— 30秒でわかる結論 —

Q. クリニックを開設・法人化するとき、医療法人以外の選択肢はありますか?

あります。器は3つです。①医師個人——医師・歯科医師が開設する診療所は保健所への開設届(開設後10日以内)で始められ、最も速い。②医療法人——都道府県知事の設立認可が必要で、千葉県は年3回、申込みから認可書まで約6か月。所得の分散・退職金・分院展開・介護事業への広がりを見込む場合に選ばれます。③一般社団法人——法人の設立は定款認証と登記だけで随時できますが、診療所の開設には保健所の開設許可が要り、非営利性の確認として理由書・誓約書の提出や面談を求められることがあります。審査の運用は保健所によって差があるため、器を決める前に開設地を所管する保健所へ相談してください。株式会社などの営利法人では開設できません。医療法は営利を目的として病院・診療所を開設しようとする者に開設許可を与えないことができると定め、厚生労働省の通知(平成5年2月3日、平成10年10月9日)も非営利性の確認を求めています。どの器でも、保険医療機関の指定に遡及は原則なく、診療開始日と指定日をそろえる段取りが必要です(2026年9月15日確認)。

こんな方に読んでいただきたい記事です

  • クリニックの開設・法人化を考えていて、医療法人以外の選択肢を知りたい方
  • 医療法人の認可の回に間に合わず、別の方法を探している方
  • 将来の分院や介護事業への展開まで見て器を決めたい方

「法人化=医療法人」ではありません

クリニックの開設や法人化のご相談で、最初に確認するのは「どの器で開くか」です。医療法人だけが選択肢だと思っていた、という方が少なくありません。実際には、医師個人での開設医療法人一般社団法人の3つがあり、それぞれ手続きの重さも、分院や介護事業への広げやすさも違います。

(※複数のご相談を合成した架空の場面です)

先に結論を書きます。株式会社などの営利法人では開設できません。医療法は、営利を目的として病院・診療所を開設しようとする者に対しては開設許可を与えないことができると定めており、実務上は認められていません。厚生労働省の通知(平成5年2月3日 総第5号・指第9号、平成10年10月9日 総第28号・指第63号)も、開設者が実質的に運営の責任主体であること・営利を目的としないことを確認するよう求めています(2026年9月15日確認)。

3つの器を並べる

医師個人医療法人(社団・持分なし)一般社団法人(非営利型)
診療所の開設手続き保健所へ開設届(開設後10日以内)保健所へ開設許可申請→開設届保健所へ開設許可申請→開設届
法人の設立都道府県知事の認可(千葉県は年3回)→登記公証役場の定款認証→登記(随時)
立ち上げまでの期間最短申込みから認可書まで約6か月数週間〜1か月(法人の設立部分)
開設時の非営利性の確認認可の審査で確認保健所で理由書・誓約書・面談を求められることがある
毎年の行政への報告決算届(事業報告書等)を都道府県へ不要(法人法上の計算書類の作成・備置きは必要)
役員変更都道府県へ役員変更届登記のみ
分院を開設するとき定款変更の認可保健所へ開設許可申請
利益の分配事業主の所得剰余金の配当は禁止社員への分配は不可(非営利型の要件)

表の左から右へ、手続きは重くなり、できることは広がります。医師個人は開設届だけで始められますが、所得の分散や退職金の制度、分院の展開はできません。医療法人は認可という重い入口がある代わりに、それらが可能になります。

一般社団法人という選択肢の実際

一般社団法人は非営利法人なので、条件を満たせば診療所を開設できます。法人の設立自体は公証役場の定款認証と登記だけで、医療法人の認可の回(千葉県は年3回)を待つ必要がありません。毎年の決算届も不要で、役員変更も登記だけです。

ただし、開設のハードルは法人設立の速さとは別にあります。保健所の開設許可の審査で非営利性の確認が行われ、なぜ医療法人や個人ではなく一般社団法人なのかを説明する理由書や、非営利性の遵守事項に関する誓約書の提出を求められることがあり、面談を行う保健所もあります。「認可の回に間に合わないから」という理由だけでは通りにくく、審査の運用は保健所によって差があります。器を決める前に、開設地を所管する保健所に相談してください。

どの器でも共通する4つの段階

段階医師個人での開設法人(医療法人・一般社団)での開設
①事前相談保健所(構造設備・面積・廊下幅など)保健所+(医療法人なら)都道府県の設立認可の窓口
②法人の設立医療法人=認可→登記/一般社団=定款認証→登記
③診療所の開設開設届(開設後10日以内)開設許可を受けてから開設し、開設届
④保険医療機関の指定地方厚生局へ申請。遡及は原則なし同左。法人としての診療開始日と指定日をそろえる
⑤個人からの切替えの場合個人診療所の廃止届、保険医療機関の廃止と新規指定を同じ日でつなぐ

見落とされやすいのが④です。保険医療機関の指定に遡及は原則ありません。個人から法人へ切り替える場合、個人診療所の廃止と法人としての開設、保険医療機関の廃止と新規指定を同じ日でつなぐ必要があります。ここがずれると、その期間の診療報酬を請求できません。

器の選び方——3つの問いで決まります

  • 2院目や介護・障害福祉への展開を考えていますか——考えているなら医療法人。分院は定款変更の認可、介護老人保健施設や附帯業務の範囲で広げられます
  • いつ開きたいですか——医療法人は認可の回に合わせるため、思い立ってから最短でも半年以上。急ぐなら個人で開設し、法人化を後から検討する順番もあります(千葉県の医療法人設立は年3回
  • 複数の事業を1つの法人で行いたいですか——研究・研修・地域連携などを含めたい場合、一般社団法人が選ばれることがあります。ただし非営利性の説明ができることが前提です
要確認:医療法の条文の項番号は改正で移動しています。一般社団法人による診療所開設の可否・必要書類・審査の運用は、開設地を所管する保健所によって差があります。診療所の開設届・開設許可の様式と期限、保険医療機関の指定申請の取扱いは、所管の保健所・地方厚生局でご確認ください。設立登記は司法書士、税務・会計は税理士、社会保険の手続は社会保険労務士の業務であり、当事務所は行いません。本記事は2026年9月15日時点の整理です。

介護・障害福祉の事業者の方へ
クリニックに児童発達支援や生活介護を併設する場合、器の選択が指定申請にも影響します。医療法人は附帯業務の範囲(都道府県の判断)、一般社団法人は定款の目的に根拠法と事業名を法令の用語で書く必要があります。類型ごとの要件は全類型一覧をご覧ください。

「うちはどの器が合うか」を一緒に決めます

器の選択は、開業の時期・将来の展開・税務の3つが絡みます。当事務所では60分の無料相談で、開業の希望時期と5年後の姿を伺い、3つの器のどれが現実的かを整理します。税務のメリットは税理士と、登記は司法書士と連携して進めます。詳しくは医療法務(診療所の開設・法人化)をご覧ください。ご依頼にならなくて構いません。オンラインで全国対応です。お問い合わせフォームからどうぞ。

参考にした一次資料

※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・要領および指定権者の案内をご確認ください。

📍 千葉県ローカルメモ|千葉県で開設する方へ

診療所の開設届は管轄の保健所へ、開設後10日以内が期限です(千葉県の行政手続案内で確認)。医療法人の設立認可は、主たる事務所が千葉市以外なら千葉県健康福祉部医療整備課 医療法人設立担当(043-223-3878)、千葉市内なら千葉市医療政策課(043-245-5210)。一般社団法人での開設を検討する場合は、開設地の保健所に早い段階で相談してください。松戸・市川・流山からのご相談はオンラインでもお受けしています。

※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。

💬 目加多のひとこと

「医療法人にするしかないと思っていました」と言われることが何度かありました。制度の解説が医療法人に集中していて、ほかの器の話が出てこないからだと思います。私は器の話を、開業の時期と5年後の姿から逆算してお伝えするようにしています。急ぐなら個人、広げるなら医療法人、事情があるなら一般社団。どれが正しいかではなく、その方の計画に合うかどうかです。

行政書士 目加多龍

執筆・監修

目加多 龍めかた りょう

行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)

行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/2級FP技能士(AFP)。ブリヂストン系列企業とNEC系列企業で人事・労務の現場15年を経て2026年に独立。個人向けキャリア相談はココナラで約70件・全件★5.0(プラチナランク・2026年7月時点)。障害福祉・障害児支援の指定申請を軸に、資金調達から人材の定着まで、中小企業の「手続き」「資金」「人材」を一体で支援しています。

プロフィールを見る →