— 30秒でわかる結論 —

Q. キャリア面談で話したことは、会社に伝わりますか?

個人の話は伝えません。組織の話は、個人が特定されない形で集約して伝えます。具体的には、個人が特定される悩み・家庭の事情・健康の不安・転職を考えているという発言は、本人の同意がない限り会社に伝えません。一方、実施の事実(実施日・対象者数)と、複数人に共通する組織の課題(伝え方、評価の納得感、情報共有の不足など)は、個人が分からない形で会社に伝えます。本人が「会社に伝えてほしい」と言ったことは、何を・誰に・どこまで、を面談の場で確認したうえで伝えます。例外は、本人や他者の生命・安全に関わる場合で、これは面談の冒頭で先に説明しておきます。記録は4つに分けます。①個別の面談記録(会社に渡さない)②本人控え(本人に渡す)③組織へのフィードバック報告書(個人が特定されない形で会社に提出)④実施記録(実施日・対象者数のみ)。混乱の元は①を会社に提出してしまうことで、提出した瞬間、次回から本音は出ません。なお社員10人規模の会社では「1名から評価への不満」と書くだけで誰か分かるため、小さな会社ほど集約の粒度を粗くする必要があります(2026年9月17日時点)。

こんな方に読んでいただきたい記事です

  • セルフ・キャリアドックの導入を検討している経営者・人事の方
  • キャリア面談を始めたが本音が出ないと感じている方
  • 面談記録の扱いを社内で決めきれていない方

面談の価値は、最初の1分で決まります

セルフ・キャリアドックを導入した会社から、いちばん多く聞く不安が2つあります。経営者からは「本音が出るのか」、社員からは「会社に筒抜けになるのでは」。この2つは同じ問題の裏表で、答えも同じです。何が会社に伝わり、何が伝わらないかを、面談の冒頭で明確に伝えること

キャリアコンサルタントには守秘義務があります(守秘義務と会社への正しい伝わり方)。ただ、守秘義務があることと、それが社員に伝わっていることは別です。説明されていない守秘は、存在しないのと同じです。

この記事は、面談で得た情報のうち何を会社に伝えるか、記録をどう扱うかを、実務の線引きとして整理したものです。

会社に伝えるもの、伝えないもの

情報の種類会社に伝える伝えない
個人が特定される悩み・家庭の事情・健康の不安本人の同意がない限り伝えない
転職を考えている、という発言同上。伝えると面談そのものが成立しなくなる
本人が「会社に伝えてほしい」と言ったこと伝える(何を・誰に・どこまで、を面談の場で確認)
複数人に共通する組織の課題(伝え方・評価の納得感・情報共有の不足など)個人が特定されない形で集約して伝える個人名や、推測できる具体的なエピソード
実施の事実(実施日・対象者数・実施率)伝える
本人や他者の生命・安全に関わる場合例外として必要な範囲で伝える(面談の冒頭で例外を説明しておく)

線引きの基本は「個人の話は伝えない、組織の話は集約して伝える」です。4行目がセルフ・キャリアドックの価値の中心で、個別の面談から見えた共通の課題を、個人が特定されない形で経営に返します。ここが機能すると、面談が「社員のガス抜き」ではなく「組織の健康診断」になります。

ただし集約にも注意が要ります。社員10人の会社で「1名から評価への不満」と書けば、誰のことか分かってしまいます。小さな会社ほど、集約の粒度を粗くする必要があります社員10人の会社の設計図)。

記録は4種類に分けて考える

記録目的保管と共有
個別の面談記録キャリアコンサルタントが継続支援のために使う会社には渡さない。キャリアコンサルタント側で保管し、保管期間と廃棄の方法を決めておく
本人控え本人が自分の整理に使う本人に渡す。会社は見ない
組織へのフィードバック報告書経営・人事が組織の改善に使う個人が特定されない形で。人数・傾向・提案。会社に提出
実施記録(実施日・対象者数)制度として回っていることの記録会社に提出。個人の内容は含めない

混乱の元は、個別の面談記録を会社に提出してしまうことです。提出した瞬間、次回から本音は出ません。個別記録はキャリアコンサルタント側で保管し、会社には組織へのフィードバック報告書と実施記録を出す。この分け方を、導入の設計段階で決めてください。

外部のキャリアコンサルタントに依頼する場合は、契約書で記録の帰属・保管期間・廃棄の方法を定めます。社内の人事担当者が面談する場合は、この線引きがより難しくなります。評価や配置を決める立場の人が面談すると、社員は身構えるからです。

面談の冒頭で伝える5つ

面談の冒頭で伝えること言い方の例
守秘の範囲「ここでお話しいただいたことは、会社には伝えません」
例外「ただし、生命や安全に関わる場合は、必要な範囲でお伝えすることがあります」
会社に伝わるもの「会社には、実施日と人数、それから複数の方に共通する組織の課題を、個人が分からない形でお伝えします」
本人の希望「会社に伝えてほしいことがあれば、この場で一緒に整理しましょう」
記録の扱い「記録は私が保管し、会社には渡しません」

この5つを、毎回、面談のはじめに伝えます。慣れると1分で済みます。この1分を省くと、残りの59分の質が落ちます。

会社側が用意しておくこと

  • 実施要領——目的、対象者、頻度、守秘の範囲、記録の扱いを1枚に。社員に配ることが大事で、面談の場だけで説明しても足りません
  • 面談の時間と場所——就業時間内に、他の社員に聞こえない場所で。「業務として受けられる」ことが参加率を左右します
  • フィードバックの受け取り方——報告書を受け取ったあと、経営として何を変えるかを決める場を用意する。返さないと、次回の参加率が落ちます
要確認:キャリアコンサルタントの守秘義務の範囲・例外の取扱いは、職業能力開発促進法および各資格の倫理綱領によります。個人情報の取扱いは個人情報保護法によります。労働者との個別の労働条件や、面談で把握した事項にもとづく処遇の判断は、社会保険労務士・弁護士の領域です。助成金の活用可否は、当該年度の制度の要件によるため、労働局にご確認ください。本記事は2026年9月17日時点の整理です。

介護・障害福祉の事業者の方へ
介護・障害福祉の事業所は離職率が課題になりやすく、面談の記録が評価や配置に使われるのではという不安が特に強い業種です。管理者ではなく外部が面談する設計が効きます。定着の実務は中小福祉事業所の定着にまとめています。

導入の前に、線引きを決めます

セルフ・キャリアドックがうまくいかない会社は、制度の設計ではなく線引きの説明でつまずいています。当事務所では、国家資格キャリアコンサルタントとして面談を担当しつつ、実施要領の作成から組織へのフィードバックの粒度まで設計をお手伝いしています。

60分の無料相談で、いまの組織の規模と課題を伺い、誰を対象に、どの粒度でフィードバックするかを一緒に決めます。ご依頼にならなくて構いません。オンラインで全国対応です。人材確保・定着サポート、またはお問い合わせフォームからどうぞ。

参考にした一次資料

  • 職業能力開発促進法(キャリアコンサルタントの守秘義務)、および各資格の倫理綱領
  • 個人情報の保護に関する法律(面談記録の取扱い)
  • 当事務所の国家資格キャリアコンサルタントとしての面談実務、および企業人事15年の実務にもとづく整理

※制度・要件・金額は改正や自治体の運用で変わります。上記は確認時点のものであり、実際の手続きの前には必ず最新の告示・要領および指定権者の案内をご確認ください。

📍 千葉県ローカルメモ|松戸近隣の中小企業の方へ

セルフ・キャリアドックは、従業員数が少ない会社ほど「誰が言ったか分かってしまう」問題が起きます。松戸・市川・流山の10〜50人規模の会社では、対象者を全員にせず「節目の2〜3人」から始める設計が現実的です。当事務所は国家資格キャリアコンサルタントとして面談を担当しつつ、実施要領の作成と組織へのフィードバックの設計までお受けしています。

※2026年7月23日時点の一般的な整理です。個別の管轄・最新の運用は各窓口にご確認ください。

💬 目加多のひとこと

面談の冒頭で守秘の説明をすると、表情が変わる方がいます。「言っていいんだ」と分かった瞬間です。逆に、説明を省いた面談は、当たり障りのない話で60分が終わります。制度を作ることより、最初の1分を毎回きちんとやることのほうが、ずっと難しく、ずっと効きます。

行政書士 目加多龍

執筆・監修

目加多 龍めかた りょう

行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)

行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/2級FP技能士(AFP)。ブリヂストン系列企業とNEC系列企業で人事・労務の現場15年を経て2026年に独立。個人向けキャリア相談はココナラで約70件・全件★5.0(プラチナランク・2026年7月時点)。障害福祉・障害児支援の指定申請を軸に、資金調達から人材の定着まで、中小企業の「手続き」「資金」「人材」を一体で支援しています。

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