— 30秒でわかる結論 —

Q. 東京都の「中東情勢による原材料価格高騰に伴う経営基盤安定化緊急対策事業(第2回)」はどんな助成金ですか?

東京都中小企業振興公社の助成金で、原材料費の縮減や価格転嫁等に向けた取組に要する経費を、助成率4/5以内・限度額2,000万円(千円未満切捨て)で助成します。申請受付は令和8年9月1日14時から9月30日16時まで、電子申請システムjGrants(GビズIDプライムアカウントが必要)。対象は都内で事業を行う中小企業者・個人事業主で、直近決算期の営業利益率が前期より減少している、次期の減少を見込んでいる、直近で営業損失を計上している、のいずれかに該当することが要件です。助成対象期間は交付決定日(令和8年12月25日予定)から1年間で、交付決定前の発注・契約は対象外。助成金は精算払い(後払い)のため、実施段階の資金は自社で用意する必要があります。1事業者につき交付決定は1度のみで、不採択の場合は11月予定の第3回に再申請できます。

こんな方に読んでいただきたい記事です

  • 原材料や燃料の高騰で利益率が下がっている、東京都内に本店のある中小企業・個人事業主の方
  • 歩留まり改善・不良率低減・在庫ロス削減の設備やシステムの導入を検討している製造・建設・印刷業などの方
  • 千葉県の事業者で、都内に本店があり都内外の事業所で取り組みたい方

どんな助成金か——「設備を買う」ではなく「原材料費を減らす」

東京都中小企業振興公社の「令和8年度 中東情勢による原材料価格高騰に伴う経営基盤安定化緊急対策事業(第2回)」の募集が、2026年9月1日14時から9月30日16時までで始まりました。助成率4/5、限度額2,000万円という規模の大きい助成金です。

特徴は、対象が「原材料費の縮減や価格転嫁等に向けた取組」に限られていることです。募集要項の取組例には、建設現場での塗料の使用量を減らす機器の導入、不良品を早期に発見して歩留まりを向上させる検査装置の導入、代替素材を活用した新商品をPRするための展示会出展、インクの在庫ロスを削減する発注管理システムの構築が挙がっています。逆に、単なる老朽設備の維持更新、法令改正への対応など義務的な取組、単なる原材料の代替のみ、申請者の事業内容と関連の薄い取組は対象外と明記されています。「補助金が出るから設備を買う」では通りません。

事業概要(募集要項より)

項目内容
対象者東京都内で事業を行う中小企業者(個人事業主を含む)。大企業が実質的に経営に参画していないこと
助成率助成対象経費の4/5以内
助成限度額2,000万円(千円未満切捨て)
助成対象期間交付決定日から1年間。この期間内に契約・実施・支払が完了する経費が対象
申請受付期間令和8年9月1日(火)14時 〜 9月30日(水)16時
申請方法電子申請システム jGrants。GビズID(プライムアカウント)が必要
書類審査令和8年10月〜
面接審査令和8年11月下旬〜12月上旬(助成金交付申請額100万円以下は書類審査のみ
交付決定令和8年12月25日(金)予定(100万円以下は11月30日(月)予定)

注意点として、1事業者につき交付決定は1度のみです。不採択の場合は11月に予定される第3回募集で再申請ができます(第3回の申請受付は令和8年11月2日〜11月30日、交付決定は令和9年2月下旬予定と公表されています)。また第1回募集で申請中の事業者は、第2回に申請できません。

申請要件——「利益率が下がっている」ことが入口

要件は7つありますが、多くの事業者にとって分かれ目になるのは(3)の業績要件です。申請受付開始日時点で、次のいずれかに該当する必要があります。

  • 直近決算期の営業利益率が、前期決算期と比較して減少している
  • 次期決算期の営業利益率が、直近決算期と比較して減少することを見込んでいる
  • 直近決算期において営業損失を計上している

2つ目の「見込み」で申請する場合は、直近決算期末の翌月から申請月の前月末までの月次試算表を提出し、その平均値を12か月に換算して次期の売上高・営業利益を算出します。月次試算表が作れていない事業者は、この時点で詰まります。試算表を毎月作る会社は融資に強いと書いたことがありますが、補助金でも同じでした。

実施場所は都内が原則ですが、神奈川・埼玉・千葉・群馬・栃木・茨城・山梨に所在する場所での実施も、都内に登記簿上の本店があれば可とされています。千葉県の事業者でも、東京都内に本店があれば対象になり得ます。

助成対象経費——幅は広いが、除外も細かい

経費区分主な対象対象外の例
原材料・副資材費取組に直接使用し消費する原材料・副資材・部品等販売用の製品・材料費、未使用残存品、単なる原材料の代替のみ
機械装置・工具器具費製造機械、計測・測定・検査機器、金型、治具等税抜5万円未満、中古品、自社以外に設置するもの、基礎工事
機器・システム改良費既存設備・ソフトの改良(歩留まり向上、省エネ、データ連携等)自社所有でない機器、自社で改良する経費、過剰スペック
委託・外注費自社でできない工程の外部委託(開発・試験・分析等)技術要素を伴わないデザイン・翻訳、販売用商品の製作
設備等導入費設備・備品の購入と設置工事(運搬・据付・撤去等を含む)税抜5万円未満、設計費、人件費・諸手当、保守費
システム等導入費システム構築・改修、ソフト購入、クラウド利用、ハード購入等税抜5万円未満、自社で内製できる場合、要件定義のコンサル費、パソコン
専門家指導費 ※単独申請不可外部専門家の指導・助言(謝金・交通費、外部研修受講料)顧問契約先からの指導、申請手続きへの助言・書類作成代行、宿泊費、タクシー代
販路開拓経費(上限500万円)自社Webサイト制作・改修、印刷物、PR動画、広告、展示会出展、資材、輸送、通訳、ECサイト初期登録料ドメイン・サーバ費、素材費、ノベルティ、キャンセル料、共同出展の按分不能
その他経費(上限100万円)※単独申請不可他の区分に属さないもの(公社が認めるものに限る)税抜5万円未満、直接必要でない経費

実務で特に効くのは3点です。①専門家指導費とその他経費は単独申請できません(これらだけの申請は不可)。②専門家指導費の対象外に「申請手続きへの助言、書類作成代行」が明記されています。つまり、この助成金の申請サポート報酬そのものは助成対象になりません。③販路開拓経費は上限500万円で、Webサイトは自社ドメイン・自社運営のものに限られ、SNSやショッピングモール内のページは対象外です。

いちばんの落とし穴は「交付決定前の発注」と「後払い」

募集要項が助成対象外の頻出例として挙げているのは次の3つです。

  • 交付決定を受ける前に、発注・契約等をした場合——交付決定は12月25日予定です。それより前に契約すると対象外になります(交付決定前着手の落とし穴)。
  • 納品日が助成対象期間を超えた場合——発注が遅れると、期間内に納品が間に合いません。
  • クレジットカードの引き落とし日が助成対象期間を超えた場合——カード利用の翌月引き落としで期間をはみ出す事故が多いと明記されています。

そして、助成金は精算払い(後払い)です。募集要項にも「助成事業の実施の段階では、助成事業者自身で資金を用意する必要があります」と書かれています。2,000万円の助成でも、まず2,500万円を自分で払う必要があるということです。立替資金の設計は採択より先に考えてください(入金は「ずっと後」)。

いま(9月)から動くなら、この順番

  • 今週:GビズIDプライムアカウントの有無を確認。無ければ即申請(国の審査に時間がかかります)。同時に、直近2期の決算書で営業利益率の推移を確認し、業績要件に当たるかを判定。
  • 9月上旬:取組の骨子を決める。「原材料費がどう減るか」「価格転嫁がどう進むか」を数字で言えるかが分かれ目です。見積は税抜30万円以上で必須、税抜100万円以上は2社以上の相見積
  • 9月中旬:申請書と添付書類(履歴事項全部証明書は発行後3か月以内、納税証明書、決算書、必要なら月次試算表)を揃える。
  • 9月下旬:jGrantsで申請。締切は9月30日16時。差戻しの可能性を考え、数日前の提出を。
  • 11月下旬〜12月上旬:面接審査(100万円超の場合)。出席は代表者と役員・従業員で最大2名、顧問やコンサルの同席・代理出席は不可。日程変更もできないため、この期間の予定を先に空けてください。
要確認:本記事は2026年9月1日時点の第2回募集要項にもとづく整理です。要件・対象経費・スケジュールは募集回ごとに変わる可能性があり、審査の可否は公社の判断です。申請前に必ず公社の公式ページで最新の募集要項を確認してください。第3回募集の詳細は公表時点の要項でご確認ください。当事務所は東京都内に本店を持つ事業者の申請サポートに対応しますが、申請の代理提出はできず(jGrantsの代理申請機能で作成はできますが、確認・提出は申請者自身が行います)、また申請手続きへの助言・書類作成代行の費用は本助成金の対象外です。

この助成金に向いている事業者・向いていない事業者

向いているのは、原材料や燃料の高騰で利益率が実際に下がっていて、かつ「どの工程で、どれだけ材料を無駄にしているか」を数字で説明できる事業者です。歩留まり、不良率、在庫ロス——ここに具体的な数値がある会社は強い。向いていないのは、老朽化した設備を入れ替えたいだけの場合や、取組と本業の関連が薄い場合です。募集要項がこれらを名指しで対象外にしています。

事業計画書の組み立て方は現状→課題→打ち手→効果を一本の線にする6ブロックにまとめました。この助成金でも、審査の視点は「効果性・必要性と緊急性・取組内容の妥当性・実現可能性」の4つと明記されており、構造は同じです。

参考にした一次資料

※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・要領および指定権者の案内をご確認ください。

📍 千葉県ローカルメモ|千葉県の事業者の方へ

本店が千葉県内にある場合、この助成金の対象にはなりません。千葉県には千葉県中小企業成長促進補助金などの制度があり、松戸市など市独自の補助金もあります。国の補助金(ものづくり・省力化投資・小規模持続化など)と合わせて、自社の投資に合うものを比較してください。なお同一テーマ・内容で国・都道府県・区市町村等から重複して助成を受けることはできません。

※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。

💬 目加多のひとこと

助成率4/5・上限2,000万円という数字はたしかに大きいのですが、募集要項を最後まで読むと、対象外の記述の細かさに驚きます。単なる老朽更新はダメ、単なる原材料の代替もダメ。つまり「原材料費をどう減らすか」を自社の言葉で語れる会社にだけ開かれた制度です。金額の大きさより、まずそこが語れるかを確かめてください。

行政書士 目加多龍

執筆・監修

目加多 龍めかた りょう

行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)

行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/2級FP技能士(AFP)。ブリヂストン系列企業とNEC系列企業で人事・労務の現場15年を経て2026年に独立。個人向けキャリア相談はココナラで約70件・全件★5.0(プラチナランク・2026年7月時点)。障害福祉・障害児支援の指定申請を軸に、資金調達から人材の定着まで、中小企業の「手続き」「資金」「人材」を一体で支援しています。

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