「売上は順調に伸びているのに、なぜか手元の資金繰りが苦しい」「利益は出ているはずなのに、お金が残らない」——松戸・鎌ヶ谷・市川・三郷の中小企業の経営者から、増収期のお金についてのご相談をいただきます。
これは経営が悪いわけではなく、「増加運転資金」という、成長期につきものの現象です。仕組みを知らないと、好調なはずなのに資金が詰まり、最悪の場合は黒字倒産に近い状態にもなりかねません。本記事では、行政書士の立場から、増収期の財務で押さえるべき考え方を整理します。
運転資金とは何か——「立て替えているお金」
運転資金とは、事業を回すために常に立て替えているお金のことです。ざっくり言えば、売上が入金される前に、仕入れや人件費の支払いが先に来る——その差を埋めるお金です。具体的には、まだ回収していない売掛金や、抱えている在庫が、現金になる前の「眠っているお金」にあたります。
多くの取引では、商品やサービスを提供してから入金までに時間差があります。その間も支払いは続くため、会社は一定の現金を手元に持っておく必要があります。これが運転資金で、事業の規模に応じて必要額が変わります。
売上が増えると、なぜ資金が苦しくなるのか
ここが増収期の落とし穴です。売上が増えると、それに比例して売掛金や在庫も増えます。つまり「現金になる前の利益」が膨らみ、立て替える運転資金も増えるのです。これを増加運転資金と呼びます。
帳簿上は利益が出ていても、その利益は売掛金や在庫に姿を変えていて、手元の現金にはなっていません。だから「儲かっているのにお金がない」が起こります。利益とキャッシュは別物——この原則が、増収期にはっきり表れます。備えがないと、支払いが回らず資金ショートに陥る危険があります。
増収期こそ、融資で備えるのが定石
増加運転資金は、本業が伸びているからこそ発生する「前向きな資金需要」です。これを手元資金だけで賄おうとすると無理が出るため、融資で計画的に手当てするのが定石です。銀行も、増収にともなう運転資金の需要は、健全な資金需要として捉えやすい傾向があります。
大切なのは、資金が詰まってから慌てて借りるのではなく、売上計画から必要な運転資金を見込んで、早めに銀行に相談することです。「なぜこの資金が必要か」を売上の伸びとともに説明できれば、交渉はスムーズになります。
補助金は運転資金には使いにくい——使い分けを知る
「資金が足りないなら補助金を」と考えがちですが、多くの補助金は設備投資など対象が限定され、日々の運転資金には使えないのが一般的です。増加運転資金の手当ては、基本的に融資の役割になります。
補助金は設備投資、運転資金は融資、と性質を分けて考えるのがポイントです。なお、補助金の申請支援は行政書士の業務範囲、雇用関係の助成金は社会保険労務士の領域です。資金の出どころは、自己資金・融資・補助金を性質に応じて組み合わせて設計します。
入金を早め、支払いを整える工夫も効く
融資で備えると同時に、運転資金そのものを軽くする工夫も有効です。請求や入金のサイクルを見直して回収を早める、過剰な在庫を持たない、取引条件を交渉する——こうした地道な改善が、必要な運転資金を抑え、資金繰りを楽にします。
増収期は、攻めと同時に足元の財務を固める好機です。売上の伸びを本物の成長につなげるためにも、運転資金の管理を経営の視野に入れておくことが、中小企業の安定した拡大を支えます。
よくある質問
Q. 売上が増えているのに資金が苦しいのは経営が悪いからですか?
いいえ、多くは「増加運転資金」という成長期につきものの現象です。売上増で売掛金や在庫が増え、立て替えるお金が膨らむために起こります。仕組みを知って備えれば対処できます。
Q. 増加運転資金はどう手当てすればいいですか?
基本は融資です。本業の伸びにともなう前向きな資金需要なので、銀行も健全な需要として捉えやすい傾向があります。売上計画から必要額を見込み、早めに相談するのがコツです。
Q. 補助金で運転資金を賄えますか?
多くの補助金は設備投資などが対象で、日々の運転資金には使いにくいのが一般的です。運転資金は融資、設備投資は補助金、と性質で使い分けるのが基本です。
Q. 黒字なのに資金ショートすることはありますか?
あります。利益が売掛金や在庫に変わって手元に現金がないと、支払いが回らず黒字でも資金が詰まります。これが黒字倒産で、増収期はとくに注意が必要です。
まとめ
売上が伸びているのに資金が苦しいのは、増加運転資金が原因です。売上増で売掛金や在庫が膨らみ、利益が現金になる前に立て替えが増えるためで、利益とキャッシュは別物だという原則が表れた状態です。増収期こそ、融資で前向きに備えるのが定石です。
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