— 30秒でわかる結論 —
Q. NPO法人の理事長以外の理事にも、法人を代表する権限がありますか?
法律上は、理事全員が法人の業務について法人を代表します。「理事長だけ」にするには、定款で代表権を制限し(例:「理事長以外の理事は、法人の業務について、この法人を代表しない」)、その定めにもとづいて理事長のみを理事として登記します。平成23年改正後の法務省の取扱いでは、理事長のみを登記し、その他の理事は登記を要しないとされています。定款に書いただけでは、登記の後でなければ第三者に対抗できません(NPO法第7条、法務省の案内・通達、2026年10月4日確認)。
こんな方に読んでいただきたい記事です
- NPO法人の設立準備で、定款の「職務」の条をどう書くか迷っている方
- 登記事項証明書に理事全員が載っていて、理事長だけにしたい法人
- 理事を引き受けてくれた知人・親族の責任範囲を整理したい方
NPO法人の理事は、法律上は全員が法人を代表します。「理事長だけ」にしたいなら、定款で制限して、その制限を登記に反映させます
ひとことで言うと、「理事長を決めたから理事長だけが代表」ではありません。定款に「理事長以外の理事は代表しない」と書き、その内容どおりに登記して、はじめて外に向かって「理事長だけ」になります。
法務省の説明では、NPO法人の理事は「特定非営利活動法人の全ての業務について特定非営利活動法人を代表し、定款をもってその代表権を制限することができる」とされています。ただし以前は「理事の代表権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない」ため、法人の内部で理事長のみが代表する定めがあっても「理事全員を『代表権を有する者』として登記しなければならない」とされていました(制度。法務省「特定非営利活動法人(代表権を有する理事以外の理事の代表権喪失の登記)」(2026年10月4日確認))。
これを変えたのが、平成23年法律第70号によるNPO法の改正です。法務省の通達は、「定款をもって、理事の互選等により特定の理事を理事長に選定し、当該理事長のみが法人を代表することとしている場合には、当該特定の理事のみを『理事』の資格で登記し、その他の理事は、登記することを要しない」としています(制度。法務省通達(2026年10月4日確認))。
人事15年の目で見ると
代表権の話は「誰が契約書にハンコを押せるか」の話です。理事が3人全員代表のままだと、理事の1人が善意の相手と結んだ契約は法人の契約になります。小さな法人ほど、理事は名前を貸してくれた知人や親族で、業務の全体を知らないことが多い。定款で理事長以外の代表権を外し、登記まで合わせておくのは、理事を守る仕組みでもあります。
定款にどう書くか(所轄庁の定款例)
宇都宮市が公開しているNPO法改正にともなう定款の新旧対照では、職務の条に「理事長以外の理事は、法人の業務について、この法人を代表しない。」という項を追加する形が示されています(制度。宇都宮市「定款の新旧対照(法改正)」(2026年10月4日確認))。多くの所轄庁の定款例も同じ構造で、「理事長はこの法人を代表し、その業務を総理する」の次に、この1項を置きます。
| 定款の書き方 | 外から見た代表権 | 登記 |
|---|---|---|
| 「理事長はこの法人を代表する」だけ | 理事全員が代表できる(制限がない) | 理事全員を代表権を有する者として登記 |
| 「理事長以外の理事は、法人の業務について、この法人を代表しない」を追加 | 理事長だけが代表 | 理事長のみを「理事」として登記(他の理事は登記不要) |
登記はどうなるか(法務省の取扱い)
NPO法第7条は「特定非営利活動法人は、政令で定めるところにより、登記しなければならない」「登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもって第三者に対抗することができない」と定めています(制度。特定非営利活動促進法第7条(2026年10月4日確認))。代表権の制限も、登記して初めて第三者に主張できます。
改正前から理事全員を登記していた法人は、「代表権を有する理事(理事長等)以外の代表権を有しない理事全員について、その氏名、住所」の代表権喪失の登記をします。法務省の案内では、この登記の申請書には「①定款、②定款の規定に基づき理事長を選定したことを証する書面(選定当時作成された理事の互選書等)及び③理事長の選定当時の就任承諾書」を添付し、「代表権を有する例えば『理事長』に選定されている理事については、変更の登記をする必要はありません」とされています。さらに「この変更の登記は、特定非営利活動法人が他の登記の申請をする場合には、当該登記の申請と同時にしなければならない」(施行令附則第3条第2項)とされています(制度。法務省の案内(2026年10月4日確認))。
📗 関連:役員変更の届出と登記——理事の重任や交代の登記をするときは、代表権の制限が定款と登記で一致しているかも一緒に見ます。
— この段階でご相談いただく理由 —
設立時の定款で「理事長以外は代表しない」を入れておくと、設立登記の時点で理事長だけを登記できます。あとから直すと、定款変更と代表権喪失の登記の2つが要ります。
設立前・設立後に確認すること
まず、定款の「職務」の条に「理事長以外の理事は、法人の業務について、この法人を代表しない」があるか。で、登記事項証明書に載っている「理事」が理事長だけか、それとも全員か。あと、理事長を選ぶ手続(理事の互選など)が定款どおりに記録に残っているか。この3つが揃っていれば、「理事長だけが代表」は外に向かっても成立しています。
登記は司法書士の業務です。当事務所は定款の設計と所轄庁への手続を担当し、登記は提携の司法書士と進めます。
参考にした一次資料
- 法務省「特定非営利活動法人(代表権を有する理事以外の理事の代表権喪失の登記)」(改正前の取扱い、添付書面①②③、他の登記と同時)(2026年10月4日確認)
- 法務省通達(理事長のみが法人を代表する定款の定めがある場合、当該特定の理事のみを「理事」の資格で登記)(2026年10月4日確認)
- 宇都宮市「NPO法改正にともなう定款の新旧対照」(「理事長以外の理事は、法人の業務について、この法人を代表しない。」)(2026年10月4日確認)
- 特定非営利活動促進法 第7条(登記、登記後でなければ第三者に対抗できない)(和歌山県の法令集で確認)(2026年10月4日確認)
※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・要領および指定権者の案内をご確認ください。
📍 千葉県ローカルメモ|定款例と登記
千葉県内の所轄庁(千葉県・千葉市)の定款例にも「理事長以外の理事は代表しない」の形があります。当事務所は定款の設計と認証手続を全国オンラインで支援し、登記は提携の司法書士と進めます(2026年10月4日確認)。
※2026年10月4日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。
💬 目加多のひとこと
理事を頼んだ知人に「ハンコを押す場面はありません」と言えるかどうか。定款と登記が揃っていれば、それが言えます。頼むときの一言が変わります。

執筆・監修
目加多 龍めかた りょう
行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)
行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/2級FP技能士(AFP)。ブリヂストン系列企業とNEC系列企業で人事・労務の現場15年を経て2026年に独立。個人向けキャリア相談はココナラで約70件・全件★5.0(プラチナランク・2026年7月時点)。障害福祉・障害児支援の指定申請を軸に、資金調達から人材の定着まで、中小企業の「手続き」「資金」「人材」を一体で支援しています。
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