今日は、自分が属する業界——行政書士という商売の、都合の悪い話をします。
「指定申請、代行します」の、その先
放課後等デイサービス、障がい者グループホーム、B型作業所(就労継続支援B型)。介護や障害福祉の事業を開設しようとネットを検索すると、私たち行政書士の広告がずらりと並びます。「指定申請、丸投げOK」「面倒な書類はお任せください」。
たしかに、指定申請の書類は複雑です。人員基準、設備基準、運営規程、勤務形態一覧表。慣れない人が一人でやれば、何度も窓口に突き返されます。だから代行には価値がある。それは本当です。
でも、私はここに、業界の構造的な問題があると思っています。
指定が下りた瞬間に、支援が終わる。
書類が受理され、指定通知書が届き、報酬をいただいて、「おめでとうございます。あとは頑張ってください」。——ここで関係が切れることも多いのではないでしょうか。その後、その事業所がどうなったのか。半年後に資金が尽きていないか。人が採れているか。そこまで追いかけている専門家は、少ないのではないでしょうか。
開設は「ゴール」ではなく、「一番危ない瞬間」
考えてみてください。指定が下りた日は、こういう日です。
家賃も、人件費も、すでに発生している。でも売上(給付費)が入るのは、サービス提供の約2か月後。利用者さんは、初日から定員が埋まるわけではない。手元の現金は、この瞬間から最も速く減っていきます。
つまり、指定が下りた日というのは、その事業所の経営にとって一番、資金的に危ない日なんです。放課後等デイサービスでも、グループホームでも、B型作業所でも、この構造は同じです。
その一番危ない日に、専門家が「では、これで」と去っていく。私はこの構造が、ずっと引っかかっています。
「専門外ですから」は、誰のための線引きか
もちろん、反論は分かります。「資金繰りは行政書士の仕事じゃない」「専門外のことに口を出すべきではない」。
たしかに、税務は税理士、労務は社労士、登記は司法書士。士業には法律で決まった線引きがあり、それは守らなければなりません。私も守っています。
でも——「専門外だから」と、何も言わずに見送ることまで、その線引きは求めているでしょうか。
目の前の人が、運転資金を3か月分しか持たずに開業しようとしている。給付費が2か月後にしか入らないことを、知らないまま突っ走ろうとしている。それを分かっていて、「書類は完璧です」とだけ言って送り出す。これは、法律を守っているだけで、人を守ってはいないと思うのです。
「専門外」という言葉は、時として、専門家が自分を守るための便利な盾になります。線引きを守ることと、見て見ぬふりをすることは、違います。
悪いのは、個々の専門家ではない。構造です
念のため言えば、これは同業者への個人攻撃ではありません。誠実に、丁寧に仕事をしている先生をたくさん知っています。
問題は構造です。指定申請の報酬は、申請という「作業」に対して支払われます。だから、作業が終われば報酬も終わり、関係も終わる。開業後にどうなろうと、報酬には影響しない。その後を見届けるインセンティブが、報酬体系のどこにも組み込まれていない。
だから、悪意がなくても、みんなが「指定まで」で手を離す。合理的だからです。構造がそうなっている以上、個人の善意に期待しても変わりません。変えるべきは、仕事の設計そのものです。
だから私は、「順番」と「その後」まで引き受けます
私が福祉の開設・経営支援でやろうとしているのは、こうです。
開業の「前」に、お金の話をする。物件を契約する前に、資金の見通しを立てる。融資の実行日と、保証金や工事代金の支払日を、カレンダーの上で突き合わせる。運転資金が足りないなら、規模を縮小するか、時期を後ろにずらす——「今は開業すべきではない」と言うことも含めて。
開業の「後」も、離れない。人が採れているか、資金は回っているか、加算は取れているか。人材育成と財務改善の顧問として、経営に伴走を続ける。
正直に申し上げれば、これは私にとって「都合のいい話」でもあります。顧問契約につながる設計なのですから、そこは隠しません。でも、それでいいと思っています。専門家がその後も食べていける形にしないと、その後を見届ける人は現れない。善意ではなく、仕組みで解決したいのです。
開業を考えている方へ——専門家を選ぶ、たった一つの質問
もし今、放課後等デイサービスやグループホーム、B型作業所の開設を考えていて、専門家を探しているなら。見積書の金額を比べる前に、こう聞いてみてください。
「開業して半年後、資金が尽きそうになったら、相談に乗ってもらえますか?」
この質問に、きちんと答えられる専門家を選んでください。それが私でなくても、構いません。あなたの事業が、指定が下りた「その先」まで続くことのほうが、ずっと大事だからです。
💬 目加多のひとこと
「まだ物件も決めていない」——その段階が、いちばん良いご相談のタイミングです。開業の手続きと、お金と、人。まとめて工程表にするところから、一緒に始めましょう。営業電話や売り込みは一切しません。
※本記事は業界の構造についての私見です。指定申請の代行を専門とすることを否定するものではありません。融資の実行を保証するものではなく、当事務所は融資のあっせん・仲介は行わず、事業計画の作成支援等のコンサルティングとして支援します。税務は税理士、労務・就業規則は社会保険労務士、登記は司法書士におつなぎします。松戸・柏・流山・船橋・市川・三郷・千葉市・東京23区・埼玉東部・茨城県南部を含む首都圏で活動しています(オンラインで全国対応も可)。本記事はnoteに掲載したコラムをもとにしています。