方
ご相談いただくと、こう進みます
- 最初の60分の無料相談で、株を持ちたい目的と相手の会社との関係を伺い、資産運用か事業の一環の出資かを一緒に整理します
- ご依頼後は、定款の資産の規定と理事会・総会の議事録の書き方を整え、所轄庁への確認が必要な点をまとめます
- その後は、毎年の事業報告書・計算書類で投資有価証券の表示と説明がそろっているかを見直します
たとえば、こんな場面で迷っていませんか
NPO法人の理事長の方。会費や寄付が少しずつ積み上がり、法人の口座にすぐには使わないお金がたまってきました。
理事会で、理事のひとりから「普通預金に置いておくより、株で運用して活動資金の足しにしてはどうか」と提案がありました。相手として、法人の活動に協力してくれている会社の名前も挙がっています。
ところが別の理事から「営利を目的としない法人が株主になってよいのか」と言われ、話が止まりました。定款で資産の運用を理事会と総会のどちらが決めることになっているのかも、すぐには分かりません。
株を持ったあと、決算書や事業報告書にどう載るのか、会員や寄付者にどう説明すればよいのかも見えていません。
このまま目的をあいまいにして始めると、関係のある会社への出資が事業の一環の出資に見えたり、閲覧した人に説明できなかったりしかねません。
この場面なら、まず株を持つ目的が活動資金を得るための資産運用といえるかを確かめ、次に定款の決め方と会計・公開の扱いを確認します。以下、その順に説明します。
「寄付でいただいたお金を、株で少しでも増やしたい。でもNPOが株主になったら『非営利』に反しない?」と迷っている方へ。活動資金を得るための資産運用として株を持つことは、法第2条違反を問われないとされています
NPO法人の口座に、すぐには使わないお金がある。普通預金に置いたままにするより、株式で運用して活動資金の足しにしたい。でも「営利を目的としない」法人が株主になるのは、筋が違うのではないか。理事会でそんな話が出る場面です。内閣府のNPO法Q&Aにも、この質問がそのまま載っています。「NPO法人が株式会社の株主となることは、法第2条の営利を目的としないものという規定に反する行為に当たりますか。」
答えはこうです。NPO法人としての活動資金を得るために資産運用する場合の手段については、特段禁じられていません。したがって、質問のケースにおいて、法第2条違反を問われることはないものと考えます、とされています(制度。内閣府NPO法Q&A 2-4-1(2026年10月12日確認))。
ただし、同じ答えの中に2つの線引きがあります。1つは、NPO法人が株主への配当を前提とする株式の発行により出資を受け入れる主体となることは、法第2条の非営利要件に違反する、という点です。もう1つは、事業の一環としての出資に当たるような場合は原則認められない、という点です(同)。
3つの場面の判定表——株を「持つ」のか、「発行する」のか、「事業として出資する」のか
ひとことで言うと、NPO法人と株式の関係は、株を持つ目的と立場で扱いが分かれます。Q&A 2-4-1に書かれている3つの場面を並べました。
| 場面 | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| NPO法人の活動資金を得るために、資産運用として株式会社の株を持つ | 資産運用の手段は特段禁じられておらず、法第2条違反を問われることはないとされる | 内閣府Q&A 2-4-1 |
| NPO法人が、株主への配当を前提とする株式の発行により出資を受け入れる | 法第2条の非営利要件に違反する | 内閣府Q&A 2-4-1・第2条第2項第1号 |
| 事業の一環としての出資に当たる | 原則認められない(特定の者の利益を目的とした事業の禁止) | 内閣府Q&A 2-4-1・第3条第1項 |
(制度。内閣府NPO法Q&A 2-4-1、特定非営利活動促進法 第2条・第3条(2026年10月12日確認))
どういう出資が「事業の一環としての出資」に当たるのか、具体例はQ&Aに書かれていません。たとえば株を持つ相手の会社が、法人の事業と取引のある会社だったり、役員の関係する会社だったりする場合は、資産運用と言い切れるか迷うところです。その場合は、出資する前に所轄庁に確認するのが確実です(要確認)。
なぜ「持つ」はよくて「発行する」はだめなのか——第2条と第3条
結論として、NPO法人に求められているのは「営利を目的としない」団体であることと、特定の人の利益のために事業をしないことです。特定非営利活動促進法は、特定非営利活動法人の要件として「営利を目的としないものであること」を定めています(第2条第2項第1号)。あわせて「特定の個人又は法人その他の団体の利益を目的として、その事業を行ってはならない」としています(第3条第1項)。
Q&Aは、配当を前提とする株式の発行による出資の受入れは非営利要件に違反し、活動資金を得るための資産運用の手段は特段禁じられていない、という結論を示しています(内閣府NPO法Q&A 2-4-1)。理由までは書かれていませんが、株式を発行して出資を受けると法人の利益を出資者に配る仕組みになり、法人が株を持つのは資産運用の手段の1つにとどまる、という違いと読むと分かりやすいと思います(当事務所の見解)。
非営利と利益の考え方はNPO法人とは何か(非営利の意味と会社との違い)に、収益を生む事業の扱いはその他の事業が赤字になったらにまとめています。
— この段階でご相談いただく理由 —
株を持つかどうかは、理事会の決め方・会計・毎年の事業報告書まで一続きの話です。資産運用なのか、事業の一環の出資なのかを、定款と会計の書類を並べて一緒に整理します。
株を持ったら、書類のどこに出るか——貸借対照表と、閲覧される事業報告書等
ひとことで言うと、長く持つ株は貸借対照表の「投資有価証券」として出てきます。投資有価証券とは、長期に保有する有価証券のことです。千葉県の手引きは、貸借対照表の「投資その他の資産」を、余裕資金の運用のための長期的外部投資や、貸付金等長期債権から構成される資産としています(千葉県の手引き(2026年10月12日確認))。
同じ手引きは、投資有価証券を保有するNPO法人は極めて少数であるのが現状だが、保有するNPO法人においては、他の会計基準を参照して独立して表示することが望まれる、としています(同 p.77)。持っている法人が少ないぶん、決算書を見た人の目に留まりやすい項目です(当事務所の見解)。
法律は、計算書類(活動計算書及び貸借対照表)及び財産目録を、会計簿に基づいて活動に係る事業の実績及び財政状態に関する真実な内容を明瞭に表示したものとする、と定めています(第27条)。これらは毎事業年度の事業報告書等として事務所に備え置き、社員その他の利害関係人から閲覧の請求があれば、正当な理由がある場合を除いて閲覧させなければなりません(第28条)。備え置きと閲覧の決まりは事業報告書の備え置きと閲覧にまとめています。配当や売却したときの税金の扱いは、税理士に確認してください。
作った当事者の目で見ると
自分で社員を集めてNPO法人の認証を取った立場から言うと、株の話が出たときに一番気にしたほうがいいのは、法律よりも「会員や寄付者にどう見えるか」だと思うんです。決算書に投資有価証券が載ると、閲覧した人から「寄付が株に回っているの?」と聞かれることがあり得ます。そのときに、理事会でどういう目的で決めたのか、運用で得たお金を何に使うのかを、議事録と事業報告書で説明できるようにしておく。ここまで決めてから始めるのが安心です(当事務所の見解)。
株とは別に、信用金庫から融資を受けるときに払う出資金も、貸借対照表の資産に載る項目です。仕訳と、活動計算書に表示されない理由はNPO法人が信用金庫の融資で払った出資金の扱いにまとめています。
株を持つ前に確かめる順番
結論として、「目的」→「決め方」→「会計」→「公開」→「所轄庁」の順に確かめると、あとで説明に困りにくくなります(当事務所の見解)。
| 確かめる順番 | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 目的 | 活動資金を得るための資産運用か。事業の一環としての出資に当たらないか | 内閣府Q&A 2-4-1・第3条第1項 |
| 2 決め方 | 資産の管理や運用を、理事会と総会のどちらで決めるか。自分の法人の定款の規定を見る | 自法人の定款(要確認) |
| 3 会計 | 長く持つ株は貸借対照表の投資有価証券として、独立して表示する | 千葉県の手引き p.77・第27条 |
| 4 公開 | 計算書類と財産目録は事業報告書等として備え置き、閲覧の請求があれば閲覧させる | 第28条 |
| 5 所轄庁に確認 | 事業の一環の出資に当たるか迷うときは、出資する前に所轄庁に確認する | 内閣府Q&A 2-4-1(要確認) |
(制度。特定非営利活動促進法 第2条・第3条・第27条・第28条、内閣府NPO法Q&A 2-4-1、千葉県「特定非営利活動法人申請・届出の手引き」(2026年10月12日確認))
当事務所にご相談いただいた場合の進め方
- 1. ご相談の前に手元に用意していただくもの
法人の定款、直近の事業報告書等(活動計算書・貸借対照表・財産目録)、理事会・総会の議事録、運用を考えている株式と相手の会社の資料、相手の会社と法人・役員との関係が分かるメモをお手元にご用意ください。 - 2. 初回60分の無料相談で一緒に確認すること
株を持ちたい目的と相手の会社との関係を伺い、活動資金を得るための資産運用といえるか、事業の一環の出資に見えるおそれがないかを一緒に整理します。定款で資産の管理や運用を誰が決めることになっているかも、その場で確かめます。 - 3. ご依頼後の進め方当事務所がやること:判断が分かれる点を所轄庁に確かめる事項として整理し、理事会・総会の議事録の書き方を整えます。定款の変更が必要なときは定款変更の手続きを、株を持ったあとは事業報告書等の作成・提出をお手伝いします。お客様にお願いすること:株を持つかどうかの理事会・総会での決定と、議事録への署名、証券口座の開設や売買は、法人で行っていただきます。配当や売却したときの税金の扱いは、税理士にご確認ください。
- 4. その後
次の事業年度の事業報告書等をまとめる前に、投資有価証券の表示と、運用で得たお金の使い道の説明がそろっているかを見直します。
料金は料金表と料金シミュレーションでご確認いただけます。
今日やること——3つだけ
まず、株を持ちたい理由を、理事会で「活動資金を得るための資産運用」として一文で書けるかを確かめます。で、自分の法人の定款で、資産の管理や運用を誰が決めることになっているかを見ます。最後に、相手の会社と法人や役員との関係を書き出し、事業の一環の出資に見えないかを確かめます。この3つで、「非営利なのに株主」という不安を、説明できる形に置き換えられます。
参考にした一次資料
- 内閣府NPOホームページ「NPO法Q&A 経理・会計等」(2-4-1)(2026年10月12日確認)
- 特定非営利活動促進法(第2条・第3条・第5条・第27条・第28条。e-Gov法令検索)(2026年10月12日確認)
- 千葉県「特定非営利活動法人申請・届出の手引き」(貸借対照表の科目例・投資有価証券 p.77)(2026年10月12日確認)
※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・要領および指定権者の案内をご確認ください。
📍 千葉県ローカルメモ|千葉県内の所轄庁
千葉市にのみ事務所を置く法人は千葉市長、それ以外で千葉県内に主たる事務所を置く法人は千葉県知事が所轄庁です。千葉県の手引きは、貸借対照表の科目例に投資有価証券(長期に保有する有価証券)を載せ、保有する法人は独立して表示することが望まれる、としています(2026年10月12日確認)。
※2026年10月12日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。
💬 目加多のひとこと
「NPOが株なんて」と身構えたくなるところですが、Q&Aを読むと、資産運用の手段そのものは禁じられていません。気をつけたいのは、目的があいまいなまま始めることです。何のために持つのか、誰が決めたのかを書類に残しておけば、会員や寄付者に聞かれても落ち着いて答えられます。

執筆・監修
目加多 龍めかた りょう
行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)
行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/2級FP技能士(AFP)。ブリヂストン系列企業とNEC系列企業で人事・労務の現場15年を経て2026年に独立。個人向けキャリア相談はココナラで約70件・全件★5.0(プラチナランク・2026年7月時点)。障害福祉・障害児支援の指定申請を軸に、資金調達から人材の定着まで、中小企業の「手続き」「資金」「人材」を一体で支援しています。
プロフィールを見る →