— 30秒でわかる結論 —
Q. 銀行から『償還年数が長い』と言われました。どういう意味ですか?
「いまの利益ペースだと、借入を返し終えるのに時間がかかりすぎる」という意味です。債務償還年数は、ざっくり言えば(借入金−事業に常に必要な運転資金)÷(税引後利益+減価償却費)で計算する指標で、10年以内がひとつの目安とされることが多いです(算式・基準は金融機関ごとに異なります)。長いと言われたら、①借入を圧縮する、②利益を増やす、③運転資金部分の説明で実態を正しく伝える——の3方向で改善の道筋を示すのが基本の対応です。
融資のご支援をしていると、金融機関の担当者との会話に必ずと言っていいほど出てくる言葉があります。それが債務償還年数。決算書を渡して数分で計算できてしまう、それでいて融資判断への影響がとても大きい指標です。仕組みを知っておくと、銀行との対話が驚くほど噛み合うようになります。
何を測る指標か——「返済力の体力測定」
債務償還年数が答えるのは、シンプルな問いです。「この会社は、いまの稼ぐ力で、借金を何年で返し切れるか」。計算のイメージは次のとおりです。
債務償還年数 =(有利子負債 − 正常運転資金)÷(税引後利益 + 減価償却費)
分子は「実質的に利益から返さなければならない借金」。有利子負債から正常運転資金(売掛金+在庫−買掛金など、事業を回すために常に立て替えている部分)を引くのは、運転資金見合いの借入は事業を畳めば回収できる性質のもので、利益で返すべき借金とは分けて考えるためです。分母は「返済の原資になる年間キャッシュ」。利益に減価償却費を足し戻すのは、償却費がお金の出ていかない費用だからです。10年以内がひとつの目安とされることが多いものの、算式の細部や基準は金融機関・業種によって異なります(不動産賃貸業などはより長い年数で見るのが通例)。あくまで対話の出発点としての目安と捉えてください。
自社で計算してみる——決算書の3か所を見るだけ
貸借対照表から短期借入金・長期借入金(+社債等)を拾って有利子負債を出し、売掛金・受取手形・在庫の合計から買掛金・支払手形を引いて正常運転資金を出す。損益計算書の税引後利益に、販管費・製造原価の中の減価償却費を足す。これだけです。決算書の読み方に慣れていない方でも、この3か所なら15分で計算できるのではないでしょうか。まずは直近3期分を並べて、年数が縮んでいるのか伸びているのか、トレンドを見るのがおすすめです。
縮め方①——分子を減らす
使っていない借入枠の返済、遊休資産の売却による繰上返済、複数借入の一本化による総額圧縮。借入そのものを減らせば分子は直接減ります。ただし手元資金を減らしすぎるのは本末転倒です。資金繰りの安全余裕(月商の何か月分の手元資金を残すか)を先に決めてから、返済に回せる余力を判断してください。
縮め方②——分母を増やす
王道はやはり利益改善です。値決めの見直し、粗利率の低い取引の整理、固定費の点検。分母が2倍になれば年数は半分になる——算式上、利益改善は償還年数に最も強く効きます。もうひとつ見落とされがちなのが役員報酬とのバランスで、報酬の設定次第で会社に残る利益は大きく変わります。金融機関は役員報酬込みの実質的な返済力も見ているので、単純な減額よりも「会社と個人のトータルでどう説明するか」の設計が大切です。
縮め方③——正常運転資金を正しく説明する
意外な盲点が、分子から引く正常運転資金の説明です。季節変動で在庫が膨らむ業種、入金サイトが長い業種では、決算日時点の数字だけで機械的に計算すると実態より厳しい年数が出ることがあります。月次の推移資料で「常時必要な運転資金はこの水準」と自分から示せる会社は、同じ決算書でも評価が変わり得ます。ここは月次試算表の整備がそのまま武器になる領域です。
長くなってしまったときの説明の作法
大型の設備投資をした直後は、借入が一気に増えて償還年数が伸びるのが普通です。問題は伸びたこと自体ではなく、説明がないこと。「投資により今期は15年相当だが、稼働後の増産で3年後に8年まで戻る計画」と、数字の根拠つきで自分から語れる会社に対して、金融機関は伴走しやすくなります。決算がまとまったら、聞かれる前に説明に行く——銀行交渉の基本は、この指標でも同じです。当事務所の融資・金融機関交渉サポートでは、償還年数を含む決算分析と説明資料づくりから伴走しています。
💬 目加多のひとこと
企業で予算と決算を回していた頃、数字は「評価されるもの」ではなく「説明するもの」だと学びました。償還年数が長いこと自体で会社の価値は決まりません。なぜ長いのか、いつどう戻すのか。それを自分の言葉で語れる社長は、銀行からも、そして社員からも信頼されると感じています。

執筆・監修
目加多 龍めかた りょう
行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)
行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/2級FP技能士(AFP)。ブリヂストン系列企業とNEC系列企業で人事・労務の現場15年を経て2026年に独立。個人向けキャリア相談はココナラで約70件・全件★5.0(プラチナランク・2026年7月時点)。障害福祉・障害児支援の指定申請を軸に、資金調達から人材の定着まで、中小企業の「手続き」「資金」「人材」を一体で支援しています。
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