— 30秒でわかる結論 —
Q. NPO法人を設立して介護・障害福祉の事業を始めるには、何をどの順番で進めればいいですか?
まず法人格の選択(NPO法人か一般社団法人か)を決め、NPO法人なら設立準備(社員10人以上・役員・定款・趣旨書・事業計画・予算)→設立総会→所轄庁への設立認証申請→縦覧2週間→縦覧経過後2か月以内の認証決定→認証通知から2週間以内の設立登記→所轄庁への成立届出、という流れです。所轄庁は主たる事務所が一つの指定都市の区域内のみなら市長、それ以外は都道府県知事です。障害福祉・障害児支援の指定申請は法人成立後にしか出せず、しかも定款の目的に「障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス事業」など法的根拠が明記されていないと受理しない指定権者があるため、設立時に指定申請から逆算して定款を作ることが最重要です。目的の変更は所轄庁の認証が必要で、再び縦覧と審査が発生します。設立後は毎事業年度、事業報告書等の提出義務が続きます。
こんな方に読んでいただきたい記事です
- 地域の子どもや障害のある方のために、NPO法人で放課後等デイサービスやグループホーム、就労支援を始めたい方
- NPO法人と一般社団法人のどちらにするか迷っている方
- NPO法人を設立したが、指定申請で定款の目的を指摘された方
📗 関連の深掘り——役員の親族制限(5人以下は親族不可・6人以上は各1人+3分の1以下)と社員10人の集め方、夫婦・親子で設立する場合の役員構成はこちらの記事で扱っています。
📗 関連の深掘り——設立認証の申請書類10点の要点と書く順番、所轄庁で差し戻される3つのつまずき(事業名のずれ・趣旨書の羅列・役員要件の後追い)はこちらの記事で扱っています。
NPO法人で福祉事業を始める人が、最初にぶつかる壁
「地域の子どもたちの居場所を作りたい」「障害のある方の働く場を作りたい」——こうした動機で法人格を考えるとき、NPO法人(特定非営利活動法人)は自然な選択肢です。ただ、NPO法人には株式会社にはない特徴があります。所轄庁の「認証」を受けてからでないと登記できないこと、そして設立後も毎年、所轄庁への報告義務が続くことです。
この2つを知らずに動くと、「法人ができる前に物件の家賃が発生した」「定款の目的に法的根拠が無くて指定申請が受理されない」「1年目の事業報告を出し忘れた」という壁に順にぶつかります。この記事は、その壁を先に見せるためのものです。
設立認証の流れ——申請から法人成立までおおむね3か月
| 工程 | 内容 | 期間 |
|---|---|---|
| 設立準備 | 社員10人以上・役員(理事3人以上、監事1人以上)・活動分野・定款・設立趣旨書・事業計画書・活動予算書 | 1〜2か月(準備次第) |
| 設立総会 | 定款・役員・事業計画・予算を決議し、議事録を残す | — |
| 設立認証申請 | 所轄庁の条例で定める書類を添えて申請 | 受理日から |
| 縦覧 | 定款・役員名簿(住所除く)・趣旨書・事業計画・予算を公衆の縦覧に。補正は縦覧開始後1週間以内の軽微なものに限る | 2週間 |
| 審査・認証 | 所轄庁が認証/不認証を決定 | 縦覧経過後2か月以内 |
| 設立登記 | 認証通知から2週間以内に法務局へ(司法書士と連携)。6か月登記しないと認証取消しの対象 | 2週間以内 |
| 成立の届出 | 登記事項証明書と財産目録を添えて所轄庁へ | 遅滞なく |
法定の期間だけで「縦覧2週間+審査2か月以内+登記2週間以内」。これに準備期間が加わるので、開業希望日の5〜6か月前には動き始めておく必要があります。障害福祉・障害児支援の指定申請は法人成立後にしか出せないので、指定申請の締切(3か月前ルール)とあわせると、逆算の起点はさらに前になります。
所轄庁は「主たる事務所がどこか」で決まる
所轄庁は、原則として主たる事務所の所在地の都道府県知事ですが、事務所が一つの指定都市の区域内のみに所在する場合はその市長です。千葉県内では、千葉市内だけに事務所がある法人は千葉市、松戸市・船橋市・柏市などは千葉県が原則です。ここは介護・障害福祉の指定権者(千葉市・船橋市・柏市=市指定)とは区分が違うので、混同しないでください。
なお、都道府県が条例による事務処理特例で市町村に事務を移譲している場合があります(内閣府は令和8年4月1日時点の移譲状況を公表しています)。申請前に、所轄庁がどこかを確認する一手間が、書類の出し直しを防ぎます。
いちばん多い失敗——定款の「目的」と「事業」
NPO法人の定款には、特定非営利活動の分野(20分野から選ぶ)と、行う事業を書きます。ここで福祉事業を予定している法人が落とすのが、法的根拠の明記です。
- ×「障害のある方の自立を支援する事業」
- ○「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業」「児童福祉法に基づく障害児通所支援事業」「介護保険法に基づく居宅サービス事業」
千葉県の指定申請の案内は、定款の目的に法的根拠が明記され、定款変更が完了していないと指定申請を受理しない旨を明記しています。NPO法人の場合、定款変更のうち目的・事業の変更は所轄庁の認証が必要で、再び縦覧2週間と審査が発生します。つまり、設立時に書き損じると指定申請が2〜3か月遅れるということです。設立の段階で、指定申請から逆算して定款を作ってください(定款の目的はどう書くか)。
設立後、毎年続く義務
| 義務 | 内容 |
|---|---|
| 事業報告書等の提出 | 毎事業年度初めの3か月以内に、事業報告書・活動計算書・貸借対照表・財産目録・年間役員名簿・社員のうち10人以上の者の名簿等を所轄庁に提出。所轄庁が公開する |
| 役員の変更等の届出 | 役員の氏名・住所の変更、新任・退任があったときは所轄庁へ届出(登記事項の変更は登記も) |
| 定款変更 | 目的・事業などの変更は所轄庁の認証が必要(縦覧・審査)。軽微な変更は届出 |
| 登記事項の変更 | 資産の総額など、毎年の変更登記が必要な事項がある(司法書士と連携) |
この中で最も抜けやすいのが事業報告書等の提出です。提出を怠ると所轄庁による認証取消しの対象になり得ます。介護・障害福祉の事業所は、これに加えて指定権者への変更届・体制届・処遇改善の報告があるので、法人としての義務と事業所としての義務を1枚のカレンダーにしておくことを強く勧めます(業務管理体制の届出も法人単位の義務です)。
NPO法人が向く場合、向かない場合
向くのは、地域の理解と協力を得ながら進めたい活動、公的な補助や寄付を受けやすくしたい活動、そして「営利ではない」と示すことが利用者や保護者の信頼につながる分野です。向かないのは、スピードを最優先したい場合(一般社団法人なら登記だけで設立できます)、意思決定を少人数で素早く行いたい場合、利益を出資者に分配したい場合です。障害福祉・障害児支援の指定申請はどの法人格でも可能なので、法人格は「事業」ではなく「運営の仕方」で選んでください(法人格の現実的な選び方)。
📘 児童福祉の分野(里親支援センターなど)でNPO法人を作る場合の定款の設計は「里親支援センターの運営を目指してNPO法人を設立する」へ。
当事務所の関わり方
当事務所は、NPO法人の設立認証申請の書類作成から、設立後の年次報告・役員変更、そして障害福祉・障害児支援の指定申請までをひとつの窓口でお受けしています。設立サポートは税込200,000円(設立登記は提携司法書士が担当・報酬別途)で、認証通知から2週間以内という登記期限に間に合うよう段取りします。「NPOと一般社団法人のどちらがいいか」という段階からどうぞ。NPO法人の設立・運営支援をご覧ください。
参考にした一次資料
- 内閣府NPOホームページ「認証制度について」(設立認証の申請書類、縦覧2週間、縦覧経過後2か月以内の決定、登記2週間以内)
- 内閣府NPOホームページ「設立の認証・手続き等」(補正は縦覧開始後1週間以内、6か月未登記で認証取消し)
- 内閣府NPOホームページ「所轄庁一覧」(都道府県知事・指定都市の長)
- 千葉県「指定申請(障害福祉サービス事業者等)」(定款の目的への法的根拠の明記・定款変更未了は不受理)
※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・要領および指定権者の案内をご確認ください。
📍 千葉県ローカルメモ|千葉県内の所轄庁
主たる事務所が千葉市内のみにあるNPO法人は千葉市、松戸市・船橋市・柏市・流山市・市川市などは千葉県が所轄庁の原則です(条例による事務処理特例の有無は要確認)。一方、介護・障害福祉の指定権者は千葉市・船橋市・柏市が市、松戸・流山・市川などが県です。船橋市・柏市のNPO法人は「所轄庁は県、指定権者は市」という組み合わせになり得るので、それぞれの窓口を分けて管理してください。
※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。
💬 目加多のひとこと
私自身もNPO法人の設立準備を進めています。手続きを自分で通してみて感じるのは、認証までの時間より、社員10人を集め、活動の趣旨を文章にする過程のほうが本質だということです。その過程で固まった言葉は、そのまま指定申請の事業計画にも、職員募集の文章にもなります。

執筆・監修
目加多 龍めかた りょう
行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)
行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/2級FP技能士(AFP)。ブリヂストン系列企業とNEC系列企業で人事・労務の現場15年を経て2026年に独立。個人向けキャリア相談はココナラで約70件・全件★5.0(プラチナランク・2026年7月時点)。障害福祉・障害児支援の指定申請を軸に、資金調達から人材の定着まで、中小企業の「手続き」「資金」「人材」を一体で支援しています。
プロフィールを見る →