— 30秒でわかる結論 —
Q. NPO法人で奨学金のための「基金」を作りました。計算書類にはどの勘定科目で載せればよいですか?
奨学金のための基金を計算書類にどう書くか迷っている方へ。貸借対照表では「○○特定資産」、活動計算書では、受入の性質にもよりますが「受取寄附金」の細目として計上することが考えられる、とされています。使い道が決まった寄附で重要性が高いものは、指定正味財産に分けて表示するのが望ましい、とされています(内閣府NPO法Q&A 2-4-6、千葉市の手引き(2026年10月27日確認))。
この記事は制度の解説です。NPO法人の事業報告書の作成・提出のご依頼は、料金と流れを専用のページでご案内しています。
こんな方に読んでいただきたい記事です
- 奨学金の事業のために寄附を集めて「基金」を作り、決算書の書き方で手が止まっているNPO法人の会計担当の方
- 寄附者に使い道を約束した寄附を、ほかのお金と分けて見せたい理事・事務局の方
- これから基金を作るので、最初に決めておくことを知りたい方
ご相談いただくと、こう進みます
- 最初の30分の無料相談で、寄附の呼びかけ文と申込書を一緒に読み、基金がどちらの類型かを確かめます
- ご依頼後は、事業報告書・計算書類・注記の書き方をそろえ、所轄庁に出す書類を整えます。税務の判断は税理士と分担します
- その後は、毎年の決算で、特定資産と指定正味財産の金額がつながっているかを一緒に点検します
「奨学金のための基金を作った。計算書類にはどの科目で載せる?」と迷っている方へ。Q&Aは、貸借対照表では「○○特定資産」、活動計算書では「受取寄附金」の細目、としています
NPO法人で、奨学金の事業を始めるために寄附を集め、「基金」として取り分けた。いよいよ事業年度が終わり、活動計算書と貸借対照表を作る段になって、「基金」という科目を立ててよいのか、どこに書くのかで手が止まる。内閣府のQ&Aにも、ほぼそのままの質問が載っています。
「計算書類に「基金」を計上する場合、どのような勘定科目として取り扱えばよいですか。」答えはこうです。質問のケースの「基金」が、仮に奨学金事業を行う際の奨学資金としての位置付けのものとした場合、貸借対照表における「○○特定資産」に該当するものであると考えられます。活動計算書には、その受入の性質にもよりますが、「受取寄附金」の細目として計上することが考えられます(制度。内閣府NPOホームページ「NPO法Q&A 経理・会計」2-4-6(2026年10月27日確認))。
つまり、「基金」は科目の名前ではなく、資産の側では「奨学金特定資産」のように目的を書いた特定資産、受け入れた側では受取寄附金として表す、という整理です(当事務所の見解)。
特定資産とは——目的が決まっている資産を、ほかと分けて見せる科目
ひとことで言うと、特定資産とは、特定の目的のために持っている資産を、ほかの資産と分けて表示する科目です。千葉市の手引きは、「NPO 法人会計基準」において、特定の目的のための資産を有する場合には、特定資産として独立して表示することを求めており(同基準注解 13)、と説明しています(千葉市「特定非営利活動法人 申請・届出の手引き」(2026年10月27日確認))。具体例は、①寄附者により使途等が制約されている資産、②NPO 法人自ら特定資産と指定した資産の2つです(同)。
貸借対照表の科目例でも、○○特定資産は、目的が特定されている資産で固定資産に属するもの。目的を明示する、とされています(同 貸借対照表の科目例)。「○○」に目的を書くのがポイントです(当事務所の見解)。
| 確かめること | 寄附者が使い道を決めた基金 | 法人が自分で取り分けた基金 |
|---|---|---|
| 特定資産の類型(手引き) | ①寄附者により使途等が制約されている資産 | ②NPO 法人自ら特定資産と指定した資産 |
| 貸借対照表の資産 | ○○特定資産(例:奨学金特定資産) | ○○特定資産(例:奨学金特定資産) |
| 受け入れたとき(活動計算書) | 受取寄附金の細目。重要性が高ければ指定正味財産増減の部に計上することが望ましい | 受取寄附金など、受け入れたときの性質による(取り分けただけでは収益は増えない) |
| 正味財産の部 | 重要性が高ければ指定正味財産と一般正味財産に区分して表示することが望ましい | 一般正味財産のまま |
| 注記 | 使途等が制約された寄附金等の内訳 | 特定資産の目的が分かる書き方(当事務所の見解) |
(制度。内閣府NPO法Q&A 2-4-6、千葉市の手引きの特定資産・活動計算書と貸借対照表の注・注記(2026年10月27日確認)。右の列の「取り分けただけでは収益は増えない」「特定資産の目的が分かる書き方」は当事務所の見解です)。どちらの列になるかは、寄附を集めたときの呼びかけ文や寄附の申込書に「奨学金に使う」と書いたかで分かれます(当事務所の見解)。
指定正味財産——使い道が決まった寄附は、正味財産も分けて見せる
結論として、使い道が決まった寄附で重要性が高いものは、活動計算書も貸借対照表も「指定」と「一般」に分けて表示するのが望ましい、とされています。千葉市の手引きは、重要性が高いと判断される使途等が制約された寄附金等を受け入れた場合は、「一般正味財産増減の部」と「指定正味財産増減の部」に区分して表示し、当該寄附金等を後者に計上することが望ましい、と書いています(千葉市の手引き 活動計算書の科目例の注(2026年10月27日確認))。
奨学金を給付して使い道の制約が外れたときは、「一般正味財産増減の部」に「受取寄附金(補助金・助成金)振替額」を、「指定正味財産増減の部」に「一般正味財産への振替額(△)」を勘定科目として記載する、とも書いています(同)。貸借対照表でも、「Ⅲ 正味財産の部」を「指定正味財産」と「一般正味財産」に区分して表示することが望ましい、としています(同 貸借対照表の注)。
| 書類 | 書く場所 | 書き方の例(当事務所の見解) |
|---|---|---|
| 貸借対照表 | 固定資産(投資その他の資産) | 奨学金特定資産 ×××円(目的を科目名に入れる) |
| 貸借対照表 | 正味財産の部 | 指定正味財産 ×××円/一般正味財産 ×××円 |
| 活動計算書 | 指定正味財産増減の部 | 受取寄附金(奨学金基金への寄附)×××円 |
| 活動計算書 | 一般正味財産増減の部 | 受取寄附金振替額 ×××円(給付して制約が外れた分) |
| 注記 | 使途等が制約された寄附金等の内訳 | 内容「奨学金事業」・期首残高・当期増加額・当期減少額・期末残高 |
(千葉市の手引き 作成例・科目例・注記の作成例(2026年10月27日確認)。科目名と行の並べ方は例で、法人の会計方針で決めます)。注記の作成例は、当法人の正味財産は×××円ですが、そのうち×××円は、下記のように使途が特定されています。したがって使途が制約されていない正味財産は×××円です、という文と、内容・期首残高・当期増加額・当期減少額・期末残高・備考の表を示しています(同 注記の作成例)。
— この段階でご相談いただく理由 —
寄附の呼びかけ文と申込書を一緒に読み、基金が「寄附者が使い道を決めたもの」か「法人が取り分けたもの」かを確かめます。事業報告書と計算書類の書き方をそろえます。税務の判断は税理士につなぎます。
なぜ分けて書くのか——第27条の「真実な内容を明瞭に」
ひとことで言うと、法律が、計算書類は実績と財政状態を明瞭に表示したものにする、と求めているからです。計算書類(活動計算書及び貸借対照表をいう。)及び財産目録は、会計簿に基づいて活動に係る事業の実績及び財政状態に関する真実な内容を明瞭に表示したものとすること、と特定非営利活動促進法 第27条は定めています(制度。特定非営利活動促進法 第27条(2026年10月27日確認))。Q&A 2-4-6も、根拠を【第27条3号】としています。
基金を普通預金にまとめたままだと、貸借対照表を見た人は、そのお金を何に使ってよいのか分かりません。目的を書いた特定資産と、指定正味財産に分けておけば、奨学金に使うお金と、自由に使えるお金の線が、書類の上で見えます(当事務所の見解)。第27条は、採用する会計処理の基準及び手続については、毎事業年度継続して適用し、みだりにこれを変更しないこと、とも定めています(同)。最初の年に決めた表し方を、翌年以降も続けます。
なお、活動計算書への移行については、平成23年改正法附則第6条第2項において、当分の間、従来の収支計算書を活動計算書として作成、提出できるものとしています、とQ&A 2-4-5は書いています(内閣府NPO法Q&A 2-4-5(2026年10月27日確認))。収支計算書のままの法人は、特定資産・指定正味財産の表し方を、税理士や所轄庁と相談して決めてください(要確認)。会計を誰が担うかの整理はNPO法人の会計は誰がやるかに、資産の側の別の論点は信用金庫の出資金の仕訳に書いています。
作った当事者の目で見ると
法人を作ると、「基金を作りたい」という声は早いうちに出てきます。そのときに決めておきたいのは、科目の名前より先に、①誰のお金か(寄附者が使い道を決めたのか、法人が取り分けたのか)、②何に使うか、③いつ、誰の決定で取り崩すか、の3点です。これを理事会の議事録か規程に残しておくと、決算のときに特定資産と指定正味財産のどちらで表すかで迷いません。寄附を呼びかける文にも同じ言葉を使っておくと、寄附者への説明と書類が一致します(当事務所の見解)。
決算のときの点検——3つの「一致」
結論として、基金を分けて書いたあとは、計算書類どうしの金額がつながっているかを確かめます。千葉市の手引きは、「前期繰越正味財産」と前期末の「正味財産の部」の合計額が一致、「正味財産の部」の合計額と活動計算書の末尾(「次期繰越正味財産額」)が一致、「資産合計」と「負債及び正味財産合計」が一致、の3点をチェックポイントに挙げています(千葉市の手引き(2026年10月27日確認))。
あわせて、注記は計算書類と一体であり重要なものであるため、該当がある場合には確実に注記することが必要、として、使途等が制約された寄附金等の内訳、固定資産の増減内訳、借入金の増減内訳などを挙げています(同)。特定資産の内訳の注記は、指定正味財産の内訳の表と金額が合っているかも見ます(当事務所の見解)。その他の事業がある法人の区分経理はその他の事業の赤字と区分経理にまとめています。
今日やること——3つだけ
まず、基金のお金を集めたときの呼びかけ文と寄附の申込書を開き、「奨学金に使う」と寄附者に約束したかを確かめます。で、貸借対照表の科目を「奨学金特定資産」のように目的の入った名前にし、約束した寄附なら正味財産の部を指定と一般に分けます。最後に、注記に「使途等が制約された寄附金等の内訳」の表を作り、期首・増加・減少・期末の金額が貸借対照表と合うかを見ます。この3つで、「基金ってどこに書くの」が「この科目で、この表に書く」に変わります。
参考にした一次資料
- 内閣府NPOホームページ「NPO法Q&A 経理・会計」(2-4-5・2-4-6)(2026年10月27日確認)
- 特定非営利活動促進法(第27条。e-Gov法令検索)(2026年10月27日確認)
- 千葉市「特定非営利活動法人 申請・届出の手引き」(令和8年1月改訂。科目例・作成例・計算書類の注記)(2026年10月27日確認)
※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・要領および指定権者の案内をご確認ください。
📍 千葉県ローカルメモ|千葉県内の所轄庁
千葉市にのみ事務所を置く法人は千葉市長、それ以外で千葉県内に主たる事務所を置く法人は千葉県知事が所轄庁です。計算書類の様式や注記の書き方で迷うときは、所轄庁の手引きの作成例を確認します(2026年10月27日確認)。
※2026年10月27日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。
💬 目加多のひとこと
基金は、作るときは気持ちが前に出て、書類のことは後回しになりやすいところだと思います。でも、寄附者への約束と計算書類の書き方がそろっていると、それだけで法人への信頼が一段上がります。まずは寄附の呼びかけ文を開いて、何に使うと約束したかに線を引くところから始めてみてください。

執筆・監修
目加多 龍めかた りょう
行政書士 × 人事・財務アドバイザー(目加多龍行政書士事務所 代表)
行政書士/2級FP技能士(AFP)/国家資格キャリアコンサルタント。
障害福祉・障害児支援とNPO法人を専門にしています。放課後等デイサービス・児童発達支援・就労継続支援A型・B型・グループホーム(共同生活援助)などの指定申請、処遇改善加算・変更届・指定更新・運営指導(実地指導)への対応を支援します。NPO法人は、設立認証から事業報告書・役員変更などの運営まで支援します。
企業人事15年の経験を土台に、児発管・サビ管の採用・定着、融資・補助金や資金繰りまで、「書類・人・お金」を一体で支えます。