— 30秒でわかる結論 —
Q. NPO法人が理事長の持っている物件を事務所として借りるとき、理事長が契約してもいいですか?
理事長の物件を事務所にしようとしている方へ。家賃を払って借りるなら、理事長は法人の代表として契約できません。内閣府のNPO法Q&Aは、理事長所有の不動産を法人が賃借し、理事長が法人の代表として契約する場合は利益相反行為になるとしています(特定非営利活動促進法 第17条の4)。代表権が理事長だけなら、所轄庁に特別代理人の選任を申し立て、選任された特別代理人が契約します。ほかに代表権を持つ理事がいれば、その理事が契約します(内閣府NPO法Q&A(2026年10月8日確認))。
こんな方に読んでいただきたい記事です
- 理事長(または理事長が代表の会社)の物件を、NPO法人の事務所にしようとしている方
- 「特別代理人」と所轄庁に言われて、何をすればいいか分からない方
- これから定款を作るので、代表権と事務所の決め方を先に知っておきたい方
ご相談いただくと、こう進みます
- 最初の60分の無料相談で、定款の代表権の条文と、借りたい物件の持ち主・家賃の有無を一緒に確認します
- ご依頼後は、所轄庁に議決の機関と様式を確認し、議事録・就任承諾書・請求書の案をそろえます
- 設立前の方には、代表権と事務所の決め方を定款案に反映し、利益相反が起きにくい形を一緒に設計します
「理事長の持っている部屋を、法人の事務所にしたい」と考えている方へ。家賃を払って借りるなら、理事長は契約にサインできません
「理事長の家の一室を事務所にすれば、家賃も安く済むし早いよね」。NPO法人を作るとき、こう考える方は少なくないと思います。内閣府のNPO法Q&Aにも、まさにこの質問が載っています。「法人の理事長が所有する不動産を法人が賃借する場合、この賃貸借契約を法人の代表として当該理事長が締結する場合は利益相反行為に当たりますか。」
答えは「利益相反行為になります」です。法律は、法人と理事との利益が相反する事項について、その理事は代表権を持たないと定めています。この場合、所轄庁が特別代理人を選任します(制度。特定非営利活動促進法 第17条の4・内閣府NPO法Q&A(2026年10月8日確認))。
つまり、貸す側(理事長個人)と借りる側(法人)の両方に理事長が立つと、家賃を高くしても低くしても、どちらかが得をする形になってしまう。だから、法人側には理事長以外の人が立つ、という仕組みです。
誰が法人の代わりに契約するのか——定款の代表権で2つに分かれます
結論として、理事長以外に代表権を持つ理事がいるかどうかで、やることが変わります。内閣府のQ&Aは、代表権を理事長のみが有する場合は、所轄庁に特別代理人の選任の申立てをし、選任された特別代理人が法人を代表して契約する、としています。理事長以外に代表権を有する理事がいれば、その理事が法人を代表して契約します(制度。内閣府NPO法Q&A(2026年10月8日確認))。
もともと法律では、理事はすべて法人を代表します。ただし定款で代表権を制限できます(第16条)。千葉県の定款例には、理事長のみが法人の代表権を有する場合の書き方が載っていて、その注に「代表権を持つ者(理事長等)と法人が不動産賃貸など契約を締結する場合は、利益相反行為となるので注意が必要です」と書いています(制度。千葉県「特定非営利活動法人申請・届出の手引き」(2026年10月8日確認))。
代表権を理事長だけに絞った法人で、理事長の物件を借りるなら、特別代理人の手続きが要る、ということです。
場面ごとの早見表——特別代理人が要るか
| 場面 | 特別代理人 | 根拠 |
|---|---|---|
| 理事長の持ち家・アパートを、法人が家賃を払って借りる(代表権は理事長だけ) | 要る。選任された特別代理人が法人を代表して契約 | 内閣府Q&A 2-3-12・熊本市・さいたま市の例 |
| 同じ場面で、定款上ほかにも代表権を持つ理事がいる | その理事が法人を代表して契約 | 内閣府Q&A 2-3-12 |
| 理事長の土地を法人が無償で借りる | 熊本市は「選任がいらない場合の例」に挙げている。ただし契約相手から求められる場合あり | 熊本市 |
| 法人と理事長が共有する建物で、持分を超えて使う分の家賃を払う | 定款に「理事会の承認」と「他の理事が職務を代行する」旨を定めれば、特別代理人を選任せずに対応可能とされる | 内閣府Q&A 2-3-13 |
| 理事長が代表取締役の会社と、法人が契約する | 利益相反の例として挙げられている | 熊本市・さいたま市 |
(制度。内閣府NPO法Q&A、熊本市「特別代理人の選任について」、さいたま市「【NPO法人】特別代理人の選任申請について」(2026年10月8日確認))
「無償なら要らない」は、熊本市が示している例です。どこまでが無償か、使用貸借の中身をどう書くかは、所轄庁ごとに事前に確認してください(要確認)。
— この段階でご相談いただく理由 —
設立前なら、定款で代表権を誰に持たせるか、事務所をどこに置くかを、まとめて設計できます。設立後に気づくと、定款変更や特別代理人の手続きが後から乗ってきます。
特別代理人の手続きの順番——所轄庁で「どの会議で決めるか」が違います
ひとことで言うと、法人の会議で候補者を決める→所轄庁に請求する→所轄庁が選任する→特別代理人が契約する、の順です。ただ、どの会議で決めるかは所轄庁の案内で違います。
| 順番 | さいたま市の案内 | 熊本市の案内 |
|---|---|---|
| ①法人で決める | 総会における特別代理人候補者の選任 | 利益相反行為を含む契約の締結、特別代理人候補者の選任、所轄庁への請求を、理事会などで議決。理事長・親族・利害関係人は議決に参加できない |
| ②書類をそろえる | 特別代理人選任申請書/候補者を選出した社員総会の議事録の謄本/就任承諾書及び誓約書の謄本/候補者の住民票/契約書案等 | 特別代理人選任請求書/議事録/就任承諾書(議決日以後の日付。理事以外なら住民票の写し)/契約書(案) |
| ③所轄庁が選任 | 特別代理人の選任(所轄庁が行います) | 選任通知 |
| ④契約 | 契約行為 | 特別代理人が法人を代表して契約 |
(制度。さいたま市・熊本市の各案内(2026年10月8日確認))
熊本市は、理事長の配偶者や親族、利害関係人、監事は特別代理人になれない、としています。候補者は、理事長と利害関係の無い人から選ぶことになります。
千葉県内の法人の所轄庁は、千葉市にのみ事務所を置く法人は千葉市長、それ以外は千葉県知事です(千葉県の手引き(2026年10月8日確認))。千葉県の申請・届出の手引きには、本記事の確認範囲では特別代理人の申請様式が見当たりませんでした。千葉県内の法人は、議決の機関と様式を、県民生活課(千葉市内のみの法人は千葉市)に先に確認してください(要確認)。
財務の目で見ると
家賃を払う相手が理事長だと、決算書を見た人は「その家賃は妥当か」を必ず見ます。特別代理人の手続きは面倒に見えますが、家賃の決め方を第三者が確認した記録が残る、という意味では法人を守る手続きでもあります。近くの相場の資料を議事録に添えておくと説明しやすくなります(当事務所の見解)。
作った当事者の目で見ると
自分でNPO法人を設立したとき、定款は所轄庁から細かな字句の修正を何度も求められました。それくらい条文は見られます。代表権の条文は定款例のまま書きがちですが、事務所の場所を決めるときに「その場所の持ち主は誰か」「家賃は払うのか」まで話しておけば、あとで利益相反に気づいて慌てることは減ります(千葉県の設立総会議事録の作成例でも、主たる事務所の所在地は議案の1つです)。
設立前なら、定款の書き方で先に手を打てます
結論として、設立前の方は、定款で次の2つを検討しておくと、あとが楽になります。
1つ目は、代表権です。理事長のほかに副理事長などにも代表権を持たせておけば、理事長の物件を借りるときは、その理事が法人を代表して契約できます(内閣府Q&A 2-3-12)。代表権の制限と登記の関係は理事の代表権を理事長だけにする定款と登記にまとめています。
2つ目は、利益相反のときの理事会承認と職務代行の定めです。内閣府のQ&Aは、共有建物の事例で、定款に理事会の承認が必要と定めていれば、承認を得て他の理事に職務を代行させることは可能と考えます、としています。承認の理事会では、当該理事に議決権はありません(内閣府Q&A 2-3-13)。ただ、これは共有建物の事例への回答です。理事長が単独で所有する物件にも同じ扱いができるかは、所轄庁に確認してください(要確認)。
設立後に定款を変えるなら、認証が要る変更か届出で足りる変更かを確かめる必要があります。定款変更の手続きは定款変更の認証と届出を参考にしてください。
今日やること——3つだけ
まず、定款を開いて「誰が法人を代表するか」の条文を確認してください。で、借りたい物件の持ち主が理事長本人か、理事長が代表の会社か、家賃を払うか無償かを書き出します。最後に、所轄庁に「この形で借りたいが、特別代理人の手続きは要るか、どの会議で決めるか」を電話で聞きます。この3つで、契約書にサインする前の抜けが埋まります。
理事を引き受ける側の注意点はNPO法人の理事を頼まれたら確認する5つにまとめています。
参考にした一次資料
- 特定非営利活動促進法(第16条・第17条の4。e-Gov法令検索)(2026年10月8日確認)
- 内閣府NPOホームページ「NPO法Q&A 役員等」(2-3-11〜2-3-13)(2026年10月8日確認)
- 千葉県「特定非営利活動法人申請・届出の手引き」(定款例 第15条の注・所轄庁)(2026年10月8日確認)
- 熊本市「特別代理人の選任について」(2026年10月8日確認)
- さいたま市「【NPO法人】特別代理人の選任申請について」(2026年10月8日確認)
※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・要領および指定権者の案内をご確認ください。
📍 千葉県ローカルメモ|千葉県内の所轄庁
千葉市にのみ事務所を置く法人は千葉市長、それ以外で千葉県内に主たる事務所を置く法人は千葉県知事が所轄庁です。特別代理人の申請様式は、千葉県の申請・届出の手引きでは本記事の確認範囲で見当たらなかったため、所轄庁に確認してください(2026年10月8日確認)。
※2026年10月8日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。
💬 目加多のひとこと
「理事長の部屋を借りるだけ」が、法律では利益相反の典型例です。契約書にサインする前に、定款の代表権の条文を1回だけ開いてみてください。

執筆・監修
目加多 龍めかた りょう
行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)
行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/2級FP技能士(AFP)。ブリヂストン系列企業とNEC系列企業で人事・労務の現場15年を経て2026年に独立。個人向けキャリア相談はココナラで約70件・全件★5.0(プラチナランク・2026年7月時点)。障害福祉・障害児支援の指定申請を軸に、資金調達から人材の定着まで、中小企業の「手続き」「資金」「人材」を一体で支援しています。
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