— 30秒でわかる結論 —
Q. 仕事のきつい面を正直に伝えたら、応募が来なくなりませんか?
応募数は多少減るかもしれません。しかし減るのは「その大変さを受け入れられない人」=入社してもすぐ辞めてしまった可能性が高い人です。RJP(現実的職務予告)の研究や現場の実感が示すのは、事前に現実を知って入った人は覚悟ができており、ギャップ離職が減るということ。採用の成果は応募数ではなく「1年後に活躍している人の数」で測るべきではないでしょうか。きれいごとで10人集めて7人辞めるより、正直に伝えて5人集めて4人残る方が、コストも現場の消耗も小さくて済みます。
「入ってみたら聞いていた話と違った」——早期離職の退職理由として、あまりにもよく聞く言葉です。人手不足のなか、つい仕事の良い面ばかりを強調して採用してしまう。その気持ちは痛いほど分かります。でも、その「盛った採用」こそが早期離職の種を蒔いているとしたら。今日ご紹介するのは、その逆を行く採用手法——RJPです。
RJPとは——「ワクチン」としての事前情報
RJP(Realistic Job Preview=現実的職務予告)は、仕事や職場の現実を、良い面も大変な面も含めて入社前に伝える採用アプローチです。アメリカの産業心理学の研究に由来する考え方で、その効果はよく「ワクチン」に例えられます。入社前に少量の「現実」を接種しておくと、入社後に本物の現実に直面したときのショック(リアリティ・ショック)への耐性ができる、というわけです。あわせて、現実を知った段階で「自分には合わない」と辞退するセルフスクリーニングが働き、ミスマッチな入社そのものが減ります。そしてもうひとつ見逃せないのが、「この会社は正直だ」という信頼の形成。大変さを隠さない会社の求人は、それ自体が誠実さのメッセージになります。
「応募が減る」問題への向き合い方
RJPをご提案すると、ほぼ必ず「応募が減りませんか」と聞かれます。正直にお答えすると、減ることはあります。でも考えてみてください。減った応募は、入社していたら高い確率で早期離職していた層です。採用・受け入れ・教育にかかったコストが数か月で消え、現場は「また辞めた」と消耗し、次の採用のハードルが上がる——早期離職のコストを計算すれば、入口で自己選択してもらう方がはるかに安い。採用のKPIを「応募数」から「1年後定着数」に変えること。RJPはその指標転換とセットで効く手法です。
実践①——求人票に「大変なこと」の欄を作る
一番手軽で効果的なのが、求人票や採用ページに「正直にお伝えします」という欄を設けることです。「夏の現場は暑いです」「立ち仕事が中心で、最初の1か月は足が張ります」「利用者様のご家族対応で、心が揺れる日もあります」——具体的で、かつその大変さへの会社側の手当て(空調服支給、休憩の取り方、先輩のフォロー体制)をセットで書くのがコツです。大変さだけ書けば脅しになり、手当てとセットで書けば誠実さになります。
実践②——面接は「口説く場」から「相互確認の場」へ
面接でも、こちらの弱みを含めて開示します。おすすめは、面接官が自分の失敗談・きつかった時期の話をすること。「私も入社半年は毎日辞めたかったんです。変わったきっかけは——」という話は、どんな福利厚生の説明より候補者の心に残ります。また、候補者と年齢の近い現場社員と話す時間を設けるのも効果的です。社長の前では聞けない「本当のところ」を聞ける場があると、入社の意思決定の質が上がり、内定辞退の防止にもつながります。
実践③——見学・体験で「百聞は一見に如かず」
可能な業態なら、職場見学や半日体験まで用意できると理想です。介護・建設・製造・飲食など現場のある仕事ほど、1時間の見学が1万字の求人票に勝ります。受け入れ側は「見せられる職場か」を問われることになりますが、それこそが本質で——RJPは職場改善の鏡でもあります。正直に見せられない現実があるなら、採用の前にそこを直す。順番はそれが正解だと私は思います。定着まで見据えた採用設計は、人材活躍サポートとしてお手伝いしています。
💬 目加多のひとこと
私自身、転職相談で「その会社、大変なことは何て言ってました?」と必ず聞きます。「いい話しかされていません」という方ほど、入社後の相談が重くなる——約70件のキャリア相談で見てきた、静かな法則です。正直は、採用における最強の戦略だと信じています。

執筆・監修
目加多 龍めかた りょう
行政書士 × 財務・キャリアコンサルタント(目加多龍行政書士事務所 代表)
行政書士/国家資格キャリアコンサルタント/2級FP技能士(AFP)。ブリヂストン系列企業とNEC系列企業で人事・労務の現場15年を経て2026年に独立。個人向けキャリア相談はココナラで約70件・全件★5.0(プラチナランク・2026年7月時点)。障害福祉・障害児支援の指定申請を軸に、資金調達から人材の定着まで、中小企業の「手続き」「資金」「人材」を一体で支援しています。
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