— 30秒でわかる結論 —

Q. 処遇改善加算の「キャリアパス要件Ⅲ」では、何を整えればよいのですか?

福祉・介護職員が「経験」「資格」「評価」のいずれかに応じて昇給する仕組みを設け、就業規則など(常時10人未満の事業所は内規でも可)に書面で定めて、全ての福祉・介護職員に周知することです。処遇改善加算のⅠ・Ⅱ・Ⅲで必要で、Ⅳでは要りません。昇給は基本給が望ましいものの手当や賞与でもよく、非常勤を含む全ての福祉・介護職員が対象になり得る仕組みが必要です。評価で昇給を決めるなら、評価基準・昇給条件・判定の時期を書面にします。根拠は令和8年度の国の通知(令和8年3月31日)とQ&A第1版(令和8年4月9日)です(制度。2026年11月4日確認)。

こんな方に読んでいただきたい記事です

  • 放デイ・児発・就労継続支援B型・グループホームを運営していて、処遇改善加算をⅣからⅢ以上に上げたい経営者の方
  • 給与規程に「昇給することがある」としか書いておらず、キャリアパス要件Ⅲを満たしているか自信がない方
  • 令和8年度の計画書で昇給の仕組みの整備を誓約し、令和9年3月末までに仕上げる必要がある方

ご相談いただくと、こう進みます

  1. 最初の30分の無料相談で、今の給与規程と処遇改善計画書を見ながら、キャリアパス要件Ⅲに当たる昇給の定めがあるかを一緒に確かめます
  2. ご依頼後は、経験・資格・評価のどの型で昇給を定めるかを整理し、処遇改善計画書の記載までつなげます
  3. その後は、実績報告の前に、定めた仕組みどおりに昇給を判定したかを一緒に見直します

キャリアパス要件Ⅲは、処遇改善加算のⅠ・Ⅱ・Ⅲで必要な「昇給の仕組み」の要件です

令和8年度の国の通知は、処遇改善加算の要件を①月額賃金改善要件から⑦職場環境等要件までに分けています。キャリアパス要件Ⅲはその④で、正式には「昇給の仕組みの整備等」です。通知は、処遇改善加算Ⅳは④から⑥までの要件を満たさなくても算定できるとしているため、キャリアパス要件Ⅲが必要になるのは、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲを取る場合です(令和8年6月以降の区分ではⅠイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ)(制度。厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」令和8年3月31日 障障発0331第1号・こ支障第78号、3(1)(2026年11月4日確認))。

なお、計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援は、令和8年6月以降、通知の別紙1表1-4に載る別の要件の組み合わせで算定するため、この記事の対象から外しています(同通知 3(2))。

通知が求めているのは、次の2つです(同通知 3(1)④)。

  1. 福祉・介護職員について、経験もしくは資格等に応じて昇給する仕組み、または一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けていること
  2. その内容について、就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備し、全ての福祉・介護職員に周知していること(常時雇用する者が10人未満の事業所など、就業規則の作成義務がない事業所は、内規等の整備・周知でもよい)

昇給の仕組みは「経験」「資格」「評価」の3つの型から選びます

通知は、昇給の仕組みを次のaからcまでのいずれかに当たるものとしています。組み合わせて使うこともできます(実績報告書の様式でも、該当するものを全てチェックする形になっています)。

型中身(通知の文言)書面にするときの注意根拠
a 経験「勤続年数」や「経験年数」などに応じて昇給する仕組み何年で、どの項目が、いくら上がるかを読み取れる形にする通知3(1)④一a
b 資格介護福祉士等の資格の取得や、実務者研修等の修了状況に応じて昇給する仕組み別の法人などで資格を取ってから入職した人も昇給できる仕組みであることが必要。「在職中に取った人だけ」にしない通知3(1)④一b
c 評価「実技試験」や「人事評価」などの結果に基づき、一定の基準で定期に昇給を判定する仕組み客観的な評価基準・昇給条件・判定の時期を明文化する。判定の時期は事業所の規模や経営状況に応じて決めてよい通知3(1)④一c、Q&A問4-9

国の様式(別紙様式2)には、参考として小規模事業所用のキャリアパス・賃金規程の例が載っています。その例では、職位ごとに任用要件(勤続年数など)と給与を並べ、「『任用要件』欄に記載の勤続年数又は研修の受講状況に応じて昇給するものとし、職位に応じた給与を支給する」と注記しています。10人未満の事業所で内規を作るときの出発点にできます(Q&A問4-1も、就業規則作成義務のない事業場は特にこの例を参考にするよう求めています)。

キャリアパス要件Ⅰの「賃金体系」だけでは足りません

よく似た要件にキャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系の整備等)があります。国のQ&A(第1版、問4-6)は、2つの違いを次のように説明しています(制度。厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」令和8年4月9日事務連絡(2026年11月4日確認))。

  • キャリアパス要件Ⅰ:職位・職責・職務内容等に応じた任用要件と賃金体系を整える。昇給に関する内容を含めることまでは求めていない
  • キャリアパス要件Ⅲ:経験、資格または評価に基づく昇給の仕組みを設ける

つまり、「主任は月給いくら、一般職はいくら」という表があるだけでは、キャリアパス要件Ⅰには当たっても、キャリアパス要件Ⅲには足りないことがあります。どうなったら、どれだけ上がるのかが書かれているかを見てください。

人事15年・財務の目で見ると

評価で昇給を決める型は、職員の納得感を作りやすい反面、評価する人の負担が毎年かかります。職員が数人の事業所なら、まず勤続年数や資格で上がる型を土台にして、評価型は後から足す方が回しやすいことがあります。どの型でも、昇給の原資を毎年どれだけ見込むかを先に試算しておくと、規程に書く金額を決めやすくなります。

昇給は手当や賞与でもよく、非常勤も対象になり得る仕組みにします

Q&Aは、昇給の方式と対象者について次のように答えています。

  • 方式:基本給による賃金改善が望ましいが、基本給、手当、賞与等を問わない(Q&A問4-7)
  • 非常勤職員:非常勤職員を含め、その事業所や法人に雇用される全ての福祉・介護職員が対象となり得る仕組みである必要がある(Q&A問4-8)
  • 派遣職員:派遣労働者を処遇改善加算の対象にする場合で、キャリアパス要件Ⅲを満たす必要があるときは、その派遣職員についても要件に当たる昇給の仕組みが整備されていることが必要(Q&A問4-8)

常勤だけの昇給表を作って、パートの時給には昇給の定めがない、という形はこの点で足りなくなります。時給の職員にも、経験・資格・評価のどれで、いくら上がるかを書いておきます。

📗 関連:処遇改善加算の「配り方」4つの縛り。キャリアパス要件Ⅲは「昇給の仕組みがあるか」、配り方の縛りは「加算をどう配るか」の話で、別々に確かめます。

— この段階でご相談いただく理由 —

昇給の仕組みは、計画書のチェック欄に印を付けるだけでは足りず、根拠になる規程が書面で残っていることが前提です。区分を上げる計画書を出す前に、今の給与規程のどこが「昇給の仕組み」に当たるかを確かめておくと、計画書の記載と規程の中身がずれません。

処遇改善加算の届出支援を見る

令和8年度は「誓約」で先に算定できる場合があります。期限は令和9年3月末です

令和8年度に限り、処遇改善加算の申請時点で令和8年度特例要件(通知3(1)⑧)を満たす事業所は、処遇改善計画書で令和9年3月末までに昇給の仕組みを整備すると誓約すれば、申請時点からキャリアパス要件Ⅲを満たしているものとして扱われます。誓約した場合は、令和9年3月末までに仕組みを整え、実績報告書でその旨を報告します(同通知 3(1)④)。

令和7年度に誓約して整備が間に合わなかった事業所について、Q&A問4-10は、原則として令和7年度の実績報告書で整備を報告しなければ返還の対象になるとしています。ただし、令和8年度の申請時点で令和8年度特例要件を満たし(取組を誓約する場合を含む)、令和8年度の計画書で改めて整備を誓約したうえで4月以降も加算を取る場合は、令和7年度分の返還を求めない扱いです。その場合は令和8年度中に整備して、令和8年度の実績報告書で報告します。

誓約は「後で整える」約束なので、期限までに規程ができていなければ、同じ問題が残ります。令和9年3月末から逆算して、規程の案・職員への周知・就業規則の変更手続きの順に日程を置いてください。

規程は保管し、求められたら見せられるようにしておきます

通知6は、処遇改善加算を算定する事業者に、計画書の根拠となる資料と、就業規則等(キャリアパス要件Ⅲの昇給の仕組みに関する規程を就業規則とは別に作っている場合は、その規程を含む)を保管し、都道府県知事等から求めがあれば速やかに提示することを求めています(同通知 6)。実績報告書の様式でも、計画書の時点で要件を満たすとしていた事業所は、キャリアパス要件Ⅲの欄で、どの型の仕組みかをチェックする形になっています。

職員から処遇改善の賃金改善について照会があったときは、書面などで分かりやすく答えることも求められています(同通知 8(1))。昇給の仕組みを周知しておくことは、この説明の土台にもなります。

今月やること(給与規程を1回読み直す)

まず、今の給与規程(賃金規程)と、提出済みの処遇改善計画書の控えを並べます。次に、規程の中に「勤続年数」「資格」「評価」のどれかで昇給が決まる条文があるか、その条文が常勤だけでなく非常勤の職員にも当てはまるかを見ます。評価で昇給を決めているなら、評価基準・昇給条件・判定の時期の3つが書かれているかを確かめます。

足りない場合は、規程に書き足す内容を決め、職員への周知の方法(掲示・配布など)まで決めます。常時10人以上の事業所では就業規則の変更の手続きも要るため、社会保険労務士への相談も早めに入れてください。

地域差分——要件は全国共通、提出先と確認の運用は指定権者ごと

キャリアパス要件Ⅲの中身は国の通知で決まっていて、地域による違いはありません。処遇改善計画書・実績報告書の提出先は事業所の指定権者です。規程の写しの添付を求めるかどうかなど、提出時の運用は指定権者の案内で確かめてください(2026年11月4日確認)。

たとえば、こんな場面で迷っていませんか

放課後等デイサービスを1か所運営している法人の代表の方。職員は常勤4人、パート3人です。処遇改善加算はⅣを取っていますが、来年度はⅢ以上に上げたいと考えています。

給与規程には職位ごとの基本給の表はあるものの、昇給については「毎年4月に昇給することがある」とだけ書いてあります。パートの時給には昇給の定めがありません。この規程でキャリアパス要件Ⅲを満たすと言えるのか、何を書き足せばよいのかが分からずにいます。

この場合は、まず昇給を経験・資格・評価のどれで決めるかを選び、常勤とパートの両方に当てはまる昇給の定めを書き足すところから始めます。

当事務所にご相談いただいた場合の進め方

  1. 1. ご相談の前に手元に用意していただくもの
    給与規程(賃金規程)、就業規則(ある場合)、提出済みの処遇改善計画書の控え、職員の一覧(常勤・非常勤、勤続年数、資格)をお手元にご用意ください。
  2. 2. 初回30分の無料相談で一緒に確認すること
    今の規程にキャリアパス要件Ⅲに当たる昇給の定めがあるか、非常勤の職員が対象に入っているか、評価型なら基準・条件・時期が書かれているかを、書類を見ながら一緒に確かめます。
  3. 3. ご依頼後の進め方当事務所がやること:経験・資格・評価のどの型で昇給を定めるかを一緒に整理し、処遇改善計画書・実績報告書の作成をお手伝いします。料金(税込)は、計画書の新規作成55,000円、年度更新44,000円、実績報告55,000円です。指定申請と同時に出す初回の処遇改善加算は、指定申請の料金に含まれます。お客様にお願いすること:昇給の仕組みの決定と職員への周知は、事業所で行っていただきます。就業規則の作成・変更・届出は社会保険労務士の業務のため、必要な場合はその旨をお伝えします。
  4. 4. その後
    その後は、実績報告の前に、定めた仕組みどおりに昇給を判定したかを一緒に見直します。

料金は料金表と料金シミュレーションでご確認いただけます。

参考にした一次資料

  • 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長・こども家庭庁支援局障害児支援課長「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」令和8年3月31日 障障発0331第1号・こ支障第78号(3(1)区分ごとの要件と④キャリアパス要件Ⅲ、3(2)表1-4のサービス、6 資料の保管及び提示、8(1)照会への回答、別紙様式2の参考2 キャリアパス・賃金規程例、別紙様式3 実績報告書)(2026年11月4日確認)
  • 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課・こども家庭庁支援局障害児支援課「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」令和8年4月9日事務連絡(問4-1、問4-6、問4-7、問4-8、問4-9、問4-10)(2026年11月4日確認)
  • 厚生労働省「福祉・介護職員の処遇改善」(通知・Q&Aの最新版はこのページで確認してください)

💬 目加多のひとこと

昇給の仕組みは、加算の要件である前に、職員が「この先どうなれば給料が上がるのか」を知るための約束です。規程に1行書き足すだけで済む事業所もあります。まずは今の規程を読み直すところから始めてみてください。

行政書士 目加多龍

執筆・監修

目加多 龍めかた りょう

行政書士 × 人事・財務アドバイザー(目加多龍行政書士事務所 代表)

行政書士/2級FP技能士(AFP)/国家資格キャリアコンサルタント。
障害福祉・障害児支援とNPO法人を専門にしています。放課後等デイサービス・児童発達支援・就労継続支援A型・B型・グループホーム(共同生活援助)などの指定申請、処遇改善加算・変更届・指定更新・運営指導(実地指導)への対応を支援します。NPO法人は、設立認証から事業報告書・役員変更などの運営まで支援します。
企業人事15年の経験を土台に、児発管・サビ管の採用・定着、融資・補助金や資金繰りまで、「書類・人・お金」を一体で支えます。

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