— 30秒でわかる結論 —
Q. NPO法人にも、カスハラ対策の義務はありますか?
職員(労働者)を1人でも雇用していれば、NPO法人も2026年10月1日から対象です。改正労働施策総合推進法により、カスタマーハラスメントを防ぐための雇用管理上の措置が事業主の義務になり、厚生労働省の指針(令和8年厚生労働省告示第51号)は、①方針の明確化と周知・啓発 ②相談体制の整備 ③事後の迅速かつ適切な対応 ④抑止のための措置に加え、相談者のプライバシー保護と不利益取扱いの禁止を求めています。NPO法人では、相談事業の相談者や家族、居場所の保護者や地域住民、行政受託事業の利用者、寄附者や会員、福祉事業の利用者などが「顧客等」になりえます。ただし正当な苦情や要望はカスハラに当たらず、サービスの提供義務があり途絶えると生命・心身に重大な影響が及ぶ場合は、そのことに留意して対応する必要があります。ボランティアだけで運営し労働者がいない団体は、法律上の措置義務の対象ではありませんが、活動する人を守る必要は同じです(2026年9月25日確認)。
こんな方に読んでいただきたい記事です
- 職員を雇っているNPO法人の理事・事務局の方
- 相談事業や居場所、行政の受託事業を行っている法人の方
- 理事長が一人で苦情対応を抱えている法人の方
職員を1人でも雇っていれば、NPO法人も対象です
2026年10月1日から、カスタマーハラスメントを防ぐための雇用管理上の措置が事業主の義務になります(改正労働施策総合推進法)。対象は労働者を雇用するすべての事業主で、NPO法人も例外ではありません。厚生労働省の指針(令和8年厚生労働省告示第51号)は、カスハラを「顧客等」の言動によるものとし、電話やSNSでの言動も含むとしています(制度(2026年9月25日確認))。
逆に言えば、ボランティアだけで運営し、労働者がいない団体は、この法律上の措置義務の対象ではありません。ただし、活動する人を守る必要は同じです。義務の有無と、対策の必要性は分けて考えてください。
NPO法人で「顧客等」になりうる相手
| 活動 | 顧客等になりうる相手 | 起きやすい場面 |
|---|---|---|
| 相談・支援事業(生活困窮、こども、高齢者、外国人など) | 相談者、その家族 | 長時間の電話、深夜の連絡、特定職員への執着 |
| 居場所・こども食堂・学習支援 | 保護者、地域住民 | 運営への過度な要求、SNSでの批判 |
| 行政からの受託事業(窓口、講座、施設運営) | 利用者、住民 | 「税金でやっているのだから」という要求 |
| 寄附・会員の受付 | 寄附者、会員 | 寄附を理由にした介入、返礼の要求 |
| 障害福祉・介護の事業 | 利用者、家族 | 厚労省は福祉施設の利用者も「顧客等」に含めている |
指針は、正当な苦情や要望など、社会通念上許容される範囲の申入れはカスハラに当たらないとしています。NPO法人は「声を聞く」ことが活動の核なので、ここを丁寧に分けることが大切です。
事業主が講じる措置は4つ(指針)
- 方針の明確化と周知・啓発——カスハラには毅然と対応し、職員を守るという方針を決め、対処の内容まで職員に伝える。
- 相談体制の整備——相談窓口を決めて周知する。既存のハラスメント窓口と兼ねてよい。
- 事後の迅速かつ適切な対応——事実確認、被害者への配慮(担当の変更など)、再発防止。
- 抑止のための措置——悪質な行為への対処方針(警告、サービス提供の拒否、警察への通報など)を定め、体制を整える。
あわせて、相談者のプライバシー保護と、相談を理由とする不利益取扱いの禁止を講じます。違反に刑事罰はありませんが、報告徴求・助言・指導・勧告・公表の対象です。
— この段階でご相談いただく理由 —
NPO法人で多いのは、理事長や事務局長が全部を一人で受けている形です。方針も窓口も「自分」。これでは指針の求める体制になりませんし、その人が倒れたら活動が止まります。窓口を役職で決め、記録の様式を1枚作るだけで、体制の形になります。
<ご相談時にお持ちいただくもの>活動の一覧と、職員(有償)とボランティアの人数/就業規則の有無/過去に困った場面のメモ。60分無料相談はこちら
NPO法人ならではの難しさと、分け方
指針は、サービスの提供義務がある業種や、サービスが途絶えると利用者の生命・心身の健康に重大な影響が及ぶ場合には、そのことに留意して対応する必要があるとしています。相談支援や福祉を行うNPO法人は、まさにこの場合に当たります。「悪質だから断る」と単純には決められません。
実務では、次の3つに分けて考えるのが現実的です。
| 分け方 | どう扱うか |
|---|---|
| 支援の必要から出ている言動(困りごとの表れ) | 支援の対象。担当を複数にし、対応の時間帯を決める |
| 活動の範囲を超えた要求 | 責任者が引き取り、規約や契約に沿って説明する |
| 威圧・脅し・長時間の拘束・SNSでの攻撃 | 記録し、複数で対応し、対処方針に沿って警告や通報を判断する |
📗 障害福祉での分け方はカスハラ対策の義務化と合理的配慮の区別にまとめています。
10月1日までに整える最小限
- 方針を1枚にする——総会や理事会で決め、職員に配る。
- 窓口を役職で決める——「事務局長」ではなく「相談窓口担当(副理事長)」のように、特定の人に依存しない形で。
- 記録の様式を作る——日時・相手・内容・対応・その後。
- 就業規則がある法人は見直す——常時10人以上の職員がいれば作成義務があり、変更は社会保険労務士の業務。
- ボランティアにも同じ守りを——法律上の義務ではなくても、活動規約に対応方針を書き、一人にしない。
厚生労働省は2026年9月8日に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」を公表しています。ひな型はそこから取れます。
参考にした一次資料
- 厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号・2026年2月26日)を解説する社会保険労務士法人の記事(2026年9月25日確認)
- BUSINESS LAWYERS「2026年10月カスハラ対策が義務化」(措置義務・違反時の対応・対策マニュアル令和8年度改訂版)(2026年9月25日確認)
- 政府広報オンライン「カスタマーハラスメント対策」(福祉施設の利用者も顧客等・合理的配慮への留意)(2026年9月25日確認)
※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・要領および指定権者の案内をご確認ください。
📍 千葉県ローカルメモ|松戸周辺のNPO法人で整えるとき
松戸市・市川市・柏市などから受託事業を行っているNPO法人は、委託元との契約に苦情対応の取り決めがあることが多いので、法人の方針と食い違わないよう確認してください。障害福祉サービスを行うNPO法人は、指定基準の苦情解決の仕組み(苦情受付の窓口・記録)と、カスハラ対策の窓口を一つにまとめると運用が楽です。就業規則の作成・変更は社会保険労務士の業務なので、必要に応じて提携先をご紹介します(2026年9月25日確認)。
※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。
💬 目加多のひとこと
NPO法人の理事長は、苦情を一人で受けている方がとても多いです。「自分が受ければいい」という優しさが、活動の続かなさにつながります。窓口を役職で決める。それだけで、次の人に引き継げる団体になります。

執筆・監修
目加多 龍めかた りょう
行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)
行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/2級FP技能士(AFP)。ブリヂストン系列企業とNEC系列企業で人事・労務の現場15年を経て2026年に独立。個人向けキャリア相談はココナラで約70件・全件★5.0(プラチナランク・2026年7月時点)。障害福祉・障害児支援の指定申請を軸に、資金調達から人材の定着まで、中小企業の「手続き」「資金」「人材」を一体で支援しています。
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