— 30秒でわかる結論 —

Q. 処遇改善加算を取っている事業所が、職員の賃金を下げたら問題になりますか?

加算による改善分を除いた賃金全体の水準を下げるなら、特別事情届出書が必要です。届出をせずに下げると、加算の返還や取消しの対象になります。一方、賞与など一部の項目が下がっても全体の水準が下がっていなければ届出は不要で、ベテランの退職と新人の採用で総額が減っただけなら、前年度と比べる側の額を調整できます。どの場合も、一部の職員の賃金を下げるには労使の合意が要ります。根拠は令和8年度の国の通知(令和8年3月31日)とQ&A第1版(令和8年4月9日)です(制度。2026年11月3日確認)。

こんな方に読んでいただきたい記事です

  • 放デイ・児発・就労継続支援B型・グループホームを運営していて、利用者の減少などで人件費を見直したい経営者の方
  • 冬の賞与を例年より減らすことを考えていて、処遇改善加算への影響が気になる方
  • ベテラン職員が辞めて新人を採り、実績報告で前年度より賃金総額が少なくなりそうな方

ご相談いただくと、こう進みます

  1. 最初の30分の無料相談で、考えている見直しが「賃金全体の水準の引下げ」に当たるかを、給与台帳と処遇改善計画書を見ながら一緒に確かめます
  2. ご依頼後は、前年度との比較表を作り、特別事情届出書が要る場合はその作成まで進めます
  3. その後は、実績報告の前に、同じ比較表で前年度との差を見直します

処遇改善加算を取っている事業所は、加算の分を除いた賃金水準を下げてはいけないのが原則です

処遇改善加算は、加算額に相当する賃金改善を行うことが条件の加算です。令和8年度の国の通知は、賃金改善の対象にする項目(基本給・手当・賞与など)を決めたうえで、「特定した項目を含め、賃金水準(賃金の高さの水準をいう。)を低下させてはならない」としています。例外は、通知5(2)の特別事情届出書を出す場合だけです(制度。厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」令和8年3月31日 障障発0331第1号・こ支障第78号、2(2)(2026年11月3日確認))。

つまり、加算で上乗せした分は配っていても、その下にある元の賃金を削っていれば、改善したことになりません。国が実績報告で前年度と比べるのは、この「加算の分を除いた賃金」が下がっていないかを確かめるためです(Q&A問1-2)。

特別事情届出書が要る場合・要らない場合

線引きは、国のQ&A(第1版)の問1-2、問1-12、問1-13にまとまっています(制度。厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」令和8年4月9日事務連絡(2026年11月3日確認))。

起きたこと特別事情届出書ほかに必要なこと根拠
経営悪化で、賃金全体の水準を下げる必要合理的な理由に基づく労使の合意通知5(2)、Q&A問1-11
基本給は上げたが、賞与を下げた結果、賃金全体の水準が下がった必要同上Q&A問1-12
一部の項目(賞与など)は下がったが、賃金全体の水準は下がっていない不要—Q&A問1-12
一部の職員を下げ、ほかの職員を上げて、全体の水準は下がっていない不要下げる職員について、不利益変更として合理的な理由と労使の合意Q&A問1-13
ベースダウンはしていないが、職員の減少や入れ替わりで賃金総額が前年度より減った不要(比較する前年度の額を調整してよい)調整の方法を説明できる計算を残すQ&A問1-2

見るのは「項目」でも「人」でもなく、加算の分を除いた賃金全体の水準です。ただし、届出が要らない場合でも、一人ひとりの賃金を下げることそのものは労働条件の問題として残ります。

ベテランが辞めて新人を採ったときは「前年度の額」を調整します

実績報告では、①「令和8年度の加算の影響を除いた賃金額」と、②「令和7年度の加算と独自の賃金改善の影響を除いた賃金額」を比べます。Q&A問1-2は、ベースダウンをしたわけではないのに、事業規模の縮小による職員の減少や、勤続が長く給与の高い職員が辞めて新卒を採ったといった入れ替わりで①が②を下回る場合は、②の額を調整してもよいとしています。

調整の方法として例示されているのは、次の2つです。

  • 退職者は、その職員が前年度にいなかったものと仮定して、前年度の賃金総額を推計する
  • 新規採用者は、同じ職で勤続年数などが同程度の職員が、前年度にもいたものと仮定して推計する

Q&Aの例では、令和7年度の実際の賃金総額は7,500万円(勤続10年・月35万円が10人、勤続5年・月30万円が5人、勤続1年・月25万円が5人)でした。令和8年度に勤続10年の5人が辞め、勤続1年の5人を採ると総額は6,900万円になります。この場合、令和7年度の側も同じ顔ぶれだったと仮定して6,900万円に調整し、両者を比べます(Q&A問1-2の例)。

人事15年・財務の目で見ると

賃金総額は、一人ひとりの給与を変えなくても、誰が辞めて誰が入ったかで上下します。実績報告の時期になってから前年度の名簿を作り直すのは手間がかかります。退職と採用があった月に、名前・勤続・月額を1行ずつ記録しておくと、調整の計算がそのまま説明資料になります。

特別事情届出書に書く4つのこと

経営悪化でやむを得ず賃金全体の水準を下げる場合、別紙様式5の特別事情届出書に次の4つを書きます(同通知 5(2)、Q&A問1-12)。

  1. 法人の収支(障害福祉サービス等事業の収支に限る)について、利用者数の大幅な減少などで経営が悪化し、一定期間にわたって赤字である、資金繰りに支障が出ている、などの状況を示す内容
  2. 職員の賃金水準の引下げの内容
  3. 法人の経営と、職員の賃金水準の改善の見込み
  4. 賃金水準を下げることについて、適切に労使の合意を得ているなどの手続きの内容(合意の時期と方法)

年度をまたいで引き下げが続く場合は、次年度の処遇改善加算の届出のときに、特別事情届出書を改めて出す必要があります(同通知 5(2))。また、引下げの理由になった状況が改善したら、できるだけ速やかに元の水準に戻す必要があるとされています(Q&A問1-12)。いつまでに届け出るかの期日は通知に書かれていないため、提出の時期は指定権者に確かめてください。

📗 関連:処遇改善加算の「配り方」4つの縛りと、実績報告の期限(翌々月の末日)。前年度との比較は、実績報告で確かめられます。

— この段階でご相談いただく理由 —

賃金の見直しは、決めてから届出を考えると、労使の合意や説明の段取りが後から足りなくなります。見直しを決める前に、前年度との比較表で「全体の水準が下がるか」を先に確かめておくと、届出が要るかどうかと、職員に何を説明するかが同時に決まります。

処遇改善加算の届出支援を見る

届出をせずに下げると、返還か取消しの対象になります

通知7は、「賃金水準の引下げを行いながら5(2)の特別事情届出書の届出が行われていない」場合を、算定要件を満たさない例として挙げ、既に支払われた加算の一部または全部の返還、または加算の取消しの対象としています(同通知 7(1))。

また、業績に連動する賞与が業績に応じて増減すること自体は妨げられませんが、処遇改善加算による賃金改善は、その変動と明確に区分されている必要があります(Q&A問1-11)。賞与の中に処遇改善の分を混ぜて払っている場合は、業績で減った部分と処遇改善の部分を分けて説明できるようにしておいてください。

なお、年度の終わりに賃金改善額が加算額に届かなかった場合は、その不足分を賞与などの一時金で追加して配れば、返還を求めない扱いにしてよいとされています(Q&A問1-9)。これは「改善額の不足」の話で、元の賃金水準を下げた場合の特別事情届出書とは別のものです。

今月やること(賞与を決める前に1回確かめる)

まず、令和7年度と令和8年度の、加算の分を除いた賃金総額の見込みを並べます。次に、退職と採用があった職員を書き出し、Q&A問1-2の方法で令和7年度側を調整します。そのうえで、今考えている賞与や手当の見直しをした場合に、令和8年度側が調整後の令和7年度を下回らないかを見ます。

下回るなら、見直しの幅を変えるか、特別事情届出書を出す前提で労使の合意の手続きを進めるかを決めます。一部の職員だけ下がる場合は、全体が下がらなくても本人との合意が必要です。職員から処遇改善の賃金改善について照会があったときは、書面などで分かりやすく答えることも求められています(同通知 8(1))。

地域差分——ルールは全国共通、届出先と提出時期の運用は指定権者ごと

特別事情届出書の要否と記載事項は国の通知で決まっていて、地域による違いはありません。届出先は事業所の指定権者です。提出の時期や受付の方法は、指定権者の案内で確かめてください(2026年11月3日確認)。

たとえば、こんな場面で迷っていませんか

就労継続支援B型を運営している法人の代表の方。今年度は利用者が減り、半年ほど障害福祉の事業が赤字です。冬の賞与を例年の半分にしようと考えています。

処遇改善加算はⅡイを取っていて、加算の分は毎月の処遇改善手当で配っています。夏に勤続の長い職員が1人辞め、秋に新人を1人採りました。賞与を減らしたら処遇改善加算に響くのか、何か届出が要るのかが分からず、賞与の額を決められずにいます。

この場合は、まず職員の入れ替わりを前年度側に反映した比較表を作り、賞与を減らしたときに賃金全体の水準が下がるかを確かめるところから始めます。

当事務所にご相談いただいた場合の進め方

  1. 1. ご相談の前に手元に用意していただくもの
    令和7年度と令和8年度の給与台帳(賞与を含む)、給与規程(賃金規程)、提出済みの処遇改善計画書の控え、退職者と採用者の一覧、障害福祉の事業の月次の収支が分かる資料をお手元にご用意ください。
  2. 2. 初回30分の無料相談で一緒に確認すること
    考えている見直しで、加算の分を除いた賃金全体の水準が下がるか、職員の入れ替わりを前年度側にどう反映するか、特別事情届出書が要るかを、書類を見ながら一緒に確かめます。
  3. 3. ご依頼後の進め方当事務所がやること:前年度との比較表と調整の計算を作ります。特別事情届出書、処遇改善計画書・実績報告書の作成をお手伝いします。料金(税込)は、計画書の新規作成55,000円、年度更新44,000円、実績報告55,000円です。指定申請と同時に出す初回の処遇改善加算は、指定申請の料金に含まれます。特別事情届出書の料金は、内容を伺ってからお見積りします。お客様にお願いすること:賃金の見直しの決定、職員への説明と労使の合意は、事業所で行っていただきます。就業規則の変更の作成・届出は社会保険労務士の業務のため、必要な場合はその旨をお伝えします。
  4. 4. その後
    その後は、退職や採用があったとき、実績報告の前に、同じ比較表で見直します。

料金は料金表と料金シミュレーションでご確認いただけます。

参考にした一次資料

  • 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長・こども家庭庁支援局障害児支援課長「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」令和8年3月31日 障障発0331第1号・こ支障第78号(2(2)賃金水準を低下させない、5(2)特別事情届出書、7 加算の停止、8(1)照会への回答)(2026年11月3日確認)
  • 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課・こども家庭庁支援局障害児支援課「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」令和8年4月9日事務連絡(問1-2、問1-9、問1-11、問1-12、問1-13)(2026年11月3日確認)
  • 厚生労働省「福祉・介護職員の処遇改善」(通知・Q&Aの最新版はこのページで確認してください)

💬 目加多のひとこと

賃金を下げるかどうかは、経営の判断です。処遇改善加算の制度が求めているのは、下げるなら理由と手続きを書面で示すことです。決める前に前年度との比較表を1枚作っておくと、判断も説明も楽になります。

行政書士 目加多龍

執筆・監修

目加多 龍めかた りょう

行政書士 × 人事・財務アドバイザー(目加多龍行政書士事務所 代表)

行政書士/2級FP技能士(AFP)/国家資格キャリアコンサルタント。
障害福祉・障害児支援とNPO法人を専門にしています。放課後等デイサービス・児童発達支援・就労継続支援A型・B型・グループホーム(共同生活援助)などの指定申請、処遇改善加算・変更届・指定更新・運営指導(実地指導)への対応を支援します。NPO法人は、設立認証から事業報告書・役員変更などの運営まで支援します。
企業人事15年の経験を土台に、児発管・サビ管の採用・定着、融資・補助金や資金繰りまで、「書類・人・お金」を一体で支えます。

プロフィールを見る →