— 30秒でわかる結論 —

Q. NPO法人のデメリットは何ですか?

NPO法人のデメリットは、非営利・公益であることの裏返しとして生じます。避けられない重いものは3つで、①設立に社員10人以上が要ること(NPO法第12条)、②毎事業年度初めの3か月以内に事業報告書を所轄庁に提出し、3年間出さないと認証取消しの対象になること(第29条・第43条)、③解散時の残余財産は定款で定めた限られた帰属先(他のNPO法人、国・地方公共団体、公益法人、学校法人、社会福祉法人、更生保護法人)にしか渡せず、出した資金は戻らないこと(第11条・第32条)です。設計で対処できるものは、利益を分配できないこと(役員報酬・給与は払える)、役員の縛り(理事3人・監事1人以上、報酬を受ける役員は3分の1以下、親族制限)、社員の議決権が平等で代表者一人では決められないことです。そのほか、設立に3〜4か月(縦覧2週間と審査)かかる、事業報告書等の備置き5年と閲覧・貸借対照表の公告という情報公開、役員任期2年以内ごとの改選と登記、定款の主要な変更に所轄庁の認証が要る、20分野以外を主にはできない、収益事業には法人税がかかり均等割は申請しないと免除されない自治体が多い、といった点があります(2026年9月26日確認)。

こんな方に読んでいただきたい記事です

  • NPO法人か株式会社・一般社団法人か迷っている方
  • 「NPO法人は税金がかからない」と聞いて検討している方
  • 家族や少人数で法人を作ろうとしている方

NPO法人のデメリットは、すべて「非営利で公益」の裏返しです

NPO法人とは、特定非営利活動促進法に基づき、所轄庁の認証を受けて設立される法人で、利益を社員に分配せず、活動内容と財務を公開することを前提に、公益的な活動を行うために作られた法人格です(制度。NPO法第2条(2026年9月26日確認))。デメリットと呼ばれるものは、この前提から必然的に生じます。一つずつ、根拠と「どの程度重いか」を分けて見ます。

デメリット根拠(NPO法)重さの目安(当事務所の見解)
① 設立に社員10人以上が要る第12条第1項第4号重い。目的を共有する10人を集めることが設立の最大の仕事
② 設立まで3〜4か月かかる第10条(縦覧2週間)・第12条(審査)中。株式会社なら数週間で登記できる
③ 利益を分配できない・出資という概念がない第2条第2項設計次第。役員報酬・給与は払える
④ 情報公開の義務が重い第28条(事業報告書等の備置き5年・閲覧)、第28条の2(貸借対照表の公告)中。毎年の事務が発生し、誰でも見られる
⑤ 毎年の事業報告書を出さないと認証取消しになりうる第29条(3か月以内)、第43条(3年間未提出で取消し可)重い。休眠が許されない
⑥ 役員の縛り:理事3人・監事1人以上、報酬を受ける役員は3分の1以下、親族制限第15条・第2条第2項・第21条中。夫婦だけ、家族だけの法人にはしにくい
⑦ 役員の任期は2年以内で改選・登記が要る第24条中。重任も手続きが要り、忘れると過料
⑧ 社員の議決権は平等、社員の資格に不当な条件をつけられない第14条の7・第2条第2項第1号設計次第。「創業者が支配する」形は作れない
⑨ 定款の主要な変更に所轄庁の認証が要る第25条中。事業の追加や目的の変更に2〜3か月かかる
⑩ 解散時の残余財産は限られた帰属先にしか渡せない第11条第3項・第32条重い。出した資金は戻らない前提
⑪ 20分野以外の活動を主にはできない第2条第1項・別表事業内容次第
⑫ 税金がゼロになるわけではない法人税法(収益事業)・地方税法(均等割)中。収益事業には法人税、均等割は申請しないと免除されない自治体が多い

「重い」3つは、避けられません

①社員10人、⑤毎年の事業報告、⑩残余財産の帰属の3つは、NPO法人である限り例外がありません(制度)。10人は名義貸しでは意味がなく、社員総会の議決権を持つ人です。事業報告書は毎事業年度初めの3か月以内に所轄庁へ出し、3年間出さなければ認証取消しの対象になります。解散時の残余財産は定款で定めた帰属先(他のNPO法人、国・地方公共団体、公益社団・財団法人、学校法人、社会福祉法人、更生保護法人)にしか渡せず、定めがなければ国庫に帰属します。「自分が出した資金を、事業がうまくいかなかったら引き揚げたい」という方には、NPO法人は向いていません(当事務所の見解)。

「設計次第」の3つは、定款と運営で対処できます

③分配できないは、役員報酬と職員給与を払えないという意味ではありません。働いた分の報酬は払えます。払えないのは「利益の分配」です。⑥役員の縛りは、理事3人のうち報酬を受けるのは1人まで、親族制限(各役員につき配偶者・3親等以内の親族は1人まで、役員とその親族の合計が総数の3分の1以下。役員5人以下なら親族は入れられない)は、役員の人数を6人以上にするか、親族を役員にせず職員にすることで満たせます。⑧議決権の平等は、代表者が一人で決められない仕組みですが、理事会の権限を定款で整理し、日常の執行は理事に委ねることで運営は回ります(制度・当事務所の見解)。

私自身がゼロから10人を集めて設立した経験からいうと、設立時に一番苦労するのは①、設立後に一番苦労するのは⑤と⑦です。手続きの重さは、設立前に「毎年の事務カレンダー」を作っておけば減らせます。

📗 毎年の義務はNPO法人の「続けるコスト」一覧、公告はNPO法人は毎年「貸借対照表の公告」が必要です、残余財産はNPO法人の解散は7つの事由から——残余財産は6つの帰属先にしか渡せませんにまとめています。

デメリットを引き受けてでもNPO法人にする理由

それでもNPO法人を選ぶ理由は、「誰の名前で信用を得るか」にあります。行政からの委託・指定管理、助成金、寄附、会費で回る事業は、情報公開と非分配を法律で担保されたNPO法人のほうが相手に説明しやすい。逆に、事業収入で回り、意思決定を速くしたい、出資を募りたいなら株式会社か一般社団法人です(当事務所の見解)。判断の軸は「資金の出どころ」と「意思決定の速さをどこまで求めるか」の2つで、比較は別の記事にまとめています。

本記事で確認できていないこと

⑫の法人住民税の均等割は自治体によって「申請すれば免除」「課税免除で申請不要」「減免」の運用が分かれ、千葉市は課税免除・申請不要と確認できていますが、千葉県と松戸市の運用は本記事の執筆時点で確認できていません(要確認)。認定NPO法人になった場合の税制優遇は本記事の範囲外です。

参考にした一次資料

※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・要領および指定権者の案内をご確認ください。

📍 千葉県ローカルメモ|所轄庁と税金(千葉県内の例)

所轄庁は千葉市内のみに事務所がある法人は千葉市、松戸市・市川市・柏市・船橋市などは千葉県です。事業報告書の提出先も同じです。法人住民税の均等割は、千葉市は収益事業を行わないNPO法人を課税免除(申請不要)としていますが、千葉県と松戸市の運用は確認できていません(要確認)。設立後は、設立の届出(松戸市は登記後60日以内)と、収益事業を始める・やめるときの届出も必要です。税務の判断は税理士の業務なので、当事務所は届出の要否の整理までを担い、申告は税理士と分担します(2026年9月26日確認)。

※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。

💬 目加多のひとこと

「NPOは税金がかからないと聞いた」「家族で作りたい」というご相談は、たいてい最初の10分で株式会社か一般社団法人の話に変わります。デメリットを知ってから選ぶ人は、設立後に困りません。知らずに選んだ人が、2年目の役員改選と3年目の事業報告で止まります。作る前に、この12個を一度読んでください。

行政書士 目加多龍

執筆・監修

目加多 龍めかた りょう

行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)

行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/2級FP技能士(AFP)。ブリヂストン系列企業とNEC系列企業で人事・労務の現場15年を経て2026年に独立。個人向けキャリア相談はココナラで約70件・全件★5.0(プラチナランク・2026年7月時点)。障害福祉・障害児支援の指定申請を軸に、資金調達から人材の定着まで、中小企業の「手続き」「資金」「人材」を一体で支援しています。

NPO法人については、明治大学経営学部公共経営学科でNPO・非営利組織の経営を専攻し、自らゼロから社員10人を集めて定款作成・設立総会を経て所轄庁の設立認証を取得した当事者でもあります。手続きだけでなく、人の集め方・目的の書き方・設立後2年目の重任まで、経験にもとづいてお伝えしています。

プロフィールを見る →