— 30秒でわかる結論 —

Q. 処遇改善加算の「令和8年度特例要件」とは何ですか?加算Ⅰロ・Ⅱロを取るには何が要りますか?

令和8年度特例要件とは、令和8年6月に新設された処遇改善加算の上位区分Ⅰロ・Ⅱロを算定するための要件で、ア)職場環境等要件の「生産性向上のための業務改善の取組」を5つ以上実施(⑱現場の課題の見える化と㉑業務支援ソフト・情報端末の導入は必須)、またはイ)社会福祉連携推進法人に所属していることのいずれかと、ウ)加算Ⅱロ相当の加算額の2分の1以上を月給(毎月支払われる賃金)で配分することの両方を満たす必要があります。加算率は同じ区分のイより0.6ポイント高く、放課後等デイサービスはⅠイ15.5%→Ⅰロ16.1%、児童発達支援は15.2%→15.8%、共同生活援助は16.3%→16.9%です(就労継続支援B型は0.4ポイント差で10.5%→10.9%)。アとウは令和8年度中に対応することの誓約で先に算定でき、実績報告書で対応が確認されなければ加算額の一部または全部を返還します(厚生労働省・こども家庭庁 令和8年度報酬改定の改定事項資料、2026年9月27日確認)。

こんな方に読んでいただきたい記事です

  • ⅠイまたはⅡイを算定していて、ロに上げるべきか迷っている放デイ・児発・B型・GHの経営者の方
  • 「誓約で取れる」と聞いて申請したが、年度内に整えられるか不安な方
  • 記録ソフトやタブレットを入れたので、加算に結びつけたい方

令和8年度特例要件とは、加算Ⅰロ・Ⅱロを取るための「生産性向上か協働化+月給での配分」の要件です

令和8年度特例要件とは、処遇改善加算Ⅰ・Ⅱの上位区分「Ⅰロ」「Ⅱロ」を算定するために新設された要件です。中身は、①職場環境等要件の生産性向上の取組を5つ以上(⑱と㉑は必須)または②社会福祉連携推進法人に所属していること、のいずれかと、③加算Ⅱロ相当の加算額の2分の1以上を月給(毎月支払われる賃金)で配分すること、の両方です(制度。厚生労働省・こども家庭庁「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(報告)」R8.4.24(2026年9月27日確認))。

令和8年6月の改定で、処遇改善加算は「福祉・介護職員のみ」から「障害福祉従事者」に対象が広がりました(月1.0万円相当・3.3%の引上げ)。これに加えて、生産性向上や協働化に取り組む事業者の福祉・介護職員に月0.3万円相当(1.0%)を上乗せする区分として加算Ⅰロ・Ⅱロが設けられました(制度(2026年9月27日確認))。この記事では、上乗せの加算率、要件の中身、誓約で先に取る方法と返還の条件、小規模事業所でどう5つを選ぶかを整理します。

加算率はいくら上がるのか——放デイ・児発・B型・GHの例

加算Ⅰロ・Ⅱロの加算率は、同じ区分のイより0.6ポイント高く設定されています(制度。改定事項資料の加算率表を当事務所で読み取り(2026年9月27日確認))。主なサービスの令和8年6月以降の加算率は次のとおりです(総報酬単位数に乗じる率。処遇改善加算を除く加減算後の単位数が対象)。

サービスⅠイⅠロⅡイⅡロⅢⅣ
放課後等デイサービス15.5%16.1%15.2%15.8%14.2%11.9%
児童発達支援15.2%15.8%14.9%15.5%13.9%11.7%
就労継続支援B型10.5%10.9%10.3%10.7%8.8%7.4%
就労継続支援A型10.8%11.2%10.6%11.0%9.1%7.5%
共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型)16.3%16.9%16.0%16.6%14.4%12.1%
生活介護9.3%9.7%9.2%9.6%7.9%6.7%

定員10人の放デイで月の総報酬単位数が100万円相当(地域単価10円換算)なら、ⅠイとⅠロの差は月6,000円、年7.2万円です。B型の差は0.4ポイントで、月100万円なら月4,000円。上乗せ分は福祉・介護職員に配る原資であり、事業所の手取りではありません(制度・実務の目安)。それでも「取れるのに取っていない」状態は、職員から見れば賃金の取りこぼしです(当事務所の見解)。

要件①「生産性向上の取組を5つ以上、⑱と㉑は必須」の中身

職場環境等要件の「生産性向上のための業務改善の取組」区分(⑱〜㉔の7項目)のうち5つ以上を実施し、そのうち⑱現場の課題の見える化と㉑業務支援ソフト・情報端末の導入は必ず含める、というのが要件アです(制度(2026年9月27日確認))。7項目は次のとおりです。

番号取組の内容小規模事業所での実装の例(実務の目安)
⑱(必須)現場の課題の見える化(課題の抽出、課題の構造化、業務時間調査の実施等)1週間、職員全員が業務を15分刻みで記録し、記録・送迎・連絡帳に何分かかっているかを表にする。年1回更新
⑲5S活動等の実践による職場環境の整備備品の定位置と写真を貼る。月1回の5Sチェック表
⑳業務手順書の作成、記録・報告様式の工夫による情報共有や作業負担の軽減送迎・受入れ・引継ぎの手順書を1枚ずつ。記録様式をチェック式に
㉑(必須)業務支援ソフト(記録、情報共有、請求業務転記が不要なもの)、情報端末(タブレット・スマートフォン)の導入記録・請求が連動するソフトとタブレットの導入。導入時期と機種を記録
㉒介護ロボットまたはインカム等のICT機器(ビジネスチャットツール含む)の導入職員間の連絡をビジネスチャットに統一。見守りセンサー等はGH向け
㉓業務内容の明確化と役割分担。清掃・ベッドメイク・ゴミ捨て等を間接支援業務の職員や外注に清掃と送迎の一部をパート・外注に切り出し、支援員の時間を支援に戻す
㉔各種委員会の共同設置、指針・計画の共同策定、物品の共同購入、ICTインフラの共同整備など協働化同一法人内の複数事業所で研修・委員会・購買を共通化。1事業所の法人は使いにくい

1事業所だけの小規模法人では、⑱・㉑に加えて⑲・⑳・㉓の3つを足す組み合わせが現実的です(当事務所の見解)。㉔の協働化は複数事業所か法人間の連携がないと成り立ちません。

要件②「社会福祉連携推進法人に所属」、要件③「加算Ⅱロ相当の2分の1以上を月給で配分」

生産性向上5つの代わりに、社会福祉連携推進法人に所属していることでも要件ア・イのいずれかは満たせます(制度)。社会福祉連携推進法人は社会福祉法に基づく連携の法人で、社会福祉法人やNPO法人などが社員となって設立します。千葉県内の放デイ・GHの小規模法人がこの選択肢を使う例は多くない(当事務所の見解)ため、実務上はアの5つが中心です。

要件ウは、加算Ⅱロに相当する加算額の2分の1以上を「月給賃金」で配分することです(制度)。一時金や賞与ではなく、基本給や毎月決まって支払う手当に載せる必要があります。これは従来の「加算Ⅳ相当額の2分の1以上を月額賃金で配分」(キャリアパス要件等)とは別の、ロ区分固有の要件で、基準になる金額が加算Ⅳ相当ではなく加算Ⅱロ相当である点が違います(制度。当事務所の読み取り)。計画書の賃金改善の内訳で、月給への配分がⅡロ相当額の半分以上になっているかを確かめてください。

令和8年度中は「誓約」で先に取れます——ただし実績報告で未対応なら返還

要件ア(生産性向上5つ)とウ(月給での配分)は、令和8年度中に対応することを誓約すれば、要件を整える前から加算Ⅰロ・Ⅱロを算定できます(制度。改定事項資料「ア・ウの要件は令和8年度中の対応の誓約で可。実績報告書において対応の実施を確認」(2026年9月27日確認))。誓約で算定した場合、令和8年度の実績報告書で対応の実施が確認され、未対応が確認された場合は加算額の一部または全部を返還させるとされています(制度)。

  • 誓約で取るときの記録:どの5項目を、いつまでに、誰が担当して整えるかを計画書の提出時に社内で決め、実施したら日付と証拠(業務時間調査の表、導入したソフトの契約書、手順書の版数)を残す(実務の目安)。
  • 返還の範囲:「一部又は全部」で、どこまで返すかは実績報告での確認の結果によります。ロ区分の上乗せ分だけでなく、要件を満たさない区分で算定していた差額全体が対象になりうるため、誓約は「あとで整える」ではなく「整える見込みが立っている」ときに使う(当事務所の見解)。
  • 計画書の期限:千葉県は令和8年7月以降に算定を始める場合、算定開始月の前々月の末日までに計画書を提出する運用です(制度。千葉県「福祉・介護職員処遇改善加算等について」(2026年9月27日確認))。区分をⅠイからⅠロに上げるときは、処遇改善の計画書(変更届)と体制届の両方が要ります。

— この段階でご相談いただく理由 —

ロ区分は「誓約で先に取れる」ぶん、実績報告で返還になる事業所が出ます。誓約した5項目を年度内に整えられるか、月給への配分がⅡロ相当の半分を超えるかを、計画書を出す前に数字で確かめる必要があります。当事務所は処遇改善加算の計画書・実績報告の点検を運営中の事業所向けの無料診断で行い、ロ区分の要否と誓約の可否をその場で判定します。

準備物:直近の処遇改善計画書(または国保連の支払通知の加算区分)、職員の賃金台帳の概要、導入済みのソフト・端末の一覧。60分の無料相談 →

ロ区分を取るべきかの判断——3つの問い

取るべきかどうかは、次の3つで決まります(当事務所の見解)。

  1. ⑱と㉑を年度内に実装できるか。記録・請求が連動するソフトとタブレットを入れていない事業所は、㉑の導入費用と職員の習熟が先です。導入だけして使っていない状態は、運営指導で「実施」と認められない恐れがあります(実務の目安)。
  2. 月給での配分に耐えられるか。ロの上乗せ分を含めた加算額の半分以上を毎月の賃金に載せると、利用者が減った月も固定費として残ります。稼働率が不安定な事業所は、まずⅠイ・Ⅱイで安定させる選択もあります。
  3. 職場環境等要件の全体(加算Ⅰ・Ⅱは各区分2つ以上・生産性向上3つ以上・全体14以上)を満たしているか。ロ区分はこの土台の上に乗る要件です。土台が誓約頼みなら、ロまで誓約で積むのは返還のリスクが二重になります。

3つとも「はい」なら、上乗せ分は職員の賃金に直接載る原資です。取らない理由はありません(当事務所の見解)。

📗 職場環境等要件の28項目と必要数は処遇改善加算の「職場環境等要件」——6区分28項目、令和8年度の対象職種の拡大と算定要件は処遇改善加算は誰に配れるのか、配り方の縛りは処遇改善加算の「配り方」4つの縛りにまとめています。

参考にした一次資料

※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・要領および指定権者の案内をご確認ください。

📍 千葉県ローカルメモ|千葉県内の事業所の方へ

千葉県が指定権者の事業所(松戸市・市川市・流山市など)は、処遇改善加算の計画書・変更届を県の処遇改善のページの様式で提出します。令和8年7月以降に算定を始める分は算定開始月の前々月の末日が計画書の期限で、区分をイからロへ上げるときは体制届(前月15日必着)も併せて出します。千葉市・船橋市・柏市が指定権者の事業所は各市の様式と期限に従ってください。加算率表の読み取り(ⅠイとⅠロの並び)は改定事項資料の表を当事務所が解釈したもので、最終的な区分と率は令和8年6月施行の報酬告示で確認してください(2026年9月27日確認)。

※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。

💬 目加多のひとこと

ロ区分の相談で多いのは「誓約すればすぐ取れると聞いた」という入り方です。取れます。ただし来年、実績報告で確認されます。私は人事の仕事で、制度を先に取って現場が追いつかない場面を何度も見ました。5つの取組のうち、⑱の業務時間調査だけは今週から始められます。そこから逆算して、ロを取るかを決めてください。

行政書士 目加多龍

執筆・監修

目加多 龍めかた りょう

行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)

行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/2級FP技能士(AFP)。ブリヂストン系列企業とNEC系列企業で人事・労務の現場15年を経て2026年に独立。個人向けキャリア相談はココナラで約70件・全件★5.0(プラチナランク・2026年7月時点)。障害福祉・障害児支援の指定申請を軸に、資金調達から人材の定着まで、中小企業の「手続き」「資金」「人材」を一体で支援しています。

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