— 30秒でわかる結論 —
Q. 借金はできるだけしない経営がいいのですよね?
「借金が少ない」こと自体は健全です。ただ、中小企業の資金繰りの観点では、無借金=金融機関との取引実績ゼロという側面を見落とせません。業績悪化や急な投資機会など「いざ借りたい時」に、実績のない会社の審査は一からになります。本当の目的は無借金ではなく手元資金の厚み——そのためには、平時に借りて きちんと返す「借りられる力(実績と関係)」を育てておく発想が有効ではないでしょうか。
「ようやく借入を完済しました。もう二度と借りません」——ご立派です。ただ、財務の実務をしてきた立場から、あえてお伝えしたいことがあります。その決意、危機のときに会社を守ってくれるでしょうか。
無借金の会社は、銀行から「見えない」
金融機関は、融資取引を通じて会社を理解します。決算書を毎年受け取り、返済履歴を見て、経営者と対話する——この積み重ねが「与信」です。無借金の会社は、この情報がゼロ。いざ資金が必要になった時、初対面から審査が始まります。しかも「いざ」という時は多くの場合、業績が崩れかけた時。最も借りにくいタイミングで、最も不利な立場から交渉することになるのです。
目的は「無借金」ではなく「手元資金の厚み」
倒産は赤字では起きません。現金が尽きた時に起きます。だとすれば守るべきKPIは借入の有無ではなく、手元資金が月商の何か月分あるか。極端に言えば、月商3か月分の現金を持つ有借金企業は、現金1か月分の無借金企業より危機に強い。借入で手元を厚くしておくのは、保険料を払って時間を買う行為と考えることもできます(金利はそのコストです)。
「借りられる力」は平時にしか作れない
雨の日に傘を借りるのが難しいなら、晴れた日に借りて返しておく。具体的には、①必要性が薄くても小さめの融資を受けて予定通り返す(返済実績づくり)、②決算のたびに金融機関へ業績を報告する習慣(情報の非対称性を減らす)、③公庫と民間(保証付き)など複数の調達チャネルを持つ——この3つで、緊急時の初動がまったく変わります。
もちろん、借りすぎは論外
誤解のないように——借入を礼賛しているのではありません。返済能力を超えた借入や、赤字の穴埋めを繰り返す借入は破綻への道です。目安として、借入残高と年間キャッシュフローのバランス(債務償還年数)を定点観測しながら、「厚み」と「重さ」の均衡点を探る。この舵取りこそ財務戦略で、経営者が押さえるべき数字はそのための計器です。
💬 目加多のひとこと
前職の予算管理で学んだのは「キャッシュは酸素」だということです。あって当たり前、なくなった瞬間すべてが止まる。無借金というポリシーより、酸素残量というファクトを見る——顧問先には、毎月の資金繰り表でこの計器盤を一緒に見る習慣をご提案しています。
まとめ
無借金は結果であって目的ではありません。手元資金の厚みと「借りられる力」を平時に育てる——この設計を、資金繰り表づくりから金融機関対応まで伴走します。初回相談60分無料。松戸・柏・流山・船橋・市川をはじめ首都圏の中小企業を支援しています(オンラインで全国対応も可)。
※本記事は一般的な考え方の解説であり、個別の借入判断はご自身の財務状況に応じてご検討ください。融資の実行を保証するものではありません。