決算書で見るべき財務指標トップ5――自己資本比率・流動比率など貸借対照表の5指標を、福祉向けに読み替える
この記事のポイント
決算書(貸借対照表)で見るべき指標は5つ。①自己資本比率(体力)②流動比率(短期の支払い能力)③負債比率(借金の重さ)④当座比率(より厳しい支払い能力)⑤固定長期適合率(設備のお金の組み方)。福祉ならではの読み替えのポイントは、給付費の入金が約2か月遅れることです。
— 30秒でわかる結論 —
Q. 障害福祉の事業所が、決算書で見るべき数字は何ですか?
貸借対照表(B/S)の5つの指標です。自己資本比率・流動比率・負債比率・当座比率・固定長期適合率。どれも決算書があれば割り算だけで出せます。目安の数字と、給付費の入金が約2か月遅れる障害福祉ならではの読み替えをまとめました。
決算書は、年に一度、税理士さんに作ってもらって終わり。そんな事業所は少なくありません。
でも、融資を受けるとき、補助金を申請するとき、2か所目・3か所目の事業所を考えるとき。相手が真っ先に見るのは、その決算書です。
私が財務コンサルタントの養成講座で学んだ「貸借対照表(B/S)で見るべき5つの指標」を、障害福祉の事業所向けに読み替えて紹介します。貸借対照表は、会社の「健康診断書」のようなものです。むずかしい計算は出てきません。
| 指標 | 計算式 | 目安 | 何が分かるか |
|---|---|---|---|
| 1. 自己資本比率 | 純資産 ÷ 総資産 × 100 | 40%以上 | 事業所の体力そのもの |
| 2. 流動比率 | 流動資産 ÷ 流動負債 × 100 | 200%で安心(最低100%) | 短期の支払い能力 |
| 3. 負債比率 | 負債 ÷ 純資産 × 100 | 100%以下 | 借金という重荷の大きさ |
| 4. 当座比率 | 当座資産 ÷ 流動負債 × 100 | 100%以上 | 在庫を除いた、より厳しい支払い能力 |
| 5. 固定長期適合率 | 固定資産 ÷(純資産 + 固定負債)× 100 | 100%以下 | 設備を長期のお金でまかなえているか |
1. 自己資本比率 ― 事業所の「体力」そのもの
計算式:純資産 ÷ 総資産 × 100/目安:40%以上
全財産のうち「返さなくていいお金」がどれくらいあるかを見る、財務の最重要指標です。講座では「筋肉量=本当の体力」に例えられていました。
障害福祉の事業所は、開業のときに内装や車両の投資と創業融資が重なり、開業直後はこの比率が低くなりがちです。それ自体は、悪いことではありません。大事なのは、利益を積み上げて、毎年少しずつ比率を上げていくこと。そして融資の場面では「今は低いけれど、こうやって改善していく」という筋道を語れるかどうかが、審査の見られ方を変えます。融資を引き出す決算書の伝え方は、関連記事「銀行に『貸したい』と思ってもらう決算書の伝え方」にもまとめています。
2. 流動比率 ― 「来月の支払い」に困らないか
計算式:流動資産 ÷ 流動負債 × 100/目安:200%あれば安心、最低でも100%以上
1年以内に払うお金に対して、1年以内に現金化できる財産がどれだけあるか。短期の支払い能力を見る指標で、講座の例えは「血液検査=短期の健康」でした。100%を切ると、金融機関からは「資金繰りが危ない」と見られます。
障害福祉ならではの落とし穴はここです。流動資産の中心は、国保連に請求した給付費の未収金。でも、その入金はサービス提供から約2か月遅れです。比率の数字が高くても「今月の給料日に、口座に現金があるか」は別の話。流動比率は、現金・預金の残高とセットで見るのが鉄則です。入金の遅れを織り込んだ資金繰り表の作り方は、融資・資金繰りサポートでもお手伝いしています。
3. 負債比率 ― 借金という「重荷」の大きさ
計算式:負債 ÷ 純資産 × 100/目安:100%以下(自分の蓄えより借金が少ない状態)
自己資本比率の裏返しで、講座では「体脂肪率=重荷」に例えられていました。
開設時の借入そのものは、事業を始めるための必要な投資です。問題は、返済が進んでいるか、それとも運転資金の借入を重ねて重荷が増え続けていないか。負債比率が何倍にも膨らむと、追加の融資も、人への投資も、身動きが取れなくなります。
4. 当座比率 ― 在庫がない福祉だからこそ効く指標
計算式:当座資産 ÷ 流動負債 × 100/目安:100%以上
流動比率から「在庫」を除いた、より厳しい支払い能力の指標です。
障害福祉の事業所は、在庫をほとんど持ちません。つまり流動比率と当座比率が近い数字になり、その分、未収金の入金タイミングがそのまま効いてきます。「決算書の数字は悪くないのに、月末はいつも苦しい」。そんな事業所は、この指標と資金繰り表を並べて見ると、苦しさの正体が見えてきます。
5. 固定長期適合率 ― 設備投資の「お金の組み方」
計算式:固定資産 ÷(純資産 + 固定負債)× 100/目安:100%以下
内装工事、送迎車両、厨房や浴室の設備。長く使う財産を、長期のお金(自分の蓄えと長期の借入)でまかなえているかを見る指標で、講座の例えは「骨密度」でした。
開設時の設備投資が大きい障害福祉では、特に大切な指標です。設備を短期の借入や運転資金で買ってしまうと、毎月の返済が重くなり、資金繰りが静かに崩れていきます。「設備は長期のお金で」が鉄則です。なお、補助金は後払い(精算払い)なので、設備投資では立替資金の確保もあわせて計画してください(関連記事「補助金の入金は『ずっと後』」)。
数字は「判定」ではなく「現在地」
5つとも、決算書(貸借対照表)があれば計算できます。
ただし、目安の数字はあくまで一般論で、理想の形は事業所の段階によって違います。開業したばかりの事業所と、10年続いている事業所では、健康な数字の姿も変わります。数字を見て不安になるためではなく、「今の立ち位置」を知るために使うものだと思ってください。
まずは、ご自分の事業所の5つを出してみることから。自社の決算書で計算してみたけれど、読み方がよく分からない。そんなときは、気軽に聞いてください。書類・人・お金は、つながっています。
※本記事は、財務コンサルタント養成講座の教材(行政書士のための貸借対照表読解ガイド・財務改善ノウハウガイド)の「B/Sで見るべき5つの指標」を土台に、障害福祉事業所向けに読み替えたものです。目安の数字は一般的な基準であり、個別の判断は事業所の状況によって異なります。
よくあるご質問
障害福祉の事業所が、まず見るべき財務指標は何ですか?
自己資本比率です。純資産÷総資産×100で計算し、全財産のうち「返さなくていいお金」の割合を示します。目安は40%以上です。開業直後は設備投資と創業融資で低くなりがちですが、利益を積み上げて毎年少しずつ上げていくことが大切です。
流動比率が高ければ、資金繰りは安心ですか?
それだけでは安心できません。障害福祉の事業所では流動資産の中心が国保連に請求した給付費の未収金で、入金はサービス提供から約2か月遅れます。流動比率は、現金・預金の残高とセットで確認してください。
設備投資をするときに気をつける指標はありますか?
固定長期適合率です。固定資産÷(純資産+固定負債)×100で、100%以下が目安です。内装工事や送迎車両などの設備は、長期の借入など「長期のお金」でまかない、短期の借入や運転資金で買わないことが鉄則です。
目安の数字に届かないと、融資や補助金は受けられませんか?
受けられないわけではありません。目安は「今の立ち位置」を知るためのものです。融資では「今は低いが、こう改善する」という計画を語れることが大切です。補助金は後払い(精算払い)のため、立替資金を確保できるかがポイントになります。
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