— 30秒でわかる結論 —

Q. うちはまだ手形で受け取っています。本当に廃止されるのですか?

政府は2026年度末までに約束手形の利用廃止を目指す方針を示しており(2021年閣議決定の成長戦略実行計画。2026年7月時点)、大手企業を中心に手形をやめて振込やでんさいへ切り替える動きが実際に進んでいます。加えて下請取引では手形等の支払サイトを60日以内とする運用の厳格化も進行中です。「いつ・どの取引先が切り替えるか」は相手次第の面があるので、いま手形が絡む取引を棚卸しして、切り替わったときの資金繰りへの影響を先に計算しておくことをおすすめします。

「取引先から、手形をやめて振込にすると言われました」——ここ数年、こうしたご相談が着実に増えています。長く日本の商慣行を支えてきた約束手形が、いま大きな転換点にあります。制度の流れと、中小企業の資金繰りにとっての意味を整理しておきましょう。

何が起きているのか——政府方針と産業界の動き

政府は2021年の成長戦略実行計画で、5年後(=2026年度末)までの約束手形の利用廃止を目指す方針を打ち出しました。これを受けて各業界団体が自主行動計画を作り、手形から振込・でんさい(電子記録債権)への移行を進めています。また銀行界でも紙の手形・小切手の交換をなくしていく取り組みが進んでいます。さらに下請代金の支払いについては、手形等のサイトを60日以内に短縮する方向での運用厳格化が2024年秋から進められています(本記事の記載は2026年7月時点の一般的な流れの整理です。個別の適用関係は最新の公表資料をご確認ください)。要するに、「手形は長いサイトで支払いを先延ばしする道具」という時代が終わりつつある、ということです。

受け取る側への影響——基本は追い風

手形で受け取ってきた会社にとって、振込化・サイト短縮は基本的に資金繰りの追い風です。120日手形が60日以内の振込になれば、入金は数か月単位で早まります。手形の割引料や取立手数料、紛失リスク、印紙のコストも消えます。一方で注意点もあります。手形割引で早期資金化していた会社は、割引という資金調達手段がなくなるため、入金までの期間は短くなるが、即日資金化の手段は変わることになります。でんさいには割引に相当する資金化の仕組みがあるので、取引金融機関に移行後の資金化手段を確認しておくと安心です。

支払う側への影響——運転資金の増加を先に見積もる

影響が重いのは、手形を振り出してきた側です。手形の長いサイトは、実質的に取引先からの信用供与でした。それが短いサイトの振込に変わるということは、支払いの前倒し=必要運転資金の増加を意味します。たとえば月の仕入が1,000万円で支払サイトが120日から60日に縮まれば、単純化すると約2か月分・2,000万円規模の資金が追加で必要になる計算です(実際の影響は締め・支払条件により異なります)。この増加分は一時的な赤字補填ではなく構造的な増加運転資金なので、金融機関にも説明しやすい資金使途です。移行の予告が来てから慌てるのではなく、資金繰り表で影響額を試算し、必要なら先に融資の相談を始めるのが賢い順番ではないでしょうか。

でんさいという移行先——手形の使い勝手を電子で

でんさい(電子記録債権)は、手形の機能を電子化した仕組みです。支払期日までの信用供与という手形的な使い方ができ、割引による資金化や譲渡(裏書に相当)も可能。紙の保管・郵送・紛失リスクがなく、分割譲渡ができる点は紙の手形よりも柔軟です。利用には取引金融機関経由での利用契約が必要で、手数料体系は金融機関により異なります。取引先からでんさい移行の打診があったら、拒否するより手数料と運用を確認したうえで乗る方が、取引継続の面でも合理的な場面が多いと感じます。

いまやるべき3つの棚卸し

受取側の棚卸し——手形で受け取っている取引先・金額・サイトを一覧化し、割引に依存している金額を把握する。②支払側の棚卸し——手形で支払っている先を一覧化し、サイト短縮時の必要運転資金の増加額を試算する。③手段の準備——でんさいの利用契約、振込業務の体制、資金が必要な場合の調達計画。この3点を、取引先から言われる前に済ませておく。資金繰り表があれば半日でできる作業です。当事務所でも、移行影響の試算から金融機関への説明資料づくりまで伴走しています。

💬 目加多のひとこと

商慣行の変わり目は、資金繰りの弱い会社には試練に、準備した会社には信用を上げるチャンスになります。「サイト短縮の影響を試算して先に相談に来る社長」を、金融機関は間違いなく高く評価します。変化の波は、先に数えた人の味方です。

行政書士 目加多龍

執筆・監修

目加多 龍めかた りょう

行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)

行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/2級FP技能士(AFP)。ブリヂストン系列企業とNEC系列企業で人事・労務の現場15年を経て2026年に独立。個人向けキャリア相談はココナラで約70件・全件★5.0(プラチナランク・2026年7月時点)。障害福祉・障害児支援の指定申請を軸に、資金調達から人材の定着まで、中小企業の「手続き」「資金」「人材」を一体で支援しています。

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